ともだちのともだち
手紙を書いている時間が好きだった。
正しくは、手紙に何を書こうか考えているときが、好きだった。
遠い昔に、遠くに引っ越してしまった、大切なともだち。
とりとめのない話。
渡せなかった、誕生日プレゼント。
自分の曖昧な記憶を両手ですくい取る。
あのときは、毎日が書ききれないほどだった。
伝えきれないほど、色々な発見があった。
でも、お互いに距離がありすぎて。
いつしか、すくった記憶は、手のひらからこぼれ落ちていった。
そして、またひとり疎遠になっていく。
LINE
便利な世の中になって、相手との距離が近くなって、遠くなった気がする。
ともだちのともだち。
その辺りが、いまだによくわからないし、いまだにしっくりこない。
大人になった今では、手紙を書くことは少なくなってしまった。
きっと、昔よりも少しは上手になっていて、書けることも多いはずなのに。
もともと、ともだちと呼べるような人はいないのだけど。
大人になるにつれて、ともだちは減っていく。
代わりに、ともだちのともだちが増えていく。
いざとなると、何を書いていいか少し悩む。
何も書くことがないような気もする。
夕暮れの開け放たれた窓から、気まぐれな夏風が遊びに誘う。
いつものように、風鈴が涼しげに戯れる。
彼らは、ともだちなのだろうか。
それとも、ともだちのともだちなのだろうか。
そんなことを考えていたら、いつの間にか1日が終わりかかっていた。
僕の夏の手紙。
そこには、ただただ真っ白な世界が広がっていた。
暑中お見舞い申し上げます。