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手紙  作者: Pー龍
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苗字

「陽夏ちゃん、おはようございます。」

「・・・おじさん、おはよう。」

 

 ママとおじさんの大きなイベントがあった翌日、いつものように朝がやってきた。いつもより少しだけおじさんのテンションが上がってるようです。それに引き替え私の朝は弱い。ネムネムだぁ、ちきしょうめ。昨日は見せつけてくれやがって。


「今日も一緒に走ろうか。」

「はぁ。」

「陽夏ちゃんの準備が出来たら声掛けてね。」

「・・・・・・」


 早朝ランニングから帰ってきて、シャワーを浴び、朝ご飯を食べて、私の勉強を見て、おじさんは仕事に出掛けて行きます。今日はおじさんの会社は休日らしいのですが、仕事が残っているんだって。そりゃそうだ。その後、私はおばあちゃんのお昼ごはんが出来るまでまったりとゴロゴロできる至福の時間。お昼ごはんを食べてからはお勉強&少しだけお昼寝。起きたらおばあちゃんと病院へ出掛けました。

 ママの病室ではおじさんがママと楽しそうにお話しています。私とおばあちゃんが来てもママは気付かないくらいにおじさんとの話に夢中です。何の話かと聞き耳を立ててみたんだけど、2人は昔話をしていたようで私には何のことだかさっぱりわからないよ。


「あら、陽夏来てくれたのね。」

「さっきから居たんだけど、おじさんに夢中で私のことなんて気付かなかったでしょ。」

「ゴメンね、陽夏も来たなら来たで声くらい掛けてくれればよかったのに。」

 

 えぇ、声を掛けようとしましたとも。おばあちゃんに空気を読めと止められたんです。


「陽夏、あなた白田陽夏と冴木陽夏とどっちがいい?」

「ふーん、2人は結局籍を入れることにしたんだねー。」

「そうなの。私はこのままでいいって言ったんだけど、タツくんがどうしてもって言うからね。押し切られちゃった。」

「陽夏ちゃんはどう思う?」

「そっか。私はママがおじさんとくっ付いてママの苗字が変わることにまったく文句なんてこれっぽっちも無いけど、私の苗字は白田のままがいいよ。冴木陽夏って響きはカッコ良くてなんか憧れちゃう部分も少しだけあるけど、それは、んーなんていうのかしら? 私じゃない気がするの。」

「・・・そっか。わかったよ。」

「タツくん、残念だったわね。」

 

 私の返事におばあちゃんとママは微妙な顔をしている。おじさんはちょっと落ち込んでいた。あれ? 私ここで空気読まないといけなかったの?


 微妙な空気が流れたまま、この日は病院を後にしました。

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