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公国の歌姫  作者: 南雲司
10/21

お腹の脂肪は敵

もっさり回

[カーシャの謎]

 合格は最終的に募集より八名多い五十八名となった。

 優秀な者が多く集まり一人でも多く拾い上げようとした結果だ、と公表されたが、受かったのが奨学金希望者ばかりで、現金の入る自費希望の者を捩じ込んだのだと噂された。

 実際は寧ろ逆で上位に多い、異国からの受験生は殆どが自費希望であるし、下位の八名は奨学金希望のキーナン人であった。

 軍務省辺りからの圧力があったかどうかは定かではない。


「カーシャ」

 呼ぶ声に振り返るとアマーリとトムオスが手招きをしている。

「なに?忙しいんだけど」

 新学期を間近に控え、カーシャはグル師の手伝いに

 こき使われていた。

 当然庭師の爺様の手伝いはお役御免である。

 それを伝えた時の爺様の背中が小さく見えて、少し切なかった。


「いや、昼飯一緒にどうかと思ってさ、トムオスもカーシャと話が有るらしいし」

「おい」

「あー、御免、多分お昼食べてる暇ない」

「えっ」キョトンとする二人

「じゃね、善き学園生活を」


 寮に入る者は実技試験の時から継続で住まっている。

 遠方の者だと帰省すれば入学式に間に合わないのだ。

 二人はカーシャも度々学内で眼にする事から、

 その口だと思っていた。

 が、違うらしい。


 いま職員室に入った。

 と思ったら、書類を抱え小走りで学長室に向かう。

「事務員の仕事じゃないか、何でカーシャが?」

 二人はいぶかしむ。


[体脂肪]

 アリスは舌が肥えて来ていた。

 三年間殆ど芋ばかりだったのが、

 三度三度真っ当な料理を食べられるようになっていた。

 のみならずデザート迄付くのだ。

 より甘い物を、

 より美味しい物を、

 欲望は限り無く

 …痛い。

 ドロシーに脇腹を摘ままれた。


「体脂肪率が大きいですね、今日からランニングを日課に入れましょう」

 ドロシーに妥協はない。


[プヨの仕事]

 プヨは溜め息をきながら、折角造った掩体を壊していた。

「芋畑が必要です、此処からあそこ迄を開けて下さい」

 ドロシーにそう言われたからだ。

 どちらも、元は同じ歪なコアから分離したプロシージャなのに、

 威圧感と言うか威厳と言うか、明らかに違う。

 これはマスターの差なのか?

 プヨにはわからない。


 しかし、畑を作るとなると水源が必要だ。

 何処か宛があるのだろうか。

「もしかして、私が探す事に?」

 取り敢えずプヨは数本の検索ラインを地下に潜らせた。

 大湖も小湖も近いとは言えないが、

 無視できる程離れている分けでもない。

 地下水が走っている可能性はある。


「検索ラインは何時まで借りられますか」

 ドロシーが訊いてきた。

「小さなダンジョンの危機的状況が改善される迄ですね」

 プヨは答える。

「ふむ、実質無限?」

「人族の時間感覚からはそうなりますね、百年や二百年では改善できませんから」

 極小の検索領域をどうにかしないと改善は難しい。

 飛行できる眷族で偵察範囲を広げる事は出来るが、

 如何せんコストが掛かりすぎる。

 魔素収入も問題だ。

 今は、[城]と[歪なダンジョン]からサポートがあるから良いが

 何時までもそう言う分けには行かない。


「では、岩山を子細に検分する余裕はありますね」

 プヨの仕事が増えた。


[魔石と湯石]

 グル師はシャオの論文から、初等に使えそうな物の当たりを付けていた。例の如く理路整然としていた為、意外と作業は捗り、なんとか新学期に間に合いそうだ。ありがたいのは、空間書き換えの際の魔素対応表が何種類か付いていた事で新入生をしごく良い材料になりそうだった。


「老師、入るよ」

 カーシャが返事も待たず入ってきた。頼んでおいた新入生の仔細情報だろうか、書類を抱えている。

「ご苦労さん、そこへ置いてくれ」

 机の左側を指す。

「なあ、老師。空間魔法の講義はいつ頃から始まるんだい」

「学力の確認で一月ひとつきは掛けるから、その後だな。何で訊く」

「そろそろ、小さなダンジョンになんか持ってってやんないとな、芋はまだ足りてるだろうから、燻製とか漬物の類いだな」

「先日行ったばかりだろう?その時に渡せなかったのか」

「冗談、材料集めて作るんだ、二週間は掛かるぜ」

 その間の休暇願いも兼ねた発言だ。

 意表を突かれて、グル師は言葉に詰まる。自給自足ではないか。

「あ、そうだ、老師。湯石のちゃこいの、どっか売れるとこ知らないか、結構貯まっちゃってるんだ」


 訊けば、食糧を届ける度に小さな魔石や湯石を貰っていたのだと言う。イェードゥ時代であれば違法だが、もうイェードゥは存在していない。


「一度見せて貰えないか」

 なんなら、大学で買い取っても良いだろう。

 教材にしろ補充用にしろ、使い道はいくらでもある。

「じゃ、いまから行くかい」

 カーシャにしても望むところだ。

 金銭に変えられるなら、大分手間が省ける。

 自分で作らずに市場から仕入れれば良いのだ。


[森のあばら家]

 転移門開いた先には、雑木が鬱蒼と繁った小さな森、

 その中にあばら屋があった。


「汚くて御免よ、イェードゥから隠れてたからね、こんな感じになるのさ」

 坑洞が小さなダンジョンの支援を始め、

 湯石と魔石が坑洞に流れ始めた。

 それがイェードゥが兵を向ける発端となったらしい。

 結果、プロシージャが死に、ダンジョンは停滞した。

 カーシャの家族は、帰還命令を受け帰ったが

 原因を作った後ろめたさからか、年の割に幼いアリスの為

 カーシャを残した。

 まあ、カーシャについては、連れて帰ると

 不都合が発生する可能性もあった事もある。



「で、俺の出番は?」サルーの出番は残念ながら無い。

ここで一旦、先々の為に伏線を貼りまくります。

使うか使わないかは(誤字に非ず)のみぞ知る。

何しろ記憶力皆無が取り柄の作者です。

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