再会
「白田さんが入院してるって聞いてさ、さっきお母さんにお会いしてここを教えてもらったんだ。お母さん、こっちに電話入れといてくれるって話だったんだけど。」
「電話なんてなかったわよ。きっとお母さん、タツくんの顔をいきなり見てびっくりする私の顔を想像して面白がってるんだと思うわ。あの人ってそんな人だから。」
「これ、さっき買ってきた。白田さん、確かこれ好きだったよね。」
「懐かしいわね。まだ売ってるんだ。さぁせっかくだから一緒に食べましょう。飲み物入れようか?」
「――――体調のほうはどうなんだ?」
「あまり良くは無いんだけど、どうにか薬で騙し騙しってところかしらね。気を抜くとたまに酷い目に合うのよ。でもね、今はあなたの顔を見たから元気なの。」
「そうか。もう入院生活長いんだってな。見舞いがこんなに遅くなってしまって悪かったよ。」
「タツくん、私の入院のこと、どうせ昨日あたりに知ったんでしょ。それから慌ててあちこち聞いて調べまくってここに来てくれたっていうのが簡単に想像できちゃうわ。周りの人に迷惑掛けちゃってない? 仕事投げ出してない? もう、相変わらずなんだから。」
「すごいな。俺のこと完全に読まれてるな。」
「タツ君に教えたら仕事が手につかなくなっちゃうだろうから、教えるわけにはいかないのよ。残念ながら知られちゃったんだけど。」
「昨日さ、監督仲間から陽夏ちゃんが書いた映画の感想を見せてもらったんだよね。」
「あぁ、そうゆうことでしたか。そんなところに罠が仕掛けてあったんだ。この前、陽夏があなたの映画のチケット貰ってきてたのよね。その親切なおじさんてのがあなたの友人だったってことなのかー。さすがにこれは読めないわよ。あのチケット見た時、こんな偶然もあるのかしらって驚いちゃったのよね。懐かしくて陽夏に一緒に行こうって誘われた時、病室抜け出して一緒に見に行っちゃおうかしらって思ったのよ。でも無理して映画館に行ったところであなたに会えるわけでも無いし。そのうちDVDが出たら見せてもらおうかと思ってるわ。」
「販促用のDVD持ってくるよ。」
「陽夏がね、あの映画のエンディングが気に入らないみたいなのよ。」
「それ、あの手紙の感想にも書いてあったね。本当に大好きな人とは結ばれないっていうのがこの世の常だと俺は思ってるからさ。その辺りを表現したつもりなんだけど、若い子にはやっぱり評判悪いみたいだ。」
「あなたって前もそんなこと言ってたわよね。」
「そうだったっけ。」




