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手紙  作者: Pー龍
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ママの涙

 次の日ママの顔がとにかく早く見たくて、昨日より少し早めに、途中花屋さんで花を買ってから病院へとお見舞いに出掛けた私です。

迷わずにママの病室に入ると、泣いているママに抱きしめられました。声を掛けることもできず、わけもわからず、どうすることもできず、とにかく私はママをなぐさめようとしました。でもどうすることもできませんでした。『ごめんね陽夏、ごめんね』と繰り返すママのつぶやきが頭の中に今も響いてくることがあります。


 長い長い時間と痛い沈黙。こんな時に限って誰からも声は掛かりません。

「ママ、お花買ってきたからお水貰ってくるね。」

 私はそうママに告げ、お花を持って逃げるように病室を出ました。実際、私は泣いているママから逃げました。花瓶は忘れて来ていたので、ナースステーションで貸してもらいました。看護師さんにわけを話すと鋏も貸してくれました。水切りって何のことだか知らなかった私に、丁寧に教えてくれました。花瓶に水を入れて水切りしたお花を挿し、借りた鋏を返してみても案外時間が経ってなかったので、病室の前のソファに座ってぼんやりしてみました。


 ママはいつも泣き虫です。

 感動もののドラマや映画で号泣します。今日は何があったんだろうなんて思いつつ、少しだけ時間をおいてから病室に戻りました。

 泣き止んではいましたがママの目は泣き腫らしているのが丸わかりです。ママの顔はなんだか複雑な感じでした。


「ママ、お花テーブルの上でいいかな。」

「かわいらしいお花ね。陽夏ありがとう。」

 ちょっとまた声が怪しくなってます。ママはまた私のことを後ろから抱きしめました。ママの匂いがします。ちょっとうれしい。


「ママ、おばあちゃんにママの入院のこと知らせた方がいいのかな?」

「そうね、あとでママから連絡しておくわ。」

「ママ、昨日中学校の先生がうちに来てたの。ごめんなさい。昨日も今日も学校には行ってません。だからプリントとか届けに来てくれました。いい先生だと思う。今日も来るって言ってた。」

「そう。ごめんね陽夏。私がこんなだから。陽夏に心配かけちゃって。」

「全然平気だよ。毎日イロイロと新しい発見があって、面白いよ。」

「陽夏、おばあちゃんにこれから相談してみるんだけど、今夜か明日くらいから、おばあちゃんに家に来てもらおうかと思うの。」

「おばあちゃん来るの? それは楽しみなんだけど、でもなんで?」

「陽夏、ひとりで大変でしょ?」

「明日お母さん帰って来るんでしょ。もう1日くらい、なんとでもなるよ。」

「ごめんね、お母さん退院できなくなっちゃった。」


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