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手紙  作者: Pー龍
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林檎

まったく関係ないですが、作者は椎名林檎さんの大ファンです。

「ねぇ、お嬢ちゃん、どうかしら、このリンゴ食べない? いま剥いたところなの。味は美味しいかどうか保証できないんだけどね。もし嫌いじゃなかったら、どうかしら。」

 突然、向かいのベッドのお婆さんから声が掛かった。

 お嬢ちゃんって、あれたぶん私のことだよね。

 ママの顔をうかがったところ、貰って来いを意味する顔をしている。


「いただきます。」

「すみません、田中さん。お世話になります。うるさくしてないでしょうか?」

「いいのよぅ。少しくらい賑やかな方が病室が華やかになって嬉しいわよ。ねぇ、そうでしょ、奥寺さん。」

「えぇ。かわいいお嬢ちゃんね。白田さんの娘さん? もう中学生なの? こんな大きいお嬢さんがいたのねぇ。私の孫もね、男の子なんだけどちょうど同じくらいなのよ。これがもう憎たらしいったら。やっぱり女の子がいいわよねぇ。」


 兎カットのリンゴだ。誰かがこのお婆さんに食べて欲しくて、お見舞いに持ってきたリンゴなんだろう。私のためにお婆さんは剥いてくれたんだ。そうでなきゃ兎カットにはしない。

 一口食べてみた。蜜が入っていて甘くてとても美味しい。このリンゴをお婆さんに持ってきた人の優しい気持ちが伝わってくる。それを頂いてしまっている私。なんだか申し訳ない気分になってくる。


「このリンゴすごくおいしいです。でも、私こんなには食べられないんで、お婆さんも食べてください。」

「そう、おいしかった? 良かったわ。私ね、病気のせいかこの頃あんまり食欲がなくてね、せっかく息子のお嫁さんからお見舞いに頂いたこのリンゴ、どうしようって思ってる所へかわいいお嬢ちゃんが来たものだから、剥いてみたのよ。そうね、それじゃ、私もひとつ頂いてみようかしら。

 ホント。これ、甘いわねぇ。奥さんもおひとついかが? リンゴはお嫌い? 奥寺さんも、ねぇ、リンゴどうかしら?」


 リンゴの入ったお皿を抱えた私は、ママともう1人のお婆さんにリンゴを配って回った。

 見ず知らずのお婆さん2人は私にとても優しかった。私の名前や年齢、学校の話、日常のことを聞いてきた。学校の話は小学校の頃の話をしておいた。奥寺さんは私に少し黒くなりかけてるバナナをくれた。持って帰って明日の朝食べようと思う。田中さんは私にお小遣いをくれようとしていたけど、さすがにそれは断った。ママの目が光ってるしね。


「ママ、また明日も来るね。」

 同室のお婆さんたちもいい人でした。私は充分に満足して病室を出ました。


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