手打ち
ネタバレぎみですが、戦闘回ではありません
[やるなら一気に]
「虎治!」
大きな影が差したかと思うと、竜種が虎治を襲った。
しかし、顋を閉じる寸前、
虎治はスルリとロールを打って抜け出し、
ピタリと竜の背後に付いた。
風竜だった。
「あれ?あー、この天馬ボルト積んでなかったんだ」
ボルト処か銃器の類いは取り外してある。
民間機なのだから。
諦めきれないようになおも発射レバーをカチカチしている虎治。
「この馬鹿風竜が!主の夫を食い殺す気か!」
サスケラの怒号に萎縮する風竜。
彼としたら臨時の上司であるプヨ=コアの命令に
従っただけの積もりなのだ。
プヨは、人と家畜は襲うなと言った。
どちらも地ベタを這いずるものだ、
空を飛ぶならどちらでもない。
なので襲った。
何故怒られているか分からずに風竜は、
ただただ萎縮している。
「大体あの機動はなんだ」
筋が逸れていく。
「大方、最初私を狙って途中主と気付いたのだろうが、途中で変針するから勢いがなくなる。やるなら一気にいけ」
「クァー」
これは納得したようだ。
「俺、死んじゃうじゃん」
[迷路]
風竜の偵察で侵攻があるのは明日の午前中だろうと予測された。
構築された夜営地を風竜に襲わせれば話しは早いのだか、
それでは人族全体を敵に回しかねない。
プヨは掩体の構築をいそがせる。
先程マスター虎治から人形二個中隊の召喚許可を貰えたのは
僥倖だった。
歪なコア様では二個小隊の許可も貰えたか分からない。
構築はみるみる進み、夜が更け東の空が白む頃には
大まかな迷路と言って良い陣が完成していた。
後は要所に人形を配し遅滞させ、風竜のブレスで残滅する。
[資質]
「君も分からん奴だな」
試験官に呼ばれた応援の文官は、それなりの地位なのだろうか。
やや横柄な口調は、それとも痺れが切れ掛けているのか。
「今日で最後なのです。お願いします、受けさせてください」
「最後だから、合格してない者にチャンスを回すと、言っておろう。貴君は筆記一位で合格しているではないか」
受けさせろとごねているのは、魔導科の合格を決めたトムオスであった。
「いつまでも場所を塞がれては叶わないな。余りしつこいと合格取り消しになるかもしれないよ」
来たばかりではあるが状況を飲み込んだグル師が口を挟む。
「本望です」
顔が強ばっている。
「ほぉ、理由を聴こうか」
グル師にしても見込みの有りそうな青年を放追するのは、本意ではない。
「一番で受かると決めました。これを起動出来なければ良くて二番です」
なんと、わがままな。
しかし、我が儘のために合格を不意にする事も辞さずと言うのも、魔導師らしい資質ではある。
「受けさせてやりなさい」
失敗すれば恥じて帰郷するのだろう。
だが良い、来年がある。
[決断]
「なんだこれは」中隊長は呻く。
ダンジョンの有るとされるポイントの周囲を
数メートルの高さの塀が丸く囲っていたからである。
しかも大きい、直径で二百メートル程か。
「あちらに切れ目があります」
行ってみると二メートル程の幅で開いており
直線の通路に為っている。
最奥には、どう視ても銃器を指向しているゴーレムが二体。
「中尉!これを」
兵が何かが書かれたプレートを示した。
[此処から先は当ダンジョンの最重要施設です。許可なく侵入を試みる者は射殺されます。尚、周辺一帯も当ダンジョンの管理領域です。通り抜けは自由ですが資材、土壌、その他の持ち出しは禁止します]
「なんだと?」
これは知性があり管理能力があると
ダンジョンマスターが宣言したのと同じだ。
キーナンが認知すれば一つの国家と見なされる事になる。
では、あの銃器はキーナンの援助で手にいれたのか?
此処を陥として、大丈夫なのか?
中尉は決断した。
[コンタクト]
「頼もう!」
前時代的な呼び掛けに成ってしまったのは、
緊張の所以であろうか、中尉は手の汗をズボンで拭う。
「ダンジョンマスター殿にお目通り願いたい!」
ややもあって、応えがあった。
『そこでお待ちください、代理の者が伺います』
「否、国の遣いとして、御目文字したい」
『では、我が主の安全を担保する為に、そちらの武器弾薬を預かる事になるが、宜しいか』
中尉は[代理の者]で、手を打つ事にした。
これは手強い、交渉に慣れている。
相応に長い期間を、イェードゥ、或いはキーナンとの
交渉に費やしてきたのではないか。
我が国の情報の粗雑さが恨めしい。
[発動]
カーシャは感動していた。
トムオスは許可された三回の内の二回を失敗し、
魔力欠乏症でフラフラに成りながら、
最後の試技て術式を発光させたのだ。
ありやなしやの光度ではあったが、
確かに起動したと見なされた。
「おめでとう、これで五ポイントアマーリ君を抜いて君がトップだ」
祝福したのはグル師ではなく、試技を拒んでいた試験官だった。
うっすら眼が潤んでいるところを見ると、彼も感動したのだろう。
あぁ、彼は自分を信じたのだ。
だから式は起動した。
ではアタシは何を信じる。
カーシャの番になり、術式はこれ迄になく光った。
現れた光球は、素晴らしい速度で、的を粉砕し
後ろの土塁を深く抉って消えた。
「今のでトップ変わってませんよね?」
トムオスは泣きそうだった。
たぶん省略する事になるんで書いときます。
カーシャは二ポイント足りずに二位です。