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公国の歌姫  作者: 南雲司
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師弟の邂逅

じわじわ動き出します

[木目シャオ]

 攻略軍中尉との二度目の会談には木目シャオも立ち会った。

「エルフの方ですか」

「此処は神樹の森の庇護下にあるダンジョン、依ってエルフをエルフと呼んで良いのはエルフだけ」

 意味を図りかねて戸惑う中尉に、ドロシーが解説をする。

「エルフとは森の住人が自らをへりくだって使う言葉です。他の者がそう呼べば、侮辱となります」

「死罪」

 頷いて補足する木目シャオ。

「これは失礼しました。なんとお呼びすれは」

「木目と」

 面倒になった木目シャオは適当に応えた。


[カーシャ、トムオス、アマーリ]

 総務辺りはまだ忙しそうにしてはいるがグル師の準備は調った様で、三人はお役御免となった。

「気晴らしに芝居でも観に行かないか」

 丁度、いま人気の魔女と聖女の熱いバトルシリーズを演っている。

「あー、御免、庭師の爺様の手伝いがあるんだ」

 心酔するシャオが悪役の芝居等、見たくもない。

「では、僕達も」

「やめといた方が、いいぜ、ドワーフでもなければ筋肉痛で二三日動けなくなる」

 残念トムオス君。

 入学式での再会を約しカーシャは二人と別れた。


[偉大な餌付け]

「なんでシャオ様がいるのさ」

 虎治はモニターに映る木目シャオに、疑問符を発生させた。

 暇になった事もあって、小さなダンジョンに遊びに来ている。

 ちなみに、シャオと木目シャオの違いには未だに気付いていない。


「シャオ様は空間魔法の大家です、同時に複数の場所に存在する等、造作もない事」

 コアの分身であるプヨは、ほぼ同じ反応をする。

 即ち、面倒だから適当に応えた。

「分割ルームとおんなじ感じ?」

「概ね」

 いや、大分違う。寧ろ根本的に違う。


「ねえねえ、イチゴのショートケーキはないの?」

 アリスが懐いている。餌付けは偉大だ。


[ウーシャラーク]

 湖水を渡った早馬がやっとウーシャラークに到達した。この後周辺国の問い合わせが殺到する事に為るのだが、いまはまだ静かな物だ。


[庇護]

「大体事情は飲み込めました」

 概ね予想道理の事情で、庇護を求めてきた。ドロシーに一任すると予めの衆議は纏まってはいるが、状況は常に変化する。


 例えば、庇護を求めているのは想定していた、この一個分隊ではなく、此処にいない四人を足した五人の指揮官である。

 一個分隊なら戦力の補強として、例え一時的な物で有ったとしても、有意であったが、指揮官が五人となると話は違って来る。


 眷族化して永続的に下るならまだしも、中途で受け入れ先が見付かり解放するなら、ダンジョンの防衛に支障を来たし兼ねない。指揮官なのだ。弱点が外部に駄々漏れになる。

「受け入れても、よござんすが、マスターに忠誠を誓って頂くことになります」

 その事は折り込み済みだった様で、中尉は即諾そくだくした。


[鰐]

「儂が行こう」

 そう言ったのはカイマン将軍で、ウーシャラークの勇将である。

 討伐に必要な大軍をキーナンか通すとは思えない。ならば、小部隊で移動して大隊の指揮権を取り戻すしかない。

 反乱軍にした処で独立を目指せば周辺国からの良い餌食と成るだけなのだ。首謀者共に何が出来るとも思えない。

 将軍はそう考えた。

 そして、今度こそダンジョンを落とし、キーナン共々食らって遣る。


[使者]

 キーナンの混乱は覚め遣らず、しかし対処を滞らせればどんな不利益が発生しないとも限らない。公は出来る事をする。即ちダンジョンへの使者の派遣だ。

「ヘイアン師よ、グル師を伴って、使者として赴いて貰いたい」

「大学の事業に差し障りが出ますが」

「止むを得ぬ、大場より急場だ」

「御意」


[転移門]

「ならば善は急げです、中尉には検索ラインを着けてあります。一度お戻りになってください。そこに転移門を開きましょう」

 そう言いつつ中尉に紐付けたラインを補強する。

 門を開くには脆弱すぎるためだ。


「そんな事も出来るのか」

 森のサポート有っての事だがそこ迄は説明しない。


[顎]

 ヘイアン師はグル師の館を訪れた。陽は、地平線に半ば沈み、この時間におとなうのも、とも思ったが事は急を要する。

 グル師に会い、使者の件を伝えると、ドワーフの娘が呼ばれた。

「今から、いくのかい?ちょっと訊いてみる」

 ヘイアン師の顎が下がる。


「構いませんよ、夕げも終わりましたし」

 出たのはプヨだった。

 転移門が開いた。

 ヘイアン師の顎は下がりっぱなしだ。

 そろそろ口の中が乾くだろう。


「手前はキーナン公国筆頭魔導師を務めておりますヘイアンと申します」

 些か、吃り気味に自己紹介をする。使者として何の用意もしてはいないのだ。

「これは、ご丁寧に、わたくしはアリスお嬢様の眷族ドロシーと申します。お嬢様は未だ年少にて、渉外しょうがい一般を任されて居ります」

「おや、そちらの方がマスターと思って居りましたが」

わたしは、ネーネ・シャオ・ハイマオの同位体、[木目]。神樹の森の代表者として来ている」

 なんと、森の庇護下にあるのか。

 これはどうしても友宜を結ばねばならない。

 ヘイアン師の顎がまた落ちた。


「その同位体というのは?」

 グル師が問うた。

 シャオにそっくりだが、顔に木目の入れ墨があり、エルフでもある。

 しかし、先程目礼を受けた。

 無関係とは思えない。

「師よ、現在この身は、神樹の森に住まう、シャオ・ハイマオと同期しております」

 なんと、本人だと言う。

 今度はグル師の顎が落ちた。


さすがのシャオも恩師の前では普通に敬語。

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