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手紙  作者: Pー龍
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ブローチ?

 中学校の卒業式と高校の入学式の日、おじさんは石井のおじさんを呼び出していました。私の写真を撮るためなのだそうです。おじさんの撮ったブレブレの写真でも全然私は構わないと言ったのですが、私のためじゃなくてママのためだと言われてしまうと、拒否することもできませんでした。呼び出されてほいほいと写真を撮りに来てくれた石井のおじさんは相変わらずいい人過ぎます。


 中学校の卒業式はもともと出るつもりなんてなかったんですが、先生に勧められ、おじさんに勧められつい出席してしまいました。おじさんは『入学式に出たんなら、卒業式も出ておこうよ』と説得力のないことを言っていました。私が卒業式に出席したのは決してその言葉に説得されたわけではありません。3年間ずっと私のことを見守り続けてくれた先生のために最後くらいは学校に行こうかなと思っただけです。ママのブローチを制服の胸に付けていますが、これくらいは許してくださいね。同級生の皆さんは『誰? この人』と言った顔で私のことを見てきました。1日だけのことと覚悟はしていたので、そんな視線も気になりませんでした。おじさん2人はなぜだか泣いていました。恥ずかしかったよ。


 高校の入学式のあと、私とおじさん、それに石井のおじさんの3人でお寿司を食べに行くことになりました。おばあちゃんも入学式に来てくれていたのですが、ペット(猫)を飼い始めたので早く帰らなきゃいけないんだと言ってさっさと帰っていってしまいました。


「陽夏ちゃんもいよいよ高校生だね、入学おめでとう。」

「石井のおじさん、今日はありがとうございます。おじさんのわがままに付き合っていただいて。」

「いいんだよ。おかげで陽夏ちゃんをモデルに写真が撮れたし。はい、これ入学祝。」

「この前、卒業祝いもらったばかりだよ。」

「卒業祝いと入学祝は別だよ。」


 石井のおじさんはご祝儀袋と小さな箱を渡してくれました。開けてみるとたくさんの図書券と万年筆が入っていました。カメラの専門書を買おうかな。万年筆は女子高生には使いどころがわからないよ。


「陽夏ちゃん、その胸に付けているブローチ素敵だね。卒業式の時も付けてたよね。」

「これですか? ママの形見なんです。ママが私に付けろって言ってる気がして、付けてみました。」

「入学式、ママも陽夏ちゃんと一緒にいたんだね。」

「はい。」


 おじさんは何かこのブローチのことを知っているんだと思います。石井のおじさんがブローチの話題を言いだしてからずっとニマニマしています。


 私の高校生活がスタートしました。


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