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手紙  作者: Pー龍
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パパ

 ママが星になったあの日からもう一年が経ちます。今日はお寺でママの三回忌がありました。久しぶりにおばあちゃんとおじさんと3人一緒にママのお墓参りにも来ました。


「ママ、私は元気です。もうすぐ高校二年生になります。おばあちゃんもおじさんも特にあれから変わりはありません。まだまだママに会いに行くことはできないけど、その時が来たらたくさん報告することを用意しておきます。楽しみにしていてください。」


 ママのお墓の前に今年撮影した写真の中から一番自信のある1枚を置いてみました。ママ、見てくれていますか? あなたが大好きなおじさんの写真です。いい顔してるでしょ。


 ママ、今日おじさんに伝えたいことがあったので手紙を書きました。



おじさんへ


おじさんにどうしても伝えたいことがあるのだけれど、面と向かっておじさんにお話するのが恥ずかしいのでこうして手紙を書いています。

 

去年の私はママが死んでしまって、あの頃心配や不安なことがたくさんあったのだけれど、おじさんと2人で生活していくなかで、いまではこの生活が当たり前になってしまっています。おじさんのおかげなのかな。ありがとう。肝心な時にいなくなっちゃうおばあちゃんには困ったものですが、ママもあんな感じでした。私もきっと・・・あんな風になるのでしょうね。


おじさんにいっぱい応援してもらった私は高校に入学し、ようやくあれから1年がたちます。おかげで学校生活は順調です。そろそろ大学のことも考えなければいけません。これからもしばらくの間はおじさんのお世話になります。


おじさんは相変わらず仕事が忙しくて、午後学校から帰ってきた私は掃除洗濯お買い物とルーティンをこなすうち、近所のおばさまたちともすっかり仲良くなってしまいました。おばさまたちはおじさんのことを嗅ぎ付けて変な噂が立っていました。ママの遺産目当ての遠い親戚、って酷い噂はしっかりと訂正してあります。最近では私の彼氏ってのもあるようです。これも訂正しておいた方がいいでしょうか。


春休みの間にまた撮影旅行に行こうかと思います。おじさんの都合の付く日を教えてください。今度はおじさんのお勧めの場所も教えてください。


実はママからの最後の指令で私はおじさんとケンカをしなくちゃいけません。おかしなことを頼んでいるのはわかっていますが、そのうちでいいので協力していただけませんか? いったい何をどうすればいいのかわかりません。この1年間どうしたらいいのかと真剣に悩んでいます。


あと、もうひとつだけ。



私、おじさんのことをパパって呼んでもいいかしら?


皆様、最後までこの“手紙”をお読みくださり誠にありがとうございました。第一話の前書きにも書いた通り、この作品は連城三紀彦さんの“恋文”という作品にインスパイアされて書いてしまったものとなります。さすがに“恋文”では本文との辻褄が合いませんので、“手紙”としたものでございます。更に暴露しますと井上靖先生さまの“遠い海”という作品にもインスパイアされた作品でございます。



以下蛇足)

本作品は主人公の少女の視点を主に中心として描かれています。彼女が感じた風景、心に残ったことなどを綴った物語です。それゆえ彼女がどうでもよいと感じたこと、彼女の知らないことには触れていません。手紙というタイトルに違和感を感じた方もきっといらっしゃるでしょう。あまり多く語る気はさらさらないのですが、これは作者自身がかつて友達に書いた手紙を基にした作品となります。

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