彼方さんちのバレンタイン
シュシュさんと彼方さんの部下、アンドレ視点になります。
こんにちは、アンドレです。
うちの主のクソガ…………可愛いお子さん達に日々いじめられているアンドレです。
今日はばれんたいんでーとやらだそうです。カナタ様の故郷では、ちょこれいと業界の陰謀で愛する人や感謝する人にちょこれいとやプレゼントを贈る風習があるらしいです。こっちでもそれを広めて大儲けや!とばれんたいんフェアをやったカナタ様。
ちょこれいとはやや高価だが、限定の可愛らしいものや凝ったちょこれいとに素敵なラッピングをしたため物凄く売れた。領内全体がばれんたいんでーで活性化され、他領どころか周辺国にまでばれんたいんでーが広がり、ちょこれいとは爆発的大ヒット。カナタ様、大忙し。無駄に器用だからちょこれいと生産を手伝いだした。
そして今、俺はぼんやりと厨房の天井を眺めている。なぜなら、ここはカオスだからだ。
「とーさまおつかれだから、ボクがしとめたなんとかタートルのいきちをいれよーよ」
「いいね」
「よくないよ。なまぐさくなるよ」
どこがだ。一気に黒魔術…………いや、入れすぎだろうが!ちょこじゃなくて血ょこになっとるわ!!
「あ、それならわたしがしとめたなんとかボアのいきぎもいれよう!おかーさまがえいようまんてんだっていってた!」
「いいね!」
「すてき!」
「やめようよ!さらになまぐさいよ!」
馬鹿野郎!混ぜるな危険!!原型がなくなって血ょこ臓物入りというホラーなシロモノになっている。もはや、血ょこではなくちょこ入りって感じだ。
「なんとかマグロの目玉はあたまがよくなるらしいよ」
「いいね!」
「いれよう!」
「やめてよ、なまぐさいしきもちわるいよ!」
どの辺りがいいのか、誰か教えてくれ。もうやだ。この部屋血なまぐさい。
「アンドレー、あじみして」
「やめて!アンドレがかわいそう!!」
悪魔っ子達は笑顔でとんでもない事を言ってきた。味見ではなく毒味の間違いだろうが!!必死で修正しようとしているカトリーナ様が頼りです!頑張って!!
「お、皆ここにいたんか?」
普段なら仕事をサボったのかと言うところだが、今の私にはカナタ様が救世主に見えた。
「そうなんです!子供達はカナタ様のためにちょこモドキを作っておりまして!」
「ちょこ?そっかぁ。ありがとなぁ…って、ちょこの原型どこいった。血の池地獄みたいやないか」
ですよね!もっと言ってやってください!!
「でも、からだにいいよ」
「えいようまんてん!」
「がんばったよ」
「わたしは、ふつうのがつくりたかった」
「カトリーナ、シュレク、カナリィ、シュクル」
『はい!』
「この世には、手作りで栄養満点でもまずいもんはある。味見したか?」
「これからアンドレがするよ」
「なんでやねん!自分達でしなさい!」
『え~』
え~とか言っている辺り、ヤバいものを作った自覚はあるらしい。そんなもんを人に与えようとしないでほしい。
「料理は適当じゃあかん。美味しいもんで喜ばせたいなら、ちゃんと教えてもらわなあかんで」
『はーい』
というわけで先生役になったのが我が主、シュシュ様。カナタ様はばれんたいんでーのために働いているので不在。ちなみにまだ乳飲み子である末っ子の三女カティ様は当然不参加、侍女が面倒をみている。ただ幼馴染としてはシュシュ様の料理レベルは子供らとたいして差がないと知っている。むしろこの人にまともな料理をさせたロザリンド様がすごい。ちなみにサバイバルな料理はできるがな。
「というわけでアンドレ!どうしたらいい!?」
そうなると思ってたから、あらかじめ調べておきましたよ。ソッとシュシュ様にちょこを溶かして固めて飾るだけ!だけど可愛く作れる材料キットを差し出した。用意するのはお湯と調理器具だけ。カナタ様考案のこのキットは、シュシュ様達のために作ったんじゃないかと疑ってしまうぐらいだ。
「なにこれー」
「はと型?」
「はーとっていうんだよ」
「はーとはしんぞうだよ」
「つまり、いきぎも?」
「シュレクは賢いな」
「…ちがうとおもう」
カナタ様そっくりのカトリーナ様。唯一さっきから悪魔っ子達の暴挙を止めていた天使である。カナタ様と同じく魔力はあるが身体能力が人族程度のため、最近ではストッパーとして活躍している。
「カトリーナ様が正しいです。カトリーナ様は本当に本当に本当にお利口さんですね…」
「えへ」
へにゃりと笑うカトリーナ様。お願いだから悪魔っ子達に染まらないでくださいね。
「アンドレひいき!」
「アンドレ、ねーさまがよごれる」
「アンドレ、ろりこん」
「またんかい、最後!!違いますから!」
「……そうだな。信じているぞ、アンドレ」
「違うっつってんだろうが!!」
「お、やるか?」
不甲斐ない大人達が戦っている間に子供らはどうにかちょこを完成させていた。
「おお、上手だな!よし、母様もカナタに作るぞ!」
そうして出来上がったちょこはお世辞にも綺麗ではなかった。綺麗ではなかったどころか、毛が多数入っていた。しかし笑顔で受け取り食べたカナタ様はスゲェと思った。次からは毛を入れないようになと注意はしていたが、俺はあんなん食えない。
「アンドレ、あげる」
色々考えていたら、カトリーナ様からちょこをもら………
「アンドレェェ!そのちょこが欲しくば、俺を倒してから受け取れぇぇ!!」
「ちょ!意味わかんねぇ!室内でアシッド光線はヤバイだろ!!た、助けてぇぇ!!」
カトリーナ様が泣いて止めるまで追いかけっこは続いた。
ばれんたいんでーなんか大っっ嫌いだああああ!!!




