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公国の歌姫  作者: 南雲司
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三人のダンジョンマスター

イバーラクは出てこないと言ったな。あれは嘘だ

[アリス]

 グル師は呆れていた。

 ただのドワーフの娘が転移門を開いたからだ。

 しかもダンジョンだと言うのが、土盛の土塁の横穴と来た。

 実際に転移門を潜って来たのでなければ、

 とても信じられなかっただろう。


「まあ入んなよ、ダンジョンマスターに紹介すっから、おーいアリスお客さん連れて来たぞ」

 のそりと木の人形が現れた。

 これがアリスとやらか?

「やあ、ウッディ、アリスはいるかい?」

 違うらしい。


「カーシャ!」

 その後から十二歳位の少女が走り出て

 カーシャに飛び付いて来た。


[配達]

 此処はイバーラクの神樹の森兵学校、その校長室でシャオが眉を潜めていた。問題は恩師のグル導師からの書簡だ。研究したいからシャオの論文と術式を出来るだけ多く送って欲しいとある。

 シャオにとってグル師は良い先生だった。何かしら失策へまをして協会を出たと聞いたが、連合諸国のキーナン公国の魔法大学の学長に納まったらしい。


 さて、困った。

 恩師の頼みは聞いて挙げたい。

 空間魔法が広まるのなら望む処でもある。

 しかし、シャオの研究は殆どが軍事機密なのだ。


 暫く考えた後、差し障りの無い分を改めて書き起こす事にした。そのむねを返書にしたためる。相応の時間が掛かるから待って欲しい。

 それを出す段になってまた考える。検閲を受けても詰まらない、生徒に頼んで送り届けて貰おう。最終学年は全ての課業を終えていて、ミーティアのしごきで息をするのがやっとの状態だ。

 喜んで配達してくれるだろう。


 話を通す為に教官室のミーティアに会うことにした。


[アリス(その2)]

 アリスはウッディの後に隠れた。

 カーシャが連れてきた人なのだから

 悪い人ではないのは分かっている。

 だが、怖いものは怖いのだ。


 グル師は反省する。

 つい気が急いて矢継ぎ早に質問しすぎた。

 小さな少女には詰問に聞こえたかもしれない。


「それについてなら、あたしの方が詳しいぜ」

 ドワーフの娘が割り込んだ。

 視かねて場を繕おうとしてくれたのだろう。

「この転移石は坑洞製じゃなくて此処小さなダンジョンで作られたって言ったよな」

「でも、作ったのはアリスじゃなくて[プロシージャ]って眷族なんだ」


 三年前にイェードゥと戦って相討ちになったと語る。

「なんと、ではもう作れないのか」

 眼に見えて落胆する導師。

「どうなんだい」カーシャ。

 かぶりを振るアリス。

「プロシージャがいないとなにも出来ない」


[一番機、俺だし]

「強い魔素反応、虎治これはダンジョンではないか」

 二番機を勤めるサスケラが報告した。

 なぜか虎治が一番機だ。

「どこ?あ、みつけた」

「こら、変針するならちゃんと言え、馬鹿虎治」

「こめんー、ダンジョン見てくるよー」

「任務中だぞ」

「一番機、俺だしー」


 ミーティアがキーナンに派遣する事に決めたのは、卒業後任官を免除されている、虎治とサスケラだった。他の者は何時死地に飛び込むか知れない軍人となるのだ、いくら鍛えても鍛え足りない。

 そして、問題があるとも思えなかったので、虎治を一番機に指名した。この状況を知ればミーティアは頭を抱えた事だろう。


[邂逅]

 突然、ウッディの気配が変わった。

 狂暴なオーラが立ち上っているかの様にすら視える。

 のそりと動き出し出口へと向かう。

「ウッディ?どこいくの」小走りで後を追うアリス。

 カーシャもただならぬ事態を察知してか続く。

 グル師は突然の事態に戸惑いながら外へと向かった。


「君がここのプロシージャ?マスターはいる?」

 奇妙な遊具にも見える物に跨がった若い男が

 ウッドゴーレムに尋ねた。

 アリスは入り口から出る事が躊躇われて足を止める。

 カーシャはアリスの前に庇う様に立つ。


「虎治、それは眷族だ。魔素が薄い」

 その声に、グル師が飛び出した。

「太子!サスケラ太子殿下ではございませんか」


[サスケラとグル師おまけで虎治]

 グル師の知り合いと言う事で、二人は中に招き入れられた。


「此処で師に出会えたのは僥倖だ。シャオ閣下から書簡を預かってきた」手渡すサスケラ。

 虎治では心許ないと、保管はサスケラがしていた様だ。

「閣下?」

 グル師は思わず問う。王族が臣下を呼ぶ時の敬称は貴族に類する者であれば[卿きょう]、でなければ呼び捨てだ。


「訊くな、今は王族ではなく一介の学生だ」

「おいたわしや」

「そうでもないぞ、これでもダンジョンを一つ預かっている。学生の身が明ければ王に準じるぞ」

「ダンジョン見付けたんでマスターに挨拶しようと思っただけなんだけどねー」

「従者の方は些か無礼では有りませんか」眉を潜めるグル師。

 王族の話に割り込むのは、どこの国でも不敬とみなされる。


「いや、この虎治もダンジョンマスターだ、さらには私の夫で今回の任務の上司でもある」苦笑するサスケラ。

 虎治がその様な大層な人物に見えないのは承知している。虎治が真価を発揮するのは、戦場とベッドの上なのだ。余人には知りがたい。

「これはとんだ失礼を」


[三人のダンジョンマスター]

「ダンジョンマスターならさ」

 カーシャが不敬にも割り込んできた。

 が、咎める者はいない。

 グル師はアリスの代弁であろうと推測しているし、

 サスケラは既にそう言った身分では無いと自覚している。

 虎治に至っては不敬の意味すら知っているか怪しい。


「アリスを助けて貰えないかな」


すみません、どうしても虎治出したくなって、筋を弄りました。関与は出来るだけ小さくする積もりではあるんですが、さて、どうなることやら。

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