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マドレーヌ13歳、秋。~運動後は甘いものを食べるゴールデンタイム~

「土煙の目隠しは有効だな。太陽が隠れた瞬間から懐に入って喉元を狙うまでの速さは見事だ。正直、少し焦った。

 ……このケーキ旨いな。チョコレートの濃厚さもジャムの酸味でくどくならない」


「でしょう?ぜったい好きだと思ったの!ね、今度はこっちも食べてみて。きっと気に入るわ。

 ダル義兄さまこそ、読みの良さと反射速度は相変わらずね。見えない中であんなしっかり防がれちゃ手も足も出ないもの。整地された見通しのいい場所だから他の小細工もあんまりできないし」


「かぼちゃか。うん、特に皮の食感が気に入った。個人的にはもう少しバターやらクリームを控えた方が好みだが、充分に旨い。

 あとは上方に視線を引きつけて陽光で目を眩ませる策もありかもな」


「うーん、問題は何で視線誘導するかよねぇ…。

 あ、これイチオシかも!ダル義兄さまかなり好きな味よ。ほら」


「ドライフルーツとナッツと…中はアーモンドクリームか。噛むごとに食感が変わって面白い。いいな、これ。腹持ちも良さそうだし遠征に持っていきたい。

 戦闘中の兵士なんてほぼ野生動物だからな。動くものがあれば目で追う習性がある」


「なるほど勉強になるわ。まぁ、でも結局は筋力不足なのよねぇ。たとえ不意打ちが成功したってダル義兄さまくらいの圧倒的な力を前にすると勝てる気がしないわ。

 これちょっと工夫すれば携帯食に出来るかも。少し考えてみるね」


「そりゃありがたい。俺の可愛い妹が兄想いな上に料理上手で嬉しいぞ。

 一対一の勝負ならさておき、団体戦なら足止めだけでも充分な戦力だ。ゴチャついてる市街地や狭小地での戦もそうだが奇襲戦ならデカくて目立つ奴よりもよっぽど使える」


 チョコレートケーキ、かぼちゃのタルト、ドライフルーツのタルト。義兄から奢りだと言われて遠慮なくテーブルいっぱいにスイーツを並べたマドレーヌの目はきらきら輝いていた。そしてひと口食べ、次にそれより少し大きめなひと口分をフォークで切り分け、嬉しそうに義兄の口に運ぶ。ダルドワーズも真顔ではあるが嫌がる素振りなく受け入れて旨い旨いと言う。しかも仲良くスイーツを分け合いながら二つの話題が同時進行しているのはどういうことなのか。

 付き添い役のカリソンはすっかり見慣れているのか、隣のテーブルでコーヒーを飲みながら仲の良い兄妹の姿を微笑ましく眺めている。けれど、ついていけない人物が一人。


「あの〜。お二人は今、ケーキ片手に何のお話し合いを?」


「感想戦だが?」

「感想戦ですよ?」


 カリソンと同じテーブルでやりとりを見ていた唯一の常識人ポルックスの問いかけに、問う方の見識がおかしいのかな?と誤認しかけるほど2人の声が綺麗に重なった。


*****


 剣術場の様子を遠くから監視していたポルックスだったが、目敏い軍人2人に見つからない筈もない。けれどマドレーヌがニコニコ顔で「いつもお世話になっている人」と紹介したので、三者三様に思うところはあれど、カフェで簡単な自己紹介をして今に至る。きちんと役職を口にしたカリソンはともかく、ダルドワーズはマドレーヌの義兄として、ポルックスはマドレーヌのカフェ友達として名乗ったのは自己紹介に入るかどうかはさておいて。


「カンソウセン、といいますと?」


「試合後のおしゃべりタイム?」

「世間話だな」



「とても、高度なお話を、してるような気が、するんですが…」


「そうか?」

「そうですか?」



「まさか、打ち合い中の互いの動きを細部まで覚えているとか?」


「試合直後なら記憶が鮮明ですからねー」

「記憶していなければ訓練にならんしな」


 いちいちタイミングぴったりに発声し、いちいち質問からズレた回答をする兄妹にカリソンが笑いを堪えきれず吹き出した。


「ポルックス殿、その兄妹に少なくとも剣のことで普通を求めちゃあいけませんよ。なんたって師匠が師匠だ、ちょいとした質問なら俺が受け付けますよ」


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