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公国の歌姫  作者: 南雲司
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ドロシーの三分間クッキング

[応募]

 魔法大学の募集は公国のみならずイバーラクも含めた中原全土へ向けたものだった。応募して来たのは、募集五十名に対し百余名、国力からして大した影響力もなく、寧ろこれ程の応募があったのかと関係者には驚きを持って受け止められた。

 と言うのも、平均的な家庭のほぼ年収分に筆適する、初年度の法外とも言える入学金込みの学費と、公的機関に十年勤め挙げねば返却の義務が発生する奨学金に、二の足を踏む者も多いだろうと考えられていたからである。


[爺様]

「こら待て、ワシの分まで持っていくんでない」

 カーシャは気を利かせて持ってやった庭師の道具箱を抱え直す、と不満そうに鼻を鳴らした。

「爺さん無理するなって、年なんだろ」

「馬鹿っ垂れ、年だから言うておる。そもそもぬしはいつまでも此処におらんだろが」

「まあ、魔術師で食えるように成れば出るな。それまでは楽させてやるぜ」

「その時に足腰が弱っておったらどう責任取るつもりだ」

 ハッとするカーシャ。

 道具箱はそれなりに重い、ドワーフならいざ知らず、並みの人族の男では持てぬと迄はいかなくとも、愚痴の一つや二つ出る程には重い。持ってやるのが優しさだと思ったが、違うのだと知った。


[朝食]

 結局、ドロシーは塩以外の調味料、卵、ベーコン、

 サラダ用の野菜を幾つか大振りのチーズ、

 丸パンを幾つか召喚する事にした。

 手狭な小卓(サイドテーブル)は一旦アーカイブに収納し、

 作業をしやすい大きめなテーブルを出す。

 勿論サスケラが使っている物と同じ物である。


 野菜と共に適当な大きさにカットしたチーズを刻む。

 傍らには歪なダンジョンからの引用で手に入ったカセットコンロ、

 その上には深めの小さな鍋で湯を沸かす。

 沸けば良く洗った芋と卵を二個入れて

 沸騰し過ぎ無い様に火を少し落とす。


 もう一つコンロを召喚して、これまた小さなフライパンを暖める。

 ベーコンを載せ油を馴染ませ軽く塩コショウを振り

 色付いた処で返し、手早く塩コショウ、卵を落とす。


 時間になったので茹で玉子を取り出し、冷水に浸ける。

 此処でフライパンの火を止めるのだがその前に軽く水を差す。

 素早く蓋をして火を止める。後は余熱だ。

 茹で玉子のあら熱が取れる迄に、

 要らなくなった食材の残りをアーカイブに片し

 テーブルの使っていない半分を拭く。


 触ってみると卵の熱は取れていたので殻を剥き小さく刻んで、

 マヨネーズで和え、刻んだ野菜を和える。

 このマヨネーズはエゴーとか言う品名で塩気とコクが強い。

 そのままでもドレッシングとして十分なのだが、

 ドロシーは胡麻油を振った。


 さらに塩コショウして、フライパンからベーコンエッグを

 皿に移しこれも塩コショウ、後は配膳して完成だ。


 芋はまだ湯がく必要がある。

 暫く此のままで、後でマッシュにしてお昼に使おう。


 サラダは夕げの分までを見越して大分多めに作ってある。

 小皿に取り分け、残りはボール毎アーカイブにしまう。


 ふと視線に気がついて、視遣るとマスターアリスが

 半ば体を起こしてこちらを視ていた。お嬢様、お涎が。


[大人の都合]

「わが国の受験生を優先しては貰えまいか」

「いえ寧ろ諸国からわざわざ足を運ぶ留学生にこそ便宜を図るべき」

 前者が軍務卿、後者が大学担当の財政官だ。

 発言の理由はそれぞれに察しは付くので、

 置いといてグル師は端的に述べる。


「飽く迄も成績本位でなければ、後々の憂いとなります」

 数百人は入るであろう大講堂で、

 受験生達は筆記試験を受けている。

 戦っている。

 大人達の下らない都合で彼等の戦いを邪魔しては行けない。


[難問]

 カーシャも当然、受験会場にいた。覚悟していたのに殆どが基礎問題で解けないのは数問だけだった。いやいや、多分皆同じだ、この数個の難問で決まるんだ。解いた問題に間違いがないか確かめた後、残りの時間を難問のうち一番簡単そうな一つに、絞ることにした。


「この問題は簡単すぎはしませんか?」

 応援に来た文官が、問う。

「いえ、これで良いのです。基礎さえあれば如何様にも鍛えられますから」

 数個の難問は解けなくとも問題はない。一問でも解ければ合格ではあるが、実のところ筆記で落とす気は欠片もないのだ。


 明日の実技が足切りになる。


[掩体]

 プヨは一個分隊程の人形を召喚して掩体を構築していた。

 二本足と四本足をペアにして六体ずつ都合十二体である。

 最終的には迷路になる筈だが、今はまだ要所要所に

 直接射線が通らなければ良い。


 マスターアリスのご友人達が転移なしで訪れる可能性も考慮して

 何ヵ所か直線的に土塁に至れる経路も確保する。

 敵が攻めてきた時は、一転デストラップになる。

 避けようの無い直線で水撃銃の弾幕に曝されるのだ。


 対空は今は考えない。一つ一つクリアしていこう。


[お嬢様]

「アリスお嬢様、お顔を洗ってらっしゃいませ。

 その間に配膳を済ませて置きます」

 アリスは脱兎の如く飛び出した。

 方眉を上げるドロシー


 ドロシーは一旦全てをしまう、

 火の付いたカセットコンロは念のため火を止めてからしまう、

 小卓を出して乾拭きすると、

 テーブルクロスを掛け、食器を並べた。


 なぜか、湯気の立つティーポットとウサギ柄のカップもある。

 パタパタとアリスが走り込んできた。

 明日からはお作法のお稽古も予定に入れましょう、

 とドロシーは心に止めた。


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