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手紙  作者: Pー龍
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いんとろだくしょん

ずいぶん前、20代の頃に書いた小説を原稿が手元にないので、思い出しつつアレンジして書いています。書き上げた当初はあまりに恥ずかしくて、たった2人にしか見せなかったけど、見て欲しい人に見てもらえて満足していたお話です。タイトルは連城さんの小説タイトルパクリました。

「いってらっしゃい。車に気をつけるんだよ。」

 玄関前でおじさんに声を掛けられて、私は学校へ行く。


 ある春の朝、なにげない時間。ごくごく普通の月曜日。天気は晴れ。

 制服姿の私はガレージから自転車を引っ張り出し、それに乗って学校へ行くのだ。

 引っ張り出した自転車はいわゆるママチャリ。5年前、ホームセンターで買ってきたママの自転車。ママはこれに乗ってよく買い物に行ってたみたい。

 学校まで私の頼りない脚力だとペダルを踏むのもゆっくりなので、だいたい30分はかかってしまう。

 たまにパンクしてしまうこともあるんだけど、おじさんが持たせてくれた瞬間パンク修理材のおかげで、いつも助かってます。

 おじさんはバス通学にした方がいいよと勧めてくれるけど、頑固な私はこうやって自転車通学を続けている。でもね、雨の日だけはバス通学。カッパは嫌いなの。群れるのも蒸れるのも大嫌い。

 自転車通学は私のわがままなんだ。


 自転車で学校に通う時間、私はいろんなことを考えている。

 過去の自分、現在の自分、未来の自分。

 大好きな自分、大嫌いな自分、あやふやな自分。

 大好きなこと、大嫌いなこと、どうでもいいこと。

 大好きなタレントさん、嫌なニュース、クラスメイトのこと。

 ときどき見かける猫のこと、私に吠えてくる隣りの飼い犬のこと、学校の先生。

 将来の夢、これまでにやらかした反省すべきこと、昨日見たアニメのこと。

 自転車通学だと学校に着いた頃にはすっかりへとへとになっている。

 おかげで、ガンバって生きてるんだってそんな気分になれる。

 そして授業中は居眠り。テストは赤点。その結果、いつもの補習授業。

 そんな学校生活。これからまだまだ続く。

 人生は長い。


 ときどき思う。学校へ行っていない頃はどう過ごしていただろう。

 いつも何かを探していた。でも見つからない。何も見つからない。

 渇望。とても癒しきれない渇き。絶望感。無力感。孤立感。

 このまま死んでしまえれば楽なんじゃないか、そう思うことは何度でもあった。

 いまでも時々衝動はつよく暴れだす。

 車に轢かれてしまえば、一瞬で終わるのじゃないか、そんな誘惑。

 ビルの屋上、電車の踏切、カッター、包丁の刃、ライター、ガス。

 そんな勇気も根性も無かったから、いま私はここに在る。


 本当に無くて良かった。

 だって、私にはおじさんがいたから。

 あの人を哀しませることが無くて本当に良かった。


 

 私が学校に行かなくなったのは、中学1年生の4月。

 学校に行き始めたのが高校1年生の4月。

 あれからもうそろそろ1年がきます。

 おじさんに出会ったのは中学3年生だっけ? あの頃のことはあやふやにしか覚えていないの。その後いろいろとあったから。



 すべてはママの入院から始まりました。

 おじさんにとってみれば、もっと前からなのかな?


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