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手紙  作者: Pー龍
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おじさんと

 早朝(いつものランニングの時間)から1人で私たち3人分のお弁当を作り上げました。小さめのお弁当箱なので、おじさんなら2つ食べられるだろうと思います。ごはん、卵焼き、ウインナー、それにデザートのオレンジとリンゴ以外は今回冷凍食品さんに頑張ってもらいました。味に文句があったら冷凍食品を作っている会社までどうぞ。これまでのおばあちゃんのありがたさが身に染みてきます。この間、おじさんはひげを剃ったり着替えたり新聞読んだりテレビニュースで天気確認したり今日の自分の荷物をまとめたり・・・つまみ食いしたり。

 私の持って行く荷物は前の晩にもう全部用意してあります。忘れ物は無いはずです。ママの使っていたカメラマン用ベストも箪笥から見つけ出して着用しています。ママのウェディングドレス姿の写真はスマホの待ち受けに設定してあります。バッグにお弁当も入りました。おやつも救急セットも装備しています。さぁ出発だ。


「おじさん、遅いよ。」

「ふー、ごめんごめん、年取るとさぁ、やっぱり体力って無くなるもんだよね。陽夏ちゃんは若くていいなぁ。おじさん羨ましいよ。」

 こんなありきたりな言い訳をつぶやくおじさん。出発からはかれこれ1時間以上経過しています。後ろから追いかけてくるおじさんのペースは少しゆっくり気味。私が漕ぐのをやめて適当に写真を撮っていると、そのうちに追いついて来ます。


 今日の目的地は早咲きの桜の花が咲く川沿いの土手です。地元に住んでいるお爺さんが何年もかけて1人で植えたものなんだそうです。そこまでは残り1時間程度かな。


「おじさん、良さそうな自転車に乗ってるのに、ママチャリの私よりも遅いってどうなの?」

 そんな憎まれ口を叩く私。

 おじさんは申し訳なさそうな顔をします。追いついてきたおじさんを見てまた走り出す私。おじさんはその後をついてきます。実はおじさんの背負う荷物の中に水筒やペットボトルが私の分も含めて2人分入っているのは内緒です。


「陽夏ちゃんは自分のペースで走っていいからね。俺は後から追いつくから。」


 おじさんの声に振り向いてみると、後ろを走っているおじさんの顔はなんだかとても嬉しそう。私はこの時、閃きました。自転車を漕ぐおじさんの写真を撮ってやろう。

 

 今日の撮影モデルは決定しました。


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