マドレーヌ13歳、秋。~攻略対象?その1〜
「モニカ様」
「マドレーヌ様」
新たに友人になった証に互いに名前で呼び合い、なんだか擽ったくて、顔を見合わせて笑い合う。絵に描いたような青春の1ページを繰り広げる2人をじっと見つめる目があった。知り合いが極端に少ないマドレーヌでも、彼の名と顔は知っている。
「ジョン?どうしたの、そんな怖い顔で」
「昨日モニカ様が騒ぎに巻き込まれたと聞いたので」
ジョン・ウォルト。
平民ながら入学試験をトップで通過した秀才で、昨日のオリエンテーションでは新入生の代表として学院長にお言葉を賜り、スピーチもした筈だ。
若草色の髪を短く刈り上げた爽やかタイプ。黄色い瞳はきれいなアーモンド型で、今はまだ幼さも残っているけれど将来はキリリと引き締まったイケメンになりそうだ、とマドレーヌの直感が告げる。
モニカが見知らぬ女と居るのをみて、昨日の騒動に関連した悪口など言われているのでは?と慌ててやってきたのだろう。さしずめモニカの騎士様といったところか。甘酸っぱくてとても良い。
「あ。そのことでね、貴方に紹介したい方がいるのよ。マドレーヌ様、こちらはジョン・ウォルト。舟運を家業とする家の次男で、わたくしの幼馴染ですの。ジョン、こちらコメルシー男爵家のご息女マドレーヌ・コメルシー様よ。昨日お助けいただきましたの」
「ジョン・ウォルトです。モニカ様をお助け頂いたこと、私からも御礼申し上げます。今後ともどうぞ、よろしくお願い致します」
「マドレーヌ・コメルシーです。ウォルト様は昨日の代表者スピーチがとても素晴らしく、一方的に存じております。とてもいいお声でした!」
拡声器を使っている訳でも大声を張り上げている訳でもないのに、講堂の隅にまで響く朗々とした声。声変わり前の少年のみが在籍する合唱団が奏でる澄んだボーイ・ソプラノを”天使の歌声“という理由がよくわかった。これでトップ入学とは、天は彼に二物も三物も与えるつもりらしい。
「あ、あああ!な、内容もまた素晴らしく!同じ新入生でいられたことを誇りに思います」
「あ、いえ、拙い声を褒めて頂きましてありがとうございます?」
選りに選って成績トップの人間のスピーチを内容ではなく声だけを思い切り褒めたことに気づき、慌てて弁明するマドレーヌに困惑するジョン。モニカはその様子を見て、くすくす小さく笑った。




