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手紙  作者: Pー龍
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エンディング

サブタイトルはエンディングですが、もう少しだけ続きます。

 葬儀には、通夜の時に来てくれていたママの友達がまた集まってくれました。ママはたくさんの友達に囲まれてとても幸せ者です。ウェディングドレス姿の若いママはとてもかわいい。私ももう少しであのママみたいにかわいくなれるはずだ。これからのお手本にしようと思う。おじさんはママに見せるためにまだ音楽の入っていない映画のDVDとプロジェクターとスクリーンを持って来て、映像を映していました。ママは今きっとこれを見ている。ママのための特別試写会だ。お坊さんがわけのわからないお経をあげている中、スクリーンに映像は流れ続けている。やがてお経は中断し、みんなで順番に焼香する中、映像はラストシーン。主人公のオノ君は時間の渦を漂流し、やがて異世界へと流れ着き、そこで記憶を失くして生きていた年上の彼女と再会する。


 映画は私の望むエンディングでした。ちょっとご都合主義が過ぎるかもしれないけど、アニメだもの。これくらいは許されるだろう。ママもきっとこの結末には満足しているはず。“そうね、いいエンディングだったわ”ママの返事が聞こえた気がします。きっとおじさんにもママの声は聞こえている。


 葬儀が終わって、ママの棺の中に花を飾り、釘を刺しました。ママの棺はおじさんと石井さんが葬儀社の方と一緒に運び出してくれました。おばあちゃんはママの位牌を持ちます。私はママの写真を持ちました。

 火葬場にはママと一緒に行きました。運転は葬儀社の人がすることになっていたんですが、代わりにおじさんがしています。おじさんは車を火葬場に着け、私たちはママと最後のお別れをしました。

 私とおじさんはママが骨になるのを待つ間、ぼんやりと2人で空を見上げていました。ママがそこにいるような気がしていたからです。


「さっき葬儀の時、ママの声が聞こえたの。ママ、おじさんの映画を見て『いいエンディングだったわ』って。」

「俺もそんな気がしてた。詠子に俺の映画、見てもらえたかな。」

「ママちゃんと見てたよ。喜んでたよ。」

「そうか。詠子に見せることが出来たのか。おじさんの人生の目標がいま達成できた気がするよ。」

「まだまだこれからだよ。今後おじさんには陽夏のことをよろしくお願いします。」

「あぁー、それがあったよ。陽夏ちゃんの言うとおりだ。」

 

 この日拾ったママの骨はボロボロと崩れていきました。おじさんは最後に素手ですくっていました。最後の一欠けらまで持って帰りたかったのだそうです。


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