100話記念SS2
ある日、私は賢者のじい様から没収した魔法の薬を持って騎士団にいました。アリサにでも浄化してもらおうと考えながら歩いていたら、カーティスに背中を押されました。
「よ、考えごと?」
「ぐは、痛い!ちょっとカーティス…ああ!?避けて!」
「え?」
考えごとをしていたせいでただでさえ気配を読みにくいカーティスに気がつかず、いきなり背中を強打された結果、魔法の薬がすっぽ抜け、ディルクにかかってしまった。カーティスはやべ、と呟き逃亡した。後で絶対しめる。
「あ、あわわわわわ」
ディルクが発光した。光がおさまると、ディルクが消え…てない!
「いまのなに?え?なんでロジャリンドおおきくなってゆの?」
「あ…あ…」
私の思考は完全停止した。ディルクが…ディルク様が……
「嫌ああああ!ありえない!可愛い、いや、可愛いなんてありきたりな表現ではだめだわ愛らしい?いいえむしろ愛してる!」
「ちょっと!?ロジャリンドおちついてくだたい」
ディルクは小さな子供になっていた。3歳ぐらい?大興奮の私をどうにか落ち着かせようと近づこうとして、こけた。可愛いお尻と尻尾がまる見えです。頭を撫でつつ抱きしめました。お肌すっべすべ!
「かわいいいいいうああああああああああああああああ!!」
「ロジャリンドおちちゅいて!おれ、はだかだから!そんなとこなでないで!」
風邪をひいても困るし、とりあえずディルクの服でくるみ、他の服もしまった。今日のディルクの下着はグレーでした。
「風邪ひいても困るし、獣化したら?」
ディルクは私の提案に了承し、獣化した。なんてこった!天国はここにあった!!
私は手近な使われていない部屋にディルクを連れ込んだ。
「あ、あの…ロジャリンドのめがこわいんでしゅが…」
「ふおお…もふもふ天使…いや神か!」
「おちちゅいて!ふみゃあ!?」
「もふもふ…」
「みゃあ、みゃあん…ふみゅ…」
もふると子猫…じゃなかった、子豹なディルクは甘えるように擦り寄る。天国じゃああああああ!しかも身体が幼くなったから発情しないらしく、尻尾も触りたい放題です!
「はぁ…」
「みゅう…」
ディルクはくったりして獣化したまま眠ってしまった。ルドルフさんに事情を話して早退し、我が家に帰宅しました。
「ただいまー」
私を出迎えたマーサが、いきなり崩れ落ちた。
「マーサ!?」
「ついに、お子がお生まれに!?」
「んなわけあるか!ディルクが賢者の怪しげな薬でこうなったの!兄様のお下がり出して!」
「かしこまりました」
とりあえず私の部屋に連れていき、服を着せた。私は読書をしてディルクが目覚めるのを待った。
「ふみゅ…ロジャリンド?」
「おはよう、ディルク」
ほっぺにキスをした。はぅ…もふもふ。
「ここは…」
「私の部屋ですよ」
「このふくは?」
「兄のですが、よく似合いますね」
「…ありがとう」
そして私はディルクのお世話をしまくりました。
「ロジャリンド、じぶんでたべられるから」
「いいえ、お世話させてください。はいあーん!」
「はむはむ。おいちい」
「…!………!」
「ロザリンド、机が割れるから落ち着いて」
無言で悶える私に兄は冷ややかである。
「お風呂も一緒に入ろうね!洗ってあげる!」
「えふ!?」
「却下」
「兄様…」
「却下」
「しゃしゅがにだめ」
ディルクと兄から却下され、お風呂は諦めました。
さて、今日は一緒に寝ることにしました。おや?ディルクのお耳と尻尾がぺたんこです。
「ディルク?どうしたの?」
「おれ…このままもどらなかったらどうちよう。やっとロジャリンドにもおいちゅけるかとおもったにょに」
「ディルク…」
ディルクの瞳から涙が零れた。あうう…罪悪感が…
「あのさ、実はいつでも戻れたりして」
「…は?」
「ディルクが昼寝してる間に賢者のじい様に聞いて、解呪方法知ってました!ディルクが可愛くて可愛くて堪らなかったので黙ってました!」
私はベッドの上で土下座した。
「…ほうほうは?」
「愛する人とのキスだそうです」
古来、キスには魔法がある。よく物語なんかで呪いを解くのは口づけだ。それにはきちんとこの世界では根拠があり、常識である。
小さなディルクからキスされた。ディルクの身体が光り、元に戻った。
ロザリンド=ローゼンベルクはうっかりしています。認めます。解呪されたディルクさんは全裸でした。素晴らしい肉体美…じゃなくてヤバい!おまけに私を押し倒した姿勢でお怒りモードです。
「ロザリンド?愛してるけど、しちゃいけない事って、あるよね?」
「は、はい」
「お仕置きします」
「え?あ、や…えええええ!?」
大変濃厚な夜でした。ディルクは怒らせてはいけません。…身体で実感しました。
翌日、ディルクに脅さ…言われて賢者の怪しげな薬はのきなみ処分しました。後日小さなディルクの画像が見つかり叱られたのはまた別のお話です。