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第1話 始まりの朝は

プロローグを読んでいただいた方!

そうでない方も!

お手を取っていただきありがとうございます。

この物語は勇者が魔王を倒しに行くというなんとも王道なストーリーです…

今回は旅に出る前の前の物語です


※生暖かい目で見守ってくだされば幸いです

「おーい、アルー」


朝7時

小さな宿にゴンゴンとノック音が響く

扉の前に立ってる女は綺麗な銀色の髪をなびかせ冒険者らしい風貌をしていた


ゴンゴン


何度ノックしようと中から返事は無い


「アルー?起きねぇんなら開けるぞー」


扉に鍵はかかっておらずギィィっと鈍い音が鳴り

ベットの上にはシーツにくるまりガタガタと震えている者がいた。これが女の呼んでいた男だとは言うまでもない


「アール!いつまでそうしてるつもりだ!さっさと起きろ!!」


「ぎゃあぁあぁぁあ!!」


シーツを剥ぐと情けない声を上げベットから転がり落ちる男がいた

名はアルディア

今、世を騒がせている勇敢な勇者…のはずだ


「ル、ルシア!なんだ…驚かせんなよ…」


ほっと胸を撫で下ろすその姿に全く勇者の面影は感じられない


「明日早朝に旅に出ると言ってもう7時だ、早く出ないと次の街に行く前に日が暮れる。 ほら、早く支度しろってば」


「だ、だってよ!魔王なんて無理に決まってるだろ!?強いから魔王なんて呼ばれてんのに俺なんかが勝てるかよ…」


ぶつくさと文句を言うアルディアを横目に荷物をまとめるルシア

どうやらあまり話を聞いていない様子だ

外では人が増え始め街も賑わっている


「そんなわがまま言っても王様からの命令だろ?やらなきゃ私たちの首が飛ぶぜ、それに手下の1人を倒したんだから力をつければなんとかなるだろ?」


この男が勇者と呼ばれるのは

一年前、突如現れこの世界の半分を乗っ取り。人間をさらい、魔物や恐ろしい幻獣をこの世に蔓延らせている魔王が現れた。もはや人間は一部の島でしか生きれない弱い存在となってしまっていた。が、しかし、この男はその魔王の手下である1匹の幻獣を倒したのだ。

それは世界的偉大な出来事になり、その幻獣が支配していた地域も奪還できた。


「一流のハンターだろうと何人も敗れてきた強いやつだったんだろ?…それを倒せるだけの力があれば、もうちょっと修行して、旅して、力をつければなんとか」


「…がう…」


小さい声でアルディアは何かを言った

下を向きプルプルと震える姿はさながら子犬のようだった。


「違うってんだろ!?確かに俺は幻獣に会ったよ…でも相手は間違えて毒草食べたとかで…弱ってたから手始めに剣で角折ったら泣いて逃げてっただけなんだよ!そしたら近くにあった崖に落ちて…」


「………はぁああぁぁぁあぁ!!!?」


屋根に止まっていた鳥が驚き飛んで行った

ルシアが驚くのも無理はない

幼馴染であるルシアさえもこのことは初めて知らされることだったからだ


「な、えっ…はぁ?!ってことは…お前は幻獣を倒してないことに…」


世間ではアルディアが幻獣を倒した勇敢な勇者だと騒がれている

だから誰もそれを疑わない

本人も全く否定しないからだった


「だって…今更倒してねぇなんて言えるはずないだろ!?…みんな信じてるし…言い難いし」


「…はぁぁあぁぁあ…」


思わず長いため息が出た

アルディアは非魔法使いであり剣術でしか戦えない

少しおかしいとは思っていたがそれだけ修行したんだと思っていた


「まさかとは思っていたが…しかし…今更もう取り返しがつかないのは事実だ…アル!」


「あ、は、はい!」


名前を呼ばれるとその場で猫背の体をピシッとし正座をしてルシアを見る


「こうなったのは仕方ない…私も墓までこのことは黙っている…。そしてアルも、絶対このことを悟られるなよ。他言もダメだ、へなちょこでも勇者は勇者なんだ!魔王倒しに行くぞ!」


「やらないって言う選択肢はないの!!?」


「ないから行く!!」


グイッと腕を引っ張り荷物を持ち宿をあとにする

思いがけない事実に胃を痛めるルシア

何を言おうと話を聞いてもらえないアルディアの悲痛な叫びが宿内に響く


「魔王なんて倒せるはずないだろ!!…勇者が強くないといけないなんて誰が決めたんだよぉおぉ!!!」

第1話 始まりの朝は を読んでいただきありがとうございました!

今回の主人公はアルディア、そしてその幼馴染のルシアの二人がメインの登場人物となります。

ルシアはアルディアのことをアルと呼んでいます、ご注意を。

そしてまたまたど王道の自分は倒してないネタですね…アルディアが倒した(仮)の幻獣は大きな一本角の体格のでかい白色の熊みたいなイメージです。

次回もまた見ていただけるとありがたいです!

ありがとうございました。


感想も良ければどうぞ

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