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公国の歌姫  作者: 南雲司
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鰐の哀歌

二千文字だと纏めるのがしんどいですね。皆さんすごいなーと思う今日この頃。


[掃討]

これは手間をけちり過ぎたかも知れませんね」

 ウーシャラーク軍は破城槌の懸架用の枠組みを組み立てている。どうも用意された丸太の質量から、掩体が抜かれる公算は高い。プヨは風竜を呼んだ。

「外壁の周りをブレスで掃除してくれませんか」

 風竜は抗議する。人を襲うなと言ったではないか。

「人ではありませんよ、あくまでも壁の周りです。巻き込まれて死んだとしても貴方の責任ではありません」

 風竜は了承して、飛び立った。


 曲がり角に来る度に兵が何人か死んだ。一気に制圧する為に角の前に兵を集結させると壁の上に例の円筒が現れて、鉄球をばら蒔く。分散させても各個撃破されるだけだ。置き盾はもうボロボロで役に立たなくなっていた。


[ドロシー]

 ドロシーは五十名の新兵達の指揮を執っていた。

 何をさせているかと言うと畑の畝作りである。

 即戦力ではあるのだがどうも人形達との連携が心許ない。

 敵が元同じ部隊であってみれば不測の事態も起きかねないのだし、

 投入を見合せ、屯田兵の訓練となった。

 その一方でドロシーは盛んに内外にリンクを飛ばしている。

 風竜が帰ってきた。

 土塁上での休憩を許可する。


[死の二分間]

 カイマン将軍は唖然としていた、正面の入り口から始まって右周りに炎が吹き出しグルリと一周する迄に、二分も掛かっていない。


 外壁に取り付いていた兵達は何が起こったのか知る前に焼け死んだ。

 これは一体何なのだ。

 これがダンジョンの力なのか。


[スライム]

 腰程の高さの掩体は、

 凸凹の高さで高くなったり低くなったりを

 繰り返している様でもあった。

 そして、その繰り返しの中で徐々に高くなりつつあった。


 それが現れたのは概ね胸の高さに達した頃である。

「スライムだ!」

 小さなスライムは中尉達の前に出ると、案内するよ、

 とでも言う様にピョンピョンと移動を始めた。


「スライムってこんなだっけ?」

 ナヨ中尉が聴く。

 誰も答えない。

 ここは内部空間なのだ、

 暫くしてカーシャがポツリと呟いた。

「そう言えぱ、アリスのブロシージャがこんな感じだった」


[下手くそ虎治]

「虎治!上!」

 虎治とサスケラもアリスの内部空間に入っていた。

 小さなダンジョンには、風竜もいるのだ。

 空の備えも必要かも知れない、そう考えたのだ。


 しかし、警戒していたのは風竜のデッドコピーであって、

 外から入って来た風竜のアバターではない。

 なのでサスケラは怒鳴った。

「この馬鹿風竜!何度主の夫を襲うつもりだ!」


 例によって、風竜は虎治を食いそこね、

 虎治は風竜の後ろを取った。

「えっと、殺しちゃって良いの?」

 内部世界なのだ。補充しなくても満杯に装填されている。

「構わん、一度死なんと直らんだろう」

「じゃあ、バイバーイ、恨むなら、サスケラ恨んでね」

 外し様の無い胴体狙いの射弾は尻尾の付け根に集中した。


 相変わらずの下手くそである。

「あっれー?」


[投降]

 此れは無理だ。中隊を任されていた、

 小尉はそれ以上の侵攻を断念した。

 既に二個小隊を失い、中隊の要であった先任軍曹も死んだ。

 しかし、あのカイマンだ。


 戻れば皆殺しにされるだけだ。

 なので小尉は声を張り上げ叫んだ。

「ダンジョンマスター!我々は降伏する!」

 武器を投げ捨てる。部下の兵達も次々に倣う。

『宜しい、転移門を開きます、武器を持たずに入って下さい』

 女の声だった。


[友炎]

 マティは、躊躇った後、風竜をサルベージした。

 どう見ても風竜の意図的なフレンドリーファイアーなのだが、

 事情も聴かず切り捨てる分けにも行かない。

 尾が殆ど使えないのでは姿勢を制御出来ず、

 墜落したのだろう。


 勿論即死だ。


[天女]

 カイマン将軍の動向を見ていたドロシーはそろそろ頃合いだと、

 木目シャオに連絡した。

 木目シャオは、森のシャオに連絡し、

 森のシャオは森人空軍に発令した。


 なぜ、今頃になってかと言うと、

 双方の被害を最小に出来るタイミングを計っていたのである。

 もし最初から投入していれば、

 一方的な残滅戦に為っていた可能性が高い。


 カイマンは全軍突撃を命じる積もりだった。

 色々と小賢しい策を弄したのがこの体たらくだ。

 始めからこうしていれば良かった。

 号令を掛けようとしたその時に空中に天馬に騎乗した天女が現れた。


[鰐の哀歌]

『私は神樹の森の武官、ミーティア、キーナン、ウーシャラーク、神樹の森で極悪人に指定された、カイマンを捕らえに来た。』

「何の権限があっての事だ。将軍を呼び捨てにするのはウーシャラークに対する侮辱ぞ!」

 副官らしい者が叫ぶ。

『とうに、将軍職を解かれている。いま将に反乱軍としてこの軍を討伐するウーシャラーク軍が編制されている処だ。そして…』

『そして…、このダンジョンは、神樹の森の庇護下にある。此処に攻め入るは、神樹の森だけならず、その同盟諸国に宣戦布告するも同義、ウーシャラークにその罪を擦り付けるか!』


 兵達は、周りの揺らめきに気付いている。森が相手であれば理不尽極まりない魔法が雨霰と飛んで来るだろう。この揺らめきはその予兆か?

「構わん撃ち殺せ」

 カイマンが命じた。躊躇う狙撃兵。

 その狙撃兵を討とうと大剣を振り上げた処で、

 カイマンの首筋に矢が突き立った。

 カマーンチュだった。

圧倒的な武力を背景に、とシャオは考えたのでしょうが、森人空軍って隠蔽で見えないんですよね。

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