第5話 楯突く者は汽車に乗り
南に行けば、という情報を手に入れたので二人は早速この国の南側にある国に行くことに決めた。
その国と今いる国の間には大きな川が流れているため船でないと渡れない
そのため国の端にある船着場へ行くために汽車に乗った
隣国までは2時間弱かかる
朝からさんざん歩いたり、魔王の刺客と遭遇し疲れていたのか二人は席につくと深い眠りについてしまった
ガタンガタンと揺れる車内
人はそこまで多くはなく空いていた
何事もなく着くといいな
二人はそう考えていた
…でもそう甘くはなかった。
トンネルに通りかかった時
後方の車両から大きな爆発音が響いた
自分達のいる車両にまで揺れが広がり、汽車は急停止した
音と揺れに驚き二人は閉じていた目を開け、辺りを見渡した
車両内はざわめき、皆混乱していた
その時後ろの車両のドアが開き男が二人入ってきた
手には大きな銃を持っており、声を荒らげこう言った
「全員その場から動くんじゃねぇ!頭に風穴開けられて死にたくなきゃ大人しくしろ!!」
今までざわついていた車両内は一気に静かになった
男二人は布で口元を隠しているため顔は判別できない
男達は窓を全て占めるよう指示し、乗客から金目のもの、武器になり得るものを奪い、前の車両に行った
1人は車両を繋ぐ扉にもたれ監視をするかのように車内を見張っている
アルディアは剣を、ルシアは魔導書を取られてしまった
財布ももちろん
ルシアは小さな手帳を上着のポケットから取り出し、できるだけ音を立てないように文字を書きアルディアに渡した
【船に遅れるぞ、どうする】
アルディアも監視に少しびくびくしながら文字を書き、ルシアに返した
【そんなこと言っても何も出来ないだろ】
二人は武器を奪われたが、もしもの時ために懐に隠していた短剣は取られずにいた
だがこれのみで対抗できるかと言われれば不可能に近い
車両内はピリピリとした空気に包まれていた
監視役はよっぽど真面目なのか、このハイジャックがよほど大切なのか、難しい顔をして車内をずっと監視していた
下手なまねをすればいつ撃ち殺されてもおかしくはない
その後淡々と時間は過ぎていった
犯人達は最初見た二人以外にもこの車両を数回通ったのを見かけ、犯人はグループらしく4、5人だろうと推測がたった
犯人達はこれといった動きはなく
政府に何か条件を持ちかけているのだうか
汽車丸々をハイジャックし、後方の車両を爆発…被害者は必ず出ただろう
これ程大規模なハイジャックならそれ相応のものを政府か何かに望んでるだろう
アルディアは膝を抱え、現在めちゃくちゃ不安ですオーラ全開だった
昔からトラブルメーカーで何かと不運に巻き込まれやすい体質だった。街に出れば何かと事件に巻き込まれ、乗り物に乗れば事故が起きたりすることは決して少なくはなかった
【元気出せよ】
静かに手帳に書きアルディアに押し付けた
それを受け取りそっと顔を上げてアルディアはゆっくりと書き始めた
【別に元気だけど、怖くなんてないし】
押し付け返されたその内容を見て、ルシアは少し笑を零した
怖くないかどうかなんて聞いてないのになと、そっと心の奥で呟いた
次の瞬間、車両を繋ぐ扉が開き男が三人入ってきた
車内を見渡しゆっくりと歩き始めた
アルディア達が座っていた席の前に来ると足を止め二人をじっと見た
アルディアは頭にかぶっていた布を深くかぶり窓側ギリギリまで寄った
ルシアは淡々とした目で犯人を見た
「女、来い」
犯人達の1人はルシアを指さした
「…は…?」
ルシアは自分を指さし首をかしげた
それ以上にアルディアが驚き、目を丸くして布を強く握っていた
「すぐは殺さない、人質はすぐに殺せば意味がないからな」
前方からサイレンの音が聞こえた
特別監視部隊が汽車の周りを既に包囲したらしい
「もちろん拒否権はない、早く来い」
第6話、読んでいただきありがとうございます
特別監視部隊というのは警察とイコールで考えてもらえればです。
次回も読んでいただけるとありがたいです
ではまた次回