クリスマス特別SS2
【賢者の家の場合】
※サリーダ視点(賢者と奥方様の息子・現在6歳)
くりすますかぁ…異世界には面白い風習があるんだなぁ…うとうとしていたら、人の気配がした。
寝たふりをして、賊の人数と位置を確認する。二人…一人は鍛えていて、もう一人は魔法使いかな。歩き方や動きが素人っぽいし、なんだかヨタヨタしている。
小さな妹を守らなきゃ。こんなときに頼りになる母様がいないなんて…いや、僕は男だからちゃんと戦って妹を守るんだ!
そう決意して枕の下に隠した護身用の短剣を探す。あくまでも寝返りをうったように見せかけて枕の下にてを入れた。鞘から抜く暇はない。チャンスは一瞬だ。
魔法使いは本当に素人なのか、その動きにすらビクッとしていた。意を決したらしく、僕のそばによたよた歩いてくる。
しかし、こんな危なっかしい動きの賊…魔法使いは初犯なのかな?あれか、先ず犯罪を犯させ、後戻りできないようにさせてるのかもしれない。
気の毒だけど、僕も母様の息子だから負けられないよ!
「!??」
相手が僕の射程に入った瞬間、布団を蹴りあげ二人目眩ましをした。そしてその一瞬の隙をついて魔法使いを布団で覆って捕まえ、首筋らしき部分に短剣を突きつけ………あれ?
目の前にはポカンとした母様。その格好…白と赤の目立つ衣装……
「母……さんた?」
つまり、僕が短剣を突きつけてるのは………
「ごめんなさい!ケガしてない!?」
「げほっ……いやあ、サリーダも強くなったなぁ…」
布団を外してあげると、やっぱりさんた姿の父様…父さんたが出てきた。
「はっはっは!サリーダ、今の奇襲はよかったぞ。瞬時に実力差を見抜き、実戦慣れしてない者を狙う。ギリギリまで殺気を隠していたな。母様でもわからなかったぞ!」
「………君は息子にナニを教えてるのさ。まだ6歳だよ?」
「いざという時に備えて、戦闘訓練をちょっとな」
「ちょっとってレベルじゃなかったよね!?僕があっさり捕まったよ!?」
あ、まずい。このままだと今後の訓練をさせてもらえなくなるかも。しかも、父様がもやしだからって、母様オブラート!女性には気を使うのに、なんで男性にはアバウトなの!?父様涙目だよ!
「……父様、僕はいざというときに大切な人を守るため、騎士か魔法騎士…恐らく魔法騎士を目指します。訓練は僕も望んだことです。お願い…母様を叱らないで」
「だからプレゼントがコレなわけね」
「ああ」
「??」
両親が微笑みあっているが、よくわからず首をかしげた。そんな僕に父様が大きな包みをくれた。よたよたしてたのはこれのせいか。
「開けてごらん」
「わぁ……」
「めりーくりすます、サリーダ。刃は潰してあるが、魔剣だよ。強度も上げたから、よっぽどがない限り折れない。未来の魔法騎士に相応しいだろう?」
美しい細剣は、魔法を発動しなくても僕に馴染んだ。
「ありがとう!」
くりすますって素敵な日だね!ちなみに妹のプレゼントはドレスだった。お出かけが楽しみだ!
翌日、僕は母に連れられて魔法騎士の訓練所に行った。
「いやああああ!」
「せい!」
「てりゃああああ!!」
ここなら、魔剣を力一杯使っても防御結界があるから問題ないのだ。
プレゼントされた魔剣は僕専用にカスタマイズされており、軽くて扱いやすく僕の意思に応えてくれる。
「流石は団長のご子息ですね。子供とは思えない太刀筋だ」
「ふふふ…そうだろう、そうだろう!ふむ、君なら問題なかろう。息子と模擬戦してもらおうか。他に参加者はいるか?勝者には特別休暇をやろう!」
母様に変なスイッチが入った。無茶言わないで。僕は子供なんだよ?いくら武器がいいからって、使いこなせなきゃ意味がない。
なら、答えは簡単だ。使いこなせばいい。これは僕の一部だ。
「始め!」
号令と同時に相手を昏倒させた。相手をする人数が多いんだから、体力消耗は最小限にしなくてはならない。
「次!」
「次!」
「次次つぎぃぃぃ」
気がついたら、皆倒れていた。
「はあ、はあ、はあ………」
「よし、最後は母が相手だ!」
「え、ええええ!?もう、少しは休ませてよ、かあさまあああああ!!」
怒りに剣が呼応し、暴風が吹き荒れ……ナニかが割れる音がした。
「あ」
「え?」
「ハニィィィィ!!また結界を破壊………ん?」
勢いよく駆けてきた父様は、木剣を持つ母様と魔剣を持つ僕を交互に眺めて倒れた。
「………………あんの、破天荒弟子ィィィ!!!」
後に、僕のクリスマスプレゼントは父様とロザリンドちゃんの合作だったことが判明。ロザリンドちゃんは伝説の武器職人としても大変有名で、この魔剣は長い付き合いになるんだけど…色んな人に羨ましがられました。
父様もはりきり過ぎたらしく、この魔剣はロザリンドちゃんも最高傑作のひとつだって話してました。
僕はこの剣に相応しい魔剣士になります。僕のお家のさんたさん達、素敵な贈り物を本当にありがとう!!




