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ジョン14歳、冬。~初恋は実らない、というけれど~

 すっかり肌に馴染んでしまった3色の組紐を弄びながら、ジョンは深い溜息を吐いた。


 *****


「ご機嫌よう、ジョン様。モニカ様はお休みですか?」


「あ。ええ、はい」


 その日、朝早く届いた手紙には、『マ会』の集会の途中でマドレーヌ様に会ってしまい結果的に仲間はずれにしてしまった罪悪感、さらに想い人(マドレーヌ)に恋人がいたショックで寝込んでしまったので今日は学院を休むとあった。

 情報量の多さに呆然とするしかない、そんな時にかけられたマドレーヌ様からの挨拶は思わず生返事で返してしまった。


「あの」


「はい?」


「マドレーヌ様は…」


 恋人が居るのか、聞いてどうする?俺らはただの学院の同期生で友達で、それ以上の関係ではないのに。


「ジョン様?もしかして体調がお悪いのですか?」

「あっ」


 白くて華奢な手が額に触れる。菫色の瞳に射抜かれる。血色の良い唇に誘われる。ほのかな香りに引き込まれる。


「少し熱があるようです。医務室に参りましょう?」


「週末は寒さがぶり返しましたから、きっと軽い風邪を引いたのです。これくらいなら一晩寝れば治ります」


「そうですか?もし、お辛くなったら言ってくださいね」


 親切な方だから。どれだけ近くに居ても、触れても、優しい言葉も、そこに特別な好意(おもい)がないのは知っている。


 でも。


 他の誰とも話さないで。仲良くしないで。俺だけのものになって。


「マドレーヌ様。私の我が儘、聞いてくれますか?」


「はい、なんでしょう?」


「今日は。帰るまで側にいてくれませんか?」


「はい。わかりました」


 拍子抜けするくらいの快諾に、優しい微笑み。そうして薬草の爽やかな味のする飴玉を俺の口元に運ぶと指でそっと押しやって。2人にだけ聞こえる小さな声でそっと囁く。


『ほかの人には内緒ですよ』


 その指はまっすぐ彼女の唇に当てられる。

 ああ。こうして居れば、俺が彼女の恋人みたいだ。その気がないのはわかっているのに。それでも心は求めてしまう。

 酷い(ひと)だ貴女は。どこまでも優しくて純粋で愛らしくて、残酷だ。


「2人だけの秘密。あの時みたいですね」


 膝枕の感触と薬草の匂いに包まれた、東屋での秘密の時間。額に落とされた唇の柔らかな感触はまだ熱をもって思い出される。


「ふふ。秘めごとが増えてしまいましたね」



 ねえ、知っていますか?俺はもっと、もっともっと。人に言えない情欲(ひみつ)を貴女に抱えているんですよ、マドレーヌ様。





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