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公国の歌姫  作者: 南雲司
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怖いのが来るよ

魔素はそれなりに潤沢ですが、召喚可能な物のリストの貧弱な、小さなダンジョン。二体のプロシージャの苦労が偲ばれます。

[カーシャ]

 翌日には筆記試験の結果が張り出された。此に番号が載っていれば実技に進める。カーシャは自分の番号がありそうな一番下から探していった。と言うのも、どうやら成績順に為っているらしく、番号の並びがバラバラだったからである。


 次第に不安になる。下から辿って行って中程を過ぎてもまだ自分の番号がない。見逃したかと、もう一度下から辿る、やはり無い。半ば諦め掛けて更に上へ…。


 あった!上から十五番目!望外の成績だ。魔導師志望が大半を占める受験生の中で、魔術師志望のあたしが十五位!カーシャはもう、受かった気になっていた。


[ドロシー]

「そう、そこは引いた足をクロスさせる様に」

 ドロシーの指導でアリスはカーテシーの練習をしている。

 女の子なら誰でも興味を持つ優雅な仕草から始めるのが良いと

 ドロシーは判断した。


 廊下を走るなとか胡座をかくなとかの事は、

 レディとして自覚を持って来ないとなかなか身に付かない。


「なかなかお上手ですわ、お嬢様」

 ドロシーは誉めて伸ばすタイプの様だ。


[プヨ]

 土塁は見た目より遥かに丈夫で、スコップの歯が立たない。構造を調べて意外な事が分かった。

 ただの土塊つちくれを突き固めただけに見えて、内部には大量の炭素繊維、ケイ素繊維、名前も定かでない複数の種類の繊維が、複雑に絡み合い蔓延るように走っている。

 硬度自体は大した事のない土塁はその繊維の柔軟な反発力でスコップの歯を跳ね返していたのだ。


 プヨはこの構造を掩体に取り入れる事にした。

 出来上がった掩体の上に乗ると接触している処から、

 繊維を走らせていく。

 これならもう少し薄く造っても良さそうだ。


 人形達に指示を出す。


[実技試験]

 翌日、実技試験が始まる前に受験生達は大講堂に集められた。

 説明があるのだと言う。

 試験には数日掛かる事、

 指定した術式を発動出来れば合格である事、

 出来なかった場合は得意な魔術を披露して採点を受け、

 それが基準となる事、等が説明された。


 配られた術式を視てどよめきが上がる。

 一部が空間魔法に改変されたエナジーボールの術式だ。


「これは発動しない術式です!」

 受験生の中から声が上がる。

 上位五人の高得点者の一人だ。


「君、名前は?」

「トムオス・デ・マシャールです」

「ふむ、では説明しよう。これはシャオ・ハイマオの改変に依る術式だ」

 さらに響めく。


「万全に発動させれば、約三割の魔素を節約出来る」

 受験生の一人の術式を書いた羊皮紙に手を載せると

 黒板の脇に向かって件のボルトを放った。


「残念ながら、それが出来るのは現在の処、ハイマオ術師ただ一人だ」

 何の跡も付けられずに霧散した魔法に嘆息しながら、

 グル師は言った。

「この大学は、ハイマオ師と同等の魔導師、かの空間魔法を容易く発動させられる人材を育てる為に造られた。当然、卒業までには最低でもこの術式をマスターして貰う」


 それから、該当する空間魔法術式の概要と注意点の講義が

 午前中一杯行われ、試験は午後からになった。


[サーチ]

 小さなダンジョンの検索限界域は小さい、

 土塁を中心にその半径は僅か百メートル程でしかなく、

 生まれたての[歪なダンジョン]ですら、

 半径数キロであることを考えると、

 異常な程小さいと言える。


 此れを補うのに、プヨ・コアは時折走ってくる

 神樹の検索ラインに相乗りして周りをサーチしていた。

 勿論の事、限界域のすぐ側を調べるには、ほぼ役には立たないが、

 時折興味深い物を捉える事がある。


 この日は、行軍中の異国の一部隊であった。

 残念ながら、ラインが直ぐに閉じてしまった為、

 仔細は分からなかったが、なぜキーナン領に異国の軍が居るのか、

 調べる必要があると思われた。


[詐欺師シャオ]

 神樹の森兵学校卒業式は滞りなく終わり、

 下級兵曹から下級士官へ一足飛びの昇級的任官を果たした、

 新准尉達が帽子を飛ばした。


 これは以降の空軍兵学校卒業式での伝統になるのだろうか。

 空を舞う軍帽を視てシャオは思う。

    ・・・

「二人にお願いがある」

 校長室に入ってきた、虎治とサスケラに

 シャオは前置きもなく切り出した。

 サスケラは腰のところで軽くたくしあげ紐で縛った

 森人風のワンピース、

 虎治はダンジョンの正装と言い張っている

 ダボティーと膝丈の短パンだ。

 流石にトランクス一丁は卒業したらしい。


「報酬は二人が乗機としていた天馬」

「やるっす」「やります」即答の二人、

 胸中で小さく舌を出すシャオ。

 実は、この二機はシャオの[お願い]に関わらず、

 それぞれのダンジョンへの卒業祝いとして

 贈呈される事になっていたのだった。


[怖いのが来るよ]

 その日の夕方、日課の「歌」を歌っていたアリスが突然固まった。

 その歌に耳を傾けていた、プヨ、一個分隊の人形達に緊張が走る。

 アリスは身を翻すとダンジョンに飛び込み

 夕げの支度をしていたドロシーに抱きついた。


「ドロシー、ドロシー、怖いのが来る!また、怖いのが来るよ!」


 ウーシャラーク、キーナン新領の南東に位置する

 イェードゥ領を統治している国の名で本国はキーナンの反対側、

 小湖の向こう岸になる。

 新領へ送る治安用の兵力は湖水を渡り

 キーナンを経由する事になる。


 安全保障の観点から一度に通るのは一個中隊まで、

 総数で一個大隊と決められていた。

 治安維持としては過大ではあるが、何かあった時の

 増援の難しさを察すれば

 キーナンも認めざるを得なかったのである。


 その最後の一個中隊が取った進路はそれ迄と違っていた。

 明らかに小さなダンジョンを目指していた。

 

やっと動き出しました。でもまだクライマックス迄は遠いです。

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