わがまま
ママの葬儀の手配はおじさんがすべてやってくれました。本当はおじさんの方が私よりもずっと辛いはずなのに。その夜は石井さんがおじさんを連れ出しに来てくれてどこかで一緒にお酒を飲んできたみたい。でもおじさんはすぐに家に帰ってきて、それからはママの顔を一晩中見ていました。
翌日の通夜はママの昔の友達が大勢訪ねて来てくれました。私には知らない人ばかりだったけど、おばあちゃんには知ってる人たちだったみたいです。ママの友達のみなさんはおじさんと私のことを励まそうとしてくれます。私にはママが死んでしまったことがまるで実感できてなくて、励まし甲斐が無かったんじゃないでしょうか。おじさんは友達のと昔の話や最近のママとの話をしていました。ママの友達の誰かが、昔の写真を持って来てくれていました。そこにはおじさんとママの写真がたくさんありました。おばあちゃんもママの昔の写真を引っ張り出してきました。ウェディングドレス姿のママがおじさんの隣に写っていました。私はママの葬儀の写真をこれにすることに決めました。写真の手配もおじさんに頼みました。おじさんはその写真を見て少しだけ元気になってくれました。
通夜の夜、おじさんは寝ていません。たぶん昨日の夜も。葬儀の日、朝早くからママの隣に座ってママに私の将来のことをぶつぶつと話していたのが見えました。
「詠子、陽夏ちゃんのことは全部俺に任せておけばいい。安心してくれ。陽夏ちゃんはこれから高校も毎日通うさ。そしたら卒業して大学へ行くんだ。陽夏ちゃんは大学で写真を勉強したいそうだから大学探しが大変だね。海外なんてことも考えていいのかもしれない。俺もいい学校を調べてみるよ。詠子の使ってたカメラや本、あれ全部陽夏ちゃんにあげてもいいよな。そのうち有名なカメラマンになって、俺や詠子の名前も陽夏ちゃんのおまけで有名になるんだ。いつか俺がお前のところに行く時になにもかも全部報告するよ。それまで陽夏ちゃんのことは俺に任せておいてくれ。詠子は陽夏ちゃんのことを遠くから見守ってあげてくれ。」
「おじさん、これからも陽夏たちと一緒にいてくれるの?」
「もちろんそのつもりだけど。陽夏ちゃんのことは詠子に頼まれてるからね。陽夏ちゃんに例え嫌われたって、決してこの家から出るつもりはないよ。詠子が言ってたけど、陽夏ちゃんの大学までの学費は詠子の残したお金でどうにかなるそうだ。だけど足りないようなら俺が出すからお金の心配しなくていいよ。」
「足りないようなら奨学金借りるとか、この家を売るとか考えるよ。」
「そんな心配、陽夏ちゃんはしなくてもいいんだ。陽夏ちゃんのことは俺の娘だと思ってる。俺を頼ってくれればいい。」
「だって、そんな・・・」
「俺のわがままかもしれない。陽夏ちゃんには迷惑なことかもしれないが、俺の好きなようにさせてくれないかな。詠子のために俺がしたいんだ。」




