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プロローグ

久しぶりの新連載です。私も楽しんで書きますので、皆様も是非楽しんでください。

しばらくはプロット無し、書きためなしのライブで書いていきますので、誤字脱字などがあれば教えてください。感想、評価など作者のやる気を促進するアイテムをもらえると小躍りします。

更新は週1回くらいになります。

「……何度目だ?」

「15回かの」

「断っただろう」

「諦め切れぬ」


――帰宅した俺の目の前で土下座の状態から上目使いにこちらを見ている飛び切りの微乳エルフ……風の禍々しき悪魔。


「転生はしたくない」

「お主ほどの逸材はいないのじゃ」

「せめて女神が出てこいよ」

「残念ながらこの世界にはいない」


 神がいない世界と知ったら、色々と困る方々がいるだろうなぁ。


「色々と特典を用意している」

「全部聞いた」

「身分保障もあるぞ」

「いらない」

「明日で死ぬんじゃぞ」

「興味が無い」


 どうやら俺は明日で死ぬらしい。

 まぁ、それ程未練も無い。仕事も今日、後輩にきちんと引き継いできた。退職する訳でも無いのに引継ぎさせられた後輩は怪訝そうな顔をしていたが、まぁ、事情説明は机の中に手紙で残してきているし、こいつの言う事が嘘だったら明日回収だ。


「死んだ魂は劣化するから、綺麗に転生させられないのじゃ。今なら……今なら、お主の記憶を保持し、お主の魂ポテンシャルを維持したまま、あのクソ神どもが支配している世界へ送り込めるのじゃぞ! 悪魔界にとってこの機会を逃してたまるか! ……んが!」


 力ずくで契約書にサインさせようと飛びかかってきた悪魔を踏みつけながら俺はネクタイをほどく。踏まれたショックで悪魔は、その本当の姿である、こじんまりとした角を持つ少女に変わった。


「くそー、術が解けたじゃないか」

「元よりその姿を知っている俺相手じゃ意味ないだろう。騙したければ最初から化けておけば良かっただろう」


 そうすれば俺も騙されていたかもしれない。


「契約には真の姿が必要なのじゃ。それが悪魔的王道展開というもの」

「王道というならトラックを俺にぶつければいい。そうすればあっさり転生していたかもな」

「何度も説明しただろう。死因はこの後、眠った直後に心不全。痛みも少なくあっさりと逝くという事は決まっている」

「なら、仕方無いな。俺は寝るぞ」

「寝たら死ぬぞ」

「望むところだ」


 1年前から転生を勧誘されていた。

 何度もレクチャーを受け、悪魔の目的も聞いた。

 その上で、俺はここで死ぬことを選んだ。

 どんなに説得されようと俺は転生する気は無い。


「こんな好条件を並べたのに、なんで転生してくれないんだ!」


 あらゆる優遇された条件を書いた契約書を振りかざし悪魔は叫ぶ。


「条件だけで人を説得できると思うなよ」

「くそ……無駄に格好いいセリフを」

「ああ、そうかもな。だが俺にとっては充分な理由だ。俺は世界を見限った。この絶望を抱えたまま俺は死ぬ。未練は無い」


 転生の話を聞いた時は狂喜乱舞した。

 夢が叶うかもしれない。そう思ったのだ。

 転生先は剣と魔法のファンタジーな世界らしい。

 冒険者ギルド、旅、貴族社会、魔法学院。


 まさに俺が望んでいた世界。


 だが、そこには肝心の――


「なんでエルフがすべからく巨乳なんだ! エルフは微乳が基本だろ! 転生先の世界どころか、幾万もある全ての異世界においてスレンダーなエルフがいないなんて……」


 巨乳エルフなど邪道だ。

 あれは単なるエロフだ。エロフ。


「だから俺は死ぬ。墓標には『夢に破れし男、この地に眠る』と刻んだ物を発注済だ。もう未練など無い」


 布団に潜り込み、目を閉じた。

 さよならクソみたいな世界。

 

「……な、なる……私が……なる」


 だが、眠ろうとした俺の枕元に悪魔が座り込み何やらブツブツと呟いき始めた。


「わ、私がなればいいのだろう……その正統派エルフに……くっ……い、一緒に転生しよう。わ、私が転生の際にステータスを、ちょ、調整して、お、お前の望む姿で転生すればいいのだろう」


 何を言い出したんだ、この悪魔……とりあえず、


「微乳で美乳だ。金髪、色白、耳は尖っていて超美人。化けた姿は認めん。真からその姿にならなければならない。そして……悪魔としての記憶も持っていかない……そして俺の事を心から愛する。できるか?」


 条件は出してみた。


「で、できる」

「契約書に書き足せ」

「……くっ……書いた」

「よし、行くぞ」

 

 契約書内容を確認しサインした俺は元気よく立ち上がった。

 その横で悪魔が手を床に付いたまま呆然としている。面倒な奴だ。新しい希望に満ちた世界の旅立ちに指すなんて。


「おい、急げ。なんか心臓あたりがチクチクしてきたぞ。このままでは死んでしまう」

「えーい、煩い。お前なんか……お前なんか……」


 俺は契約書をかざした。

 そこには悪魔のサインも終わっている。


「い、く、ぞ」

「……はい」


 その瞬間、俺の意識は真っ白な光に包まれた。

 さぁ、行くぞ。異世界よ。

 待っていろよ、正統派エルフ!

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