ロザリンドの初夢
今日は元旦。こちらにも正月的な行事があるので、多分元旦なのです。初夢を見るための準備は万端です。
「ロザリンド、何してるの?」
「七福神の絵と回文を枕に仕込んでます。いい夢が見られるらしいですよ」
「シチフクジン?」
「日本の神様ですね。それぞれもたらす福が違うんですよ。日本にはやおよろずの神がいると言われています。やおよろずは八百万と書くんですよ。それだけたくさんの神様がいるんです」
「へー。回文ってなに?」
ディルクは興味津々なご様子。
「簡単なやつだと『しんぶんし』みたいな上からも下からも同じに読める文章だよ。七福神の回文は、なかきよの、とおのねぶりのみなめざめ、なみのりぶねのおとのよきかな…だよ」
「へー、不思議なおまじないだね」
「そうだねぇ。それから、日本では一富士二鷹三茄子って言葉があるんだ。それを初夢で見ると縁起がいいんだって」
「へー、不思議だねぇ。最後、野菜でしょ」
「…………確かに」
富士山はまだしも、鷹と茄子……謎だ。そもそも鰯の頭を飾ったりとか、わりと日本って謎風習が多いよね。
「まぁいいや!ディルクの枕にもおまじないしたから、きっといい夢が見れるよ」
多分、そんな会話したのがいけなかった。
私の前には、日本のアニメが誇るセクシーダイナマイツにして、ちょいワル美女。私が女性として尊敬してやまぬスーパーウーマン峰不2子様……の格好をしたクラリンとミスティアがいた。
確かにある意味合ってる気がしないでもないが、新年早々にうおおおい!!よく考えたらフジ違いだよおおおおおい!!
「……クラリン、似合うね」
「うふん、ル□ァァン」
「声すげぇ似てる!!」
「クラリン、研究したわ」
「あ、ありがとう?」
確かにクラリンはクラリンだからともかく、ミスティアの完成度がすごい。
「日本のアニメって面白いわよね!」
ミスティアを見て、あぁ…これはあれだ。普通にハマったのだなと理解して…オススメアニメをいくつか紹介しておいた。
逆にミスティアもオススメアニメを教えてくれた。今度DVD借りに行こう。
そして鷹は……鳥と言えばポッポちゃん。今日ももはやお約束な顔は鷹で体は全身タイツスタイル。とりあえずシャイニングウィザードをかました私は悪くない。
「中途半端。変態。人か鳥かどっちかにしろ。中途半端よくない」
「……かしこまりました。何故人族の女性はこの姿の美しさがわからないのでしょうか」
しぶしぶ鷹の姿になるポッポちゃん。いつの間にか腕に鷹がとまるためのカバーがされている。腕をあげてとまれるようにしてあげた。
「逆に、ポッポちゃんのあの姿を美しいと思うひとがいたわけ?」
「そうですねぇ。先々代の勇者様なんかは笑いながら地面に転げ回り、お前はサイコーだと申しておりました」
「それは美しいと思ってない」
先々代の笑いのツボがわからん。私的にポッポちゃんはシュールすぎて笑えない。
「えっと、鷹ってなんて鳴くのかなぁ?こけこっこい?」
それは別小説の鳥ですね。鷹の着ぐるみを着た………誰だ?声もくぐもっていてわからん。
「ぶはあ!着ぐるみって暑いねぇ!」
中身はシヴァだった。世界の危機がなくなった神様達は暇なんだろうか。
「違うからね!もうめっっちゃ忙しいから!この着ぐるみもミスティアの衣装も、僕が作ったからね!!」
コスプレ衣装を手作りする暇はあるらしい。やっぱり暇なんじゃないかな。
「ねえ、ロザリンド。この着ぐるみ、前が見えないし息苦しいんだけど、どうしたらいいかなぁ」
シヴァの着ぐるみは首部分が外せるタイプ。しかし、見るための穴を開けるべき部分は首にあたり、穴が開けにくい。
「いっそ顔を出すやつにしちゃえば?」
「ロザリンドって天才だね!よし、今から穴をあけよう…って、手が使えないから脱げない!」
シヴァの両手は羽根なので、ジッパーが下ろせないらしい。かなりの欠陥がある着ぐるみだねぇ。器用さとアイデアはまた別問題…か。
「ポッポ!?何してるの!?」
「いやなに…ちょっと穴をあけて差し上げようかと」
ポッポちゃんが鉈を振り回す。穴をあけるのに、鉈はいらないと思う。
「クラリンもお手伝いするわ」
「クラリン、つまようじはちょっと…」
穴はあくかもしれないが、途中で折れると思う。
「ロザリン、今のクラリンは不2子ちゃんよ」
「……そうでした。すいません。ところで、胸はどうしたんですか?」
「寄せて上げたわ」
「すげえええええ!!」
痩せているクラリンから、どれだけ肉を集めたらこんなことに!??
「クラリン、最近おばあちゃんと間違われるせいか、おっぱいが育ったわ」
「起きたら大至急どうにかしますからね!!」
クラリンはどうでもよさそうだが、私が必死だ。シヴァに話しかけようとしたら、いなくなっていた。どうやら私がクラリンに気をとられている間に、シヴァはどこかに消えたらしい。神様だし、死なないだろうから放置することにした。
「おたんこな~す」
足元に、眼鏡をかけた茄子がいた。順番からして、眼鏡だからインジェンス……いやいやいや!何故40センチ程度の丸っとした茄子に手足が生えて眼鏡をかけた茄子が!?
※ロザリンドは混乱している。
「…インジェンス…あんた、本体がやっぱり眼鏡」
「なわけがあるか」
「ですよね~、ぶふっ!」
茄子の着ぐるみを着たインジェンスとスレングスが背後に立っていた。コントでよくある顔と手足に穴が開いてるやつである。思わず指さして爆笑してしまった。
「…………ウケた」
嬉しそうなスレングス。怖がられるよりはいいかもしんないけど、神殿関係者が見たら泣くからやめてあげようね。爆笑した私が言っても説得力低いけど。
「で、この茄子は?」
「トリコモナ~ス」
私に抱っこされてアワアワしている。可愛い…気がしないでもない。
「シヴァが作った。新しい使徒。揚げるとおいしい」
「食べるんかあああああい!!」
渾身のツッコミで目が覚めた。なんか疲れがとれてない。
「ロザリンド!?どうしたの!?」
「実は……」
さっきまで見ていた夢の話をしました。
「ふふっ。この世界の神様全員が出てきた上に、一富士二鷹三茄子が揃ってて、すごくおめでたい夢だね」
ディルクの穏やかな笑顔と言葉のおかげで、全てがどうでもよくなった。
「……私はディルクの笑顔の方が、縁起がいい夢なんかより好きだなぁ」
「えっ!?あ、ありがとう」
「そういうわけで、にゃんにゃんしようか!」
「はっ!?ちょ!にゃあああああ!??」
全力でモフモフして愛でまくったらストレスが消えました。ディルク、清々しい朝をありがとう!
追伸、一富士二鷹三茄子な神様達は彼方さんとこにも乱入したそうです。




