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第7話 弱虫の覚悟-②

【面白いこと思いつくね、想像力豊かなのかな?】


作戦のため作業をしていると相手がそんなことを書いてきた

うとうとしている監視役に注意しながら静かに作業をする

そんなことを聞かれても返す答えは決まっていた


【知らない】


肯定も否定もできなかった

なぜなら言われたことがないからだ

特にこれといった取り柄のない子供だったから大人からは何も言われたことがなかった



俺が書いた文字を見ると相手はクスッと笑った



作業していると視界の端では他の乗客がこっちを見ていることに気づいていたが構っている余裕はなかった


俺はルシアを助けて

魔王を倒さないといけない



こんな所で止まってる暇はない



※※※


だいたい出来上がると二人で顔を見合わせ頷く

お互い言っていた場所に移動する


息を整え考えた作戦通りの行動をする

そして俺はある場所に移動して床をバンッと叩く

眠そうな監視役を起こす意味も兼ねて



乗客も不安そうにざわつき始めた


「誰だぁ?勝手なことしてんじゃねぇぞ」


案の定眠そうにしていた監視役は起きてこちらに向かってくる

銃を構えてるため、見つかれば殺される可能性の方が高い

心臓がうるさい

手も少し震えている

でもここでやめるわけにはいかない


目を閉じてもう1度落ち着く

監視役の足音が静かな車両内に響いている



こちらの席に近づいてきた時



向かい側の席の脚に括りつけてあった透明のピアノ線をピンと張る

狙った通り足元に注意していなかったのか、何本も重ねられたピアノ線に足をとられコケた


前向きに倒れたから頭を打ちゴンッと大きな音が響いた

それが合図のように斜め前の席で待機していた旅人男が顔を出す


にっこりと笑うその顔はこの現状を楽しんでいるようにも見えた


倒れた男のそばにより頭をアルディアと旅人男の荷物の重しになりそうなものをまとめた袋で思いっきり叩く


アルディアは椅子の下から出てきて男の意識を確認した

頭に衝撃が渡ったせいか作戦通り気を失っていた


作戦は成功だ


「おーまさかこんな簡単に倒れてくれるとは」


旅人男はぱちぱちと手を叩き倒れた男を見ていた


綺麗にコケてくれるかはかなり賭けの部分があった

椅子から地面は人が一人隠れられる程度しか空いておらず、監視役が足元にも目をやっていたら即見つかっていたかもしれなかった


「でも、よく引っかかるって分かったね。僕は結構不安だったんだよ?勝算低かったし」


そう言われると確かにそうだった

こんなに綺麗にコケてくれるかどうかも賭けだったしもしかしたらコケる前に手をついて持ち直すかもしれない


「あー…監視役の奴、若干すり足だったから足元弱いかなって。あと眠そうにしてたしいくら警戒して銃構えてても足元まで気が回らないかなってちょっと思ったから」


旅人男はふーんとだけ言い、気を失っている男の手と足を縛り椅子の下に押し込んだ

ちゃっかり男が耳につけていた通信機のようなものも取って


「とりあえずはこれでいいかな?勇者さん」


「その呼ばれ方こそばゆいんだけど…まぁひとまずは」


辺りの乗客に目を移せば安堵の表情を浮かべている人が多かった

頭を下げかお礼を言う人もいればまだ不安そうにしている人もいる


「やっぱ勇者さんは度胸があるね、あっぱれあっぱれ」


ぱちぱちと手を叩き言う

皮肉にも聞こえるが素直に受け取った


「あんた…えっと。…名前」


よく考えれば名前を聞いていなかった

相手の方を見て名前を聞く


「僕?僕はニノだよ、勇者さん」


ニノと名乗るその男はニコニコと笑いピースをする

相手は自分の名前を聞いてはこないから教えてないが、勇者さんという呼び方は少し苦手だった


「俺…アルディアって名前だから勇者さんってむずがゆいしちょっと…」


控えめに恐る恐る言うと相手は首を傾げ


「アルディアか…でも勇者さんの方が呼びやすいしそうするね」


ニコニコと笑う相手は分かってくれる気配はなかった

これ以上言っても無駄な気がして何も言わなかった



すると相手は足をかけるために付けていたピアノ線を外していた


「よく…そんなに持ってたな」


正直1、2本かと思っていたが相手のポケットから出てきたのはかなり量があった

こんなに持っていても旅に対して実用性も無さそうだし疑問だった

相手は少し笑い口を開いた


「僕は必要なんだよ、それに結構遊べるから好きなんだー」


相手は丁寧にまとめてポケットに入れる

ニノはもう一度かがみ男が持っていた銃を手にする


「これあれば強いよー?使う?」


ばーんっなんて言いながら銃を構えている

確かにそれさえあれば次の車両も楽に通過できるだろう

でも


「やめとく…人は殺したくないし」


「…ふーん…」


相手はかなりどうでも良さそうに呟く




やのに魔王は倒すんやね、という小さな呟きはアルディアの耳に届いていなかった




何が出来るか少し考えていると、んーっと言いながら伸びをして相手はこちらをもう一度向いた


「さて、どうする?勇者さん」


今1度相手がこちらの顔を見る

ひとまずこの車両内の安全は確保出来た

後ろの車両はあの爆発音なら惨事になっていることは確かだろう

それに男達は前の車両に移動した

ここは4両目


「とりあえず前に行く」


「だろうねぇ」


旅人男の全部の知ってるみたいな言い方は結構苦手だった


短剣を手に持ち前の車両に繋がる扉の横の壁に背中をつけしゃがむ

ニノは席に隠れてはこちらを見てニコニコと笑っていた


扉につけられている丸い窓から前の車両を覗く

前の車両には二人監視役がいた

銃を構えてぴりぴりとした雰囲気が出ていた


何か癖さえ掴めればそれを逆手にとって何か出来るかもしれない

でも動かない相手に対し短時間で見つけることは困難


もう1度壁に背をつけ屈む

何かいい方法は…

ニノに聞くわけもいかない

自分の問題なんだから自分で何とかしないと

それに言われたことをしっかりできるかと聞かれれば頷きにくい


昔から言われた通りに動くのが苦手だった

自分の意思でやる方が楽しいし

とは言っても向こうは二人、それに銃を持っている

見つかれば撃ち殺されるまで時間の問題だろう


親指の爪を噛み考える

どうやれば前に行けるか

出来れば誰も殺さず、怪我人もなしに

短剣を強く握りしめる

できるだけ鞘からは出したくはない


「勇者さーん、だいじょーぶ?」


ニノがちらっと顔を見せれば小声でそんなことを言う

大丈夫と言えば嘘になるがとりあえず頷いておいた

何を考えてもうまくかわせる方法が思い浮かばなかった

どうしても見つかって撃たれてしまう

頭を抱えてもう一度、もう一度と考えるも

思考はぐるぐると回るだけで意味が無い


大きなため息をつき少し目を閉じる

こんな時ルシアなら

そんなことをぽつぽつと考える


「あ…」


ニノの声が聞こえた気がして目を開ける




瞬間車両をつなぐ扉が開き、銃を持った男が入ってくる


完全に目が合うと眉間に冷たい銃口が当たる感覚をはっきりと感じた


「てめぇ…誰かと思えば今有名な勇者さんかよ」


ぐっと銃口を押し付けられれば何も話せなくなる

手が震えている


「っ…」


今1度しっかり感じる恐怖


「勇気出して俺達を止めてヒーロー気取りかぁ?…っはっはっは!!勇敢なこったなぁ!でもてめぇは邪魔だな……死ねよ」


引き金にかけられている指にぐっと力が入る


死への恐怖が無いわけじゃなかった

でもここで止まっているわけにはいかない




短剣を持つ手にぐっと力を入れる

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