マドレーヌ14歳、冬。~定番イベント!王都デート※ただし監視付き~
「バンタル!待たせちゃった?」
王都の中心にある広場は待ち合わせの定番スポット。そこでそわそわ居心地悪そうに佇む少年を見つけてマドレーヌは早足で駆け寄った。
「マドレーヌ!」
褐色の肌に黒い髪、オレンジ色の瞳を輝かせ。少年は喜びいっぱいの声を上げたが、すぐさま唇を尖らせる。
「……と、ケルノン」
あからさまな態度の少年に、従者は澄ました顔で一礼した。
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「その。マドレーヌは王都にうまく馴染めてるのか?」
王国軍第三部隊の長ダダール・グルンの息子、バンタルは現在13歳。この秋から王立学院に通うために村を出て久しぶりに両親と王都で暮らすこととなる。その前に部屋を整えたり服を誂えるための採寸をしたり、細々とした雑事を済ませるため王都に滞在するというので、休日に暇なら王都を案内してやってくれと義兄を通じて養父母に依頼があり、今日の広場での待ち合わせとあいなった。
「そこそこうまくやってるわ。今日だって皆様におすすめの場所を色々と教えて貰って来たのよ!」
「…皆サマって男?」
「ビギナーコースは共学だもの、学院生は男女問わずいっぱいいるの。王都って広いし色々あるから情報はたくさんあった方が良いでしょう?バンタルの好きそうなところもたくさん教えて貰ったから任せて!」
「ふーん」
詰まらなそうな生返事と裏腹に、どこか嬉しそうに頬を緩めながらバンタルは肘をくいと曲げてマドレーヌに差し出す。
「ん」
「なあに?」
「都会には犯罪者が多いからな。女を守るのは男の義務だ。……て、父上が」
「ふふふ、すっかり紳士ね。ありがとう」
「まあな。俺が本気出したらムダに絡んでくるヤツみんな蹴散らすくらい、なんて事ない」
「まあ頼もしい」
だから邪魔だと言わんばかりに護衛を兼務する従者を睨みつけるが、マドレーヌは気にも留めずケルノンも涼しい顔。小さい頃を知る2人にとって、バンタルはいつまでも“やんちゃな寂しがり屋”なのだ。
「さて、先ずはどこに行くか決めてあるんだろ?」
「うん。近くに若い人向けのカフェがあるんだって。そこでおしゃべりして、幾つか教えて貰った中からバンタルが行きたいところに行こうよ」
「オッケー。ほら、手。ちゃんと掴まってろよな」
一瞬だけニヤリと口元を動かした従者をもう一度睨むと、バンタルはぎこちなく歩き始めた。