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公国の歌姫  作者: 南雲司
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ドーナツ理論

攻略部隊の指揮官は有能なんでしようね。

無能なら無理矢理攻め込んでコアの目論み通り殲滅されていても、おかしくありませんので。

[モニター]

 中尉は入り口の前に立っている。そこから数メートル離れた床面に魔方陣が浮き出てきた。

「石畳の床って彼処あそこだけじゃん、なんで?」

「彼処から先に入れる気はありませんので」

 訊いたのは虎治、答えたのはプヨ=コアである。

 此処は土塁の中、小さなダンジョンの結節点である。


 客が来たのでドロシーが出したのか、いつもの小卓は無く、

 料理をする時に使う大きめのテーブルにクロスを掛けてある。

 サスケラは椅子に座って紅茶を飲んでいる。

 アリスはと言うとサスケラの隣で、

 プヨの出したモニターをじっと視ている。

 画面には魔方陣から出たばかりのドロシーの後ろ姿が、

 それでも優雅なカーテシーを披露していた。


「これ食べなよ、美味しいよ」

 虎治がアリスに飾り砂糖のドーナツを薦めた。相

 変わらず緊張感の無い男だ。


[ドーナツ理論]

 合格が決まったので、アリスとウッディに伝えようかと

 転移石に触れたのだが起動しない。

 どう言うことだろうと思っていると、転移石から声がした。


「申し訳ありません。現在立て込んでおりまして、転移無効結界をはっております。なにか御用でしょうか」

 あぁ、これはあの二人のダンジョンマスターが置いていった

 プロシージャの一つだ。


「なにがあったんだい」

「ダンジョンアタックを目論むと思われる武装集団が訪れております」

「な、なんだってー、アリスは、アリスは無事なのか」

「はい、勿論の事、マスターアリスには指一本触れさせません」


『誰?誰?』

 声が割り込んで来た。

『マスターアリスのお友達です』

『あー、あの可愛いドワーフ、来て貰いなよ。美味しいドーナツあるし』

 虎治の辞書には緊張感と言う言葉はない。


[吾妻屋あづまや]

「すげーな」

 カーシャはドーナツを頬張りながら感嘆している。

 勿論、ドーナツについてではなく、

 モニターとモニターに映る光景についてだ。

 ドロシーからリクエストが来た。


『プヨ、検索域外に吾妻屋を設えたいと思います。ラインを何本か頂けますか』

「規模は如何程でしょう。一個中隊丸々入るとなると十本以上になりますが」

『指揮官と副官、それに先任軍曹位でいいでしょうから、余裕を見て六人座れれば十分です』

「了解しました。…いま送りました」


[四阿あづまや]

 メイド服を着た少女は、物々しい兵達に臆する様子もなく

 外に歩み出ると場所を開けるように言った。

「立ち話も何でしょうから」

 見る間に地中から四本の柱が突き出し屋根が掛かり

 テーブルと六脚の椅子が出現した。


 この様な者を相手に戦を仕掛けようとしていたのか、

 兵達の誰もがそう思った。


「どうぞお座りになって、お紅茶をお淹れしますわ」

 テーブルの上には湯気の立つティーポット人数分のカップもある。


「で、どのようなお話ですの」

「貴女は眷族なのか」

 不躾な、これだから軍人は…。

 軽く眉を潜め表情で咎めるが通じた気配はない。

「本題をどうぞ」

 険を含んだ声音に漸く気付いたか、中尉の顔が赤くなる。

「いや、その…」

 元よりダンジョンアタックの積もりで来たのだ。

 大した話を用意している筈もない。


「友好…、そうだ友好、貴ダンジョンと友宜を結びたい」


[新しい玩具?]

「あ、アタシ帰んなくちゃ、仕事あるし」

「なら、これを」

 サスケラが分厚い封筒を渡す。

 表書きに[親愛なる恩師グル導師へ]と書いてある。


 師の話していたシャオ・ハイマオの論文だ!


 礼もそこそこに転移門を呼び出すや、

 向こう側の確認も無しに飛び込んで行った。

「あー、あれだね、新しい玩具貰った子供?」

 虎治はそう言う処は分かる様だ。


[混乱]

 ウーシャラークの首脳陣は小さなダンジョンが

 既にキーナンの保護下にあるらしいとの攻略部隊の報告に

 混乱していた。

 もしそうであるならキーナンに構築した情報網が

 まるで役に立っていない事になる。

 それはその他の情報の精度から考えにくい。


 しかし、攻略部隊の指揮官は軍でも有望株で、

 それは攻略が無理だと判断すると友好締結の予備折衝をする

 と言う機転を利かしてきた事からも伺える。

 更にダンジョンからの贈り物として、送られてきた、

 恐らく観賞用であろう[カタナ]と言う刀剣は見事な出来で、

 技官のドワーフを唸らせた。

 軍事的に独立を確保できる技術を持っているとも判断できる。


「キーナン抜きに自立しているのではないか」

 そもそも、イェードゥから手に入れた情報が

 今回の攻略作戦の元に為っている。

 一度二個中隊で攻め大敗を期したが、

 自給性に乏しく半年程兵糧攻めにすれば容易く陥ちる。

 そうあった。


 イェードゥ自体が無くなってしまったので二度目は無くなった。

 しかし、ダンジョンとの交易禁止令はいま尚有効なのだ。

 取り消すものがいない。

 と言うより、魔石と湯石しかないのだ、

 取り引き相手は自然、国家になる。

 ならば既に干上がって無ければおかしい。


 [イェードゥノート]が誤っていたか、不完全であったと言う意見が

 大勢を占めつつあった。

 ではどうするか、中尉が道を拓いた[友好]で

 収まる事になるのだろうか。

 結論が出るにはまだまだ時間が掛かりそうだ。


[徹夜]

「何処へ行っていたのだ?」

「悪い、老師、シャオの論文届いたぞ」

 似た者師弟はその日徹夜した。

 庭師の爺様は何時までも来ない新入りに御冠だった。

うーん、中尉さんに名前付ければよかったかな?

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