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過去と現在、そしてこれから

 これはあなたに恋をした日からのわたしの想い。そして、『私』の想い。


 私は自分でもわかるほど虚ろな人間でした。

 けれどだからといってそのことに対して何かを感じるということもありませんでした。私にはそもそも何かを感じることなんてできなかったのですから。私はどこまでも空っぽで伽藍堂だったのです。


 昔、とある舞台を見に行きました。私はそこで一人の女優に強く心を惹かれました。その時、彼女は恋人を想う悲運の女性を演じていたのですが、彼女が恋人を想う表情は私が演じる時にするものとは大きく異なっていました。

 きっと彼女は恋をしていたのだと思います。

 とても辛そうな、けれどそれでいて慈しむような、とても愛おしい顔をしていました。今まで見てきた何よりも美しいと思いました。

 私はそんな彼女から目を逸らすことができませんでした。

 そしていつしか、私も恋をしてみたいと思うようになりました。


 私があなたと初めて会ったのは部活動初日のことでしたね。

 あなたの姿を見た瞬間、私が見る世界の情景は一瞬にして変わりました。驚くほどの鮮やかさでした。まるで白いキャンバスに様々な色の絵の具を散らしたようでした。その光景の美しさに思わず涙を流したほどです。

 なのでわたしは、あなたとなら完全に本当の自分を取り戻すことができる、『わたし』という器にきちんと『わたし』を収めることができると思いました。

 部活動の後、あなたを誘って一緒に話をした時は心臓が飛び出してしまうかと思ったほど胸がどきどきしました。こんなことは生まれて初めてでした。


 あなたはわたしに沢山の想いをくれました。

 その全てがきらきらしていて、時々眩暈がしそうなほど大きな感動でした。その一つ一つがわたしの宝物です。本当にありがとう。

 けれどわたしのこの幸せはあなたの犠牲を前提にしています。そのことが段々わたしを蝕んでいきました。

 しかしそれでありながらあなたに近づく人に嫉妬して、一人占めにしたいという自分の傲慢さがたまらなく嫌になりました。もう十分に大切なものを受け取ったのだから、わたしは強くならなくてはいけません。独り立ちしなくてはいけません。

 だからわたしはあなたから距離を置くことにしました。けれどわたしはあなたのように器用にはできなくて、結果としてあなたを深く傷つけてしまった。


 あなたは嘘偽りのない気持ちで、その優しさで、わたしを満たしてくれました。

 だからその分だけ幸せにならないといけない。

 本当のあなたの姿で。

 だから今度はわたしが覚悟を決める番。


 わたしはもう大丈夫。

 きっとしばらく寂しい想いをして、時には泣いてしまうこともあるでしょう。

 でもわたしはこれからちゃんと生きていける。

 『本当』のわたしで。


 だってもう世界が色褪せることはないのだから。

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