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 待ちに待った日がやってきた。

 学園祭の演目発表である。


「ユウキくん、やっとこの日が来たね!」

 いつも通り絵美が二年生の教室に来て、ユウキの机に手をつけて言った。彼女の頬は上気していて興奮を隠せないようであった。

「うん、そうだね絵美」

 ユウキは笑顔で応じたが、内心やり辛さを感じていた。

 以前部室で仲直りしてからというものの、絵美はまるで何事もなかったようにユウキに接してきた。ユウキも表面上は同じようにしていたが、あまりにも綺麗に装った態度であり過ぎた。なので恐れを抱かないわけにはいかなかった。

 それは驚くほどに徹底されていて、まるで何かを決意したかのようであった。


「さあ! のんびりしてないで早く行くよ!」

 絵美は制服の袖を引っ張って言った。


 京介と浩司はやれやれといった様子で絵美たちを眺めていた。ユウキ以外に彼女の異変に気づく者は誰もいなかった。

 それはそうだ。ぼくたち以外にわかるわけがない。いや、もはや絵美にも理解することは叶わないだろう。他でもないぼくが絵美を変えたのだから。

 ユウキは自嘲気味に笑って席を立った。

 部室まで歩いている途中、すぐ隣にいるはずの絵美がやけに遠く感じられた。


 部室に入ると、すでに部員のほとんどが集まっていた。

 彼らはユウキたちの姿を認めると次々に声をかけてきた。やはり三年生である絵美が劇に出られる最後の機会であるこの学園祭劇に皆期待を寄せているようであった。

「やあ、ユウキくんに絵美。遅かったじゃないか」

 麗が手を振って二人を呼びかけた。

「麗ちゃん! へへん! ギリギリセーフなのです!」

 絵美は胸を張って答えていた。麗はそんな彼女の頭を撫でた。絵美も気分がいいのか、麗にされるがままであった。


「部長、いよいよですね」

「ああ、ついに、だ。今回は私たち三年生が関われる高校最後の演劇ということもあってかなり気合いを入れさせてもらったよ。配役の方も面白くなってるからぜひ期待してくれたまへ〜」

 麗は相変わらずの不敵な表情でユウキを見た。

「はい、期待させてもらいます」

 ユウキは全力の笑顔で応じた。部長との会話もすっかり慣れてしまったな、とユウキは心の中でも笑みをこぼした。


「よし、みんな揃っているな」

 程なくして顧問がやってきた。教室が一瞬で静まり返る。特に三年生は表情が強張っているのをユウキは発見した。

「お前らも知っての通り、今回の学園祭劇は三年生最後の劇となる。そういうこともあって脚本を務める渡邉もかなり気合いが入っている。顧問の俺が言うのもなんだが、正直かなりすごいものになる予感がしている。渡邉が提案した配役を見た時なんて腰を抜かすかと思ったほどだよ。だからお前らもこれから言う配役を聞いても驚かないでくれ。と言っても無理だろうがな」

 そう言って顧問は豪快に笑った。それを見た部員たちは多少緊張を解すことができた。しかし三年生は依然として半分引きつったような顔をしていた。


「では早速発表に移らせてもらう」

 全員の視線が顧問に集まる。


「演目はシンデレラだ。王子様役には小宮山を指名する」

 その瞬間どよめきが部内に広がった。

 それも無理はない。この配役はあまりにも意外過ぎた。

 王子様役はしばらくユウキが不動の役柄であった。それを小宮山が務めるというのだ、嫌でもかつて絵美と小宮山が主演となった劇『誰かと誰かの物語』を意識してしまう。

 部員たちの間でまたあのペアを見られるのでは? という期待が高まっていった。

「これは渡邉からの希望だ」

 顧問は再び強調した。麗は声を上げて驚く学友たちの姿を見て、実に楽しそうに笑っていた。

「そして続いて肝心のヒロインだが——」

 その部屋にいた全員に緊張が走る。

 誰もが噂になった三年生ペアの再来を期待していた。


「お姫様、つまり()()()()()役は進藤に決定した」


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