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手紙  作者: Pー龍
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突然

 入学試験はまずまずの出来だったのではないかと思います。筆記試験が無事終わり、お弁当を美味しく頂いたあとの午後の面接では中学に行けていない理由を尋ねられましたが、練習した通り答えることが出来たのではないかと思います。他の質問にもしっかり答えられたと思います。

『私の尊敬する人はママとおじさんです。』

『志望の動機は、この学校なら毎日通って卒業することが私にもできると思ったからです。』

『大学には進学したいと考えています。』

『将来はカメラマンになりたいと考えています。』


 試験の報告をするべくママの入院する病院へと急ぎました。途中、おじさんの映画の宣伝ポスターが街に貼ってあるのを見ました。監督の名前を見てみると、“冴木竪”なるほどおじさんの名前だ。自慢する相手もいないので病院へと急ぎます。


 病室のドアを開けママのベッドに近づき、いつもとは様子が違うことを知りました。おばあちゃんは可哀そうなくらいオロオロとうろたえていたし、おじさんはママの手を握りママの名前を繰り返し呼び続けています。いつもなら病室にいないお医者様がママの傍にいます。ナースさんも今日は大勢いました。見たことのない機械がママの身体につながっています。ママは眠ったまま。


 これはいったいどういうことなの?


 おばあちゃんが私に気付きました。

「陽夏ちゃん、今朝10時ごろ詠子の容態が急に悪くなって・・・」

「・・・ママ・・・」

「白田さん、陽夏ちゃんが入試が終わって病院に来てくれたよ。ほら、試験の結果を聞いてあげてよ。陽夏ちゃん今日まで一生懸命に勉強頑張ったんだよ。ほら褒めてあげてくれよ。陽夏ちゃんに声を掛けてあげて。」

「おじさん、それじゃ駄目だよ。

 ――――詠子って呼んであげてよ。ママの名前は冴木詠子だよ。おじさんの奥さんなんだよ。」


 私は思わず叫んでいました。私の大声に病室のみんながびっくりして私に注目します。病室で大声を出しちゃいけないなんてことはすっかりどこかに飛んでいってました。


「あぁ、そうだったね。陽夏ちゃん、思い出させてくれてありがとう。ごめんな詠子、悪かったな。君の名前は冴木詠子だ。そうだよ、冴木さんだ。冴木詠子だ。今日は陽夏ちゃんの入試だったよ。陽夏ちゃん、ママに今日の試験のこと、報告してあげてくれないか。」

「ママ、聞こえる? 起きてよ。ねぇ、起きないなら私勝手にしゃべるわよ、ちゃんと聞いてよ。今日は高校の試験だったの。試験は採点ミスが無い限り絶対に合格してるわ。安心してね、大丈夫だから。だから、ママも入学式に一緒に来てよ。おじさんと一緒に2人で私の入学式に来てよ。ママ、今日街を歩いていてね、おじさんの映画のポスターを見たの。ママ見たがってたよね。もうすぐ上映なの。ママ、私と一緒に見に行く約束したじゃない。約束したでしょ。ママ、起きてよ。」

「詠子、冴木詠子・・・」


 この日の夕方、ママは星になりました。


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