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手紙  作者: Pー龍
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受験日

 とうとう私の高校受験の日がやって来ました。受験対策はこれまでに充分やってきたつもりです。塾が主催する模擬試験も受けてみました。模擬試験での志望校合格判定は余裕です。入学試験を受けるためにサイズの合わなくなった中学校の制服を作り直したりもしました。私は私服で受けてもいいんじゃないかって言ったんだけど、おじさんが学校の先生と相談して作り直すことに決めたようです。面接の練習もおじさんやおじさんの会社の人に相手をしてもらってバッチリです。


 その日、私はおじさんと一緒におばあちゃんのお弁当を持って高校の試験場へと出掛けました。もともと私は1人で行くつもりだったんだけど、初めての場所だと道に迷うこともあるかもしれないからっておじさんは強引に付いて来ちゃいました。慣れないカメラで私のレアな制服姿を写真に撮ってくれます。きっとママからの指令が出ているに違いありません。


 中学校の先生の姿も試験場の入り口に見かけました。私のためにここまで来てくれたのでしょうか。


「先生、おはようございます。」

「おはよう陽夏ちゃん。気分はどう? いま落ち着いてる?」

「はい、大丈夫です。」

「そう、いよいよこれで最後だからね、しっかりと実力を出し切ってくるのよ。」

「わかりました。」

「これ、陽夏ちゃんは要らないって言うかもしれないけど、先生の家の近くの神社のお守りなの。学業にご利益があるはずだから、良かったら使ってくれないかな。」

「すみません、ありがとうございます。お守り、使わせてもらいますね。」

「陽夏ちゃん、受験票は持ってる? 筆記用具は? 他に忘れ物はない?」


 先生の方が私よりずっと興奮しているようでした。私は至って平常心です。今日の試験はこれから続く長い私の人生のほんの一瞬の出来事なのです。なるようにしかならないだろうし、やるべきことはもうしっかりとやりました。例えやり損ねたことがあったとしても今更もう間に合いません。さっさと終わらせて次へと進まないといけないのです。誰かがそんなことを言っていたのでマネしてみました。


「それじゃもうそろそろ時間だから、私、試験場の方に行くね。ここまでありがとう。」

「頑張ってこいよ。おじさん、これからママのお見舞いに行って、陽夏ちゃんのことは病院で待ってるからね。」

「陽夏ちゃん、しっかりね。」


 私は1人、試験場へと足を進めました。


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