告白
「どうなの、先生? 陽夏の出来は?」
「陽夏ちゃん、毎日勉強頑張ってるよ。」
「頑張ってるのはわかるんだけど、陽夏が高校に受かるかどうかはそれとは別の話よ。」
「大丈夫だって。俺が言っても白田さんは気休めぐらいにしか感じないんだろうけど、普通に対策しとけば落ちやしないから。」
「でも・・・・・・」
「そんなに難しい学校を受けようって言うんじゃないんだから、心配し過ぎだよ。そんなに毎日心配してるようだと体調にも響くよ。まだ受験まであと半年あるんだから、いまからそんな感じだと白田さんの方がダウンしちゃう。陽夏ちゃんのことは俺に任せてくれていればいいからね。」
白田詠子の体調は最近あまり思わしくないように見える。それなのに彼女は娘のことが心配で毎日毎日同じことを繰り返している。最近は俺の前でも頭を抱え身体を捩じって、顔をしかめ、あからさまに苦痛を感じそれを我慢しているように見える時があった。そんな時俺に出来ることは彼女を楽な姿勢に誘導し、少しでも安心させてあげられるような言葉を投げかけるだけだ。そもそも陽夏ちゃんは勉強が苦手なわけでも無く、吸収が早くて教えるのが楽なこと。受験する高校のレベルはそれほど高いものでもないので心配するだけ損なんじゃないのか。そんなことを繰り返し話す。
以前は俺の仕事の進捗についても気にかけてくれていたようなんだが、いまやそんなことは彼女の眼中に無い。彼女には娘のことが心配でたまらないのだろう。俺には彼女の身体の痛みを代わって負担してあげられることはできないが、陽夏ちゃんの高校進学への心配なら少しくらい代わりに負担できるんじゃないかと思う。白田さんは自分で抱え込んでいたいのかもしれないけれど、少しでも彼女を楽にしてあげたいと思う俺の気持ちもわかって欲しい。
「陽夏は高校合格できるかしら?」
「できるさ。だから白田さんは入学式の陽夏ちゃんの姿を写真に収めてあげないといけないね。」
「タツくん、私の代わりに写真撮ってきてよ。」
「バカなこと言ってんじゃないよ。俺が白田さんの代わりになる写真なんて撮れるわけないじゃないか。代わりなんて務まるわけないだろ。」
「最近のデジカメってすごいのよ。」
「だとしても、陽夏ちゃんが写真を撮って欲しいのは、俺にじゃないだろ。」
「――――そうね。」
「だから、身体をそれまでに元に戻さないと。」
「あのねタツくん、私の身体って、それまで持ちそうにないのよ。」




