クリスマス特別SS
皆でお茶をしていた冬のある日のこと。日本のクリスマスの話になりました。本当はキリスト教のイベントでサンタはまた別の話なのですが、日本のクリスマスが大好きです。クリスマスツリーにブッシュドノエル。お祭り大好き日本人なのです。
「クリスマスにはサンタさんがプレゼントをくれるんですよ」
「そうなの?」
「そうなんだぁ」
こっちにクリスマスはないけど、そんな話を皆でしました。
今日は珍しくジェラルディンさんやジェンド、賢者と奥方様もいます。まったりとお茶をしました。
「………ふむ。くりすます、か」
父が頷きました。
【ローゼンベルク家の場合】
子供達が寝静まった頃、私はコッソリと可愛い弟妹の部屋に侵入しようとしました。
「あ」
「……………」
父とエンカウントしました。お互いサンタルックです。気まずいです。
お互いプレゼントを持参です。気まずいです。
互いに黙りこみました。気まずいです。超気まずいです。
「凍っちゃえ!」
「「!??」」
いきなり響いた声に反応し、咄嗟に回避した。気まずかったので正直助かったけど…うちの双子は寝てなかったようです。
「いらっしゃいませ、サンタさん…プレゼントを全て置いていってください」
「プレゼントは僕らのものだ!」
まさかのプレゼント強奪計画。サンタを捕獲すれば、他の子のプレゼントも奪えるというわけですね?お姉ちゃんは、そんな欲張りな子に育てた覚えがありませんよ!?
「ええと…そんなにプレゼントが欲しいのかい?」
現在の私は見た目も完璧にサンタなので、わざわざ作った変声魔具を起動し話しかける。
ん?そういえば父は私の完璧な変装を見抜いたのだろうか。それとも本物だと思ってるのだろうか…………謎だ。
「…別に、プレゼントはひとつでいい」
「でも兄様や姉様は大人だから、プレゼントがないかもしれない」
二人は息がピッタリだった。
「「だから、サンタさんを捕まえてお願いしようと思ったの」」
「プレゼント全てと引き換えなら、サンタさんも断れないと思ったの」
「…でも、サンタさんは世界中の子にプレゼントを配るから、素早いんだね」
「…問題ない。ルーとロザリンドの分もある。メリークリスマス」
父サンタがプレゼントを二人に渡す。まずい。兄のはあるが、私のはない。
「ええと…君達。私たちを襲った罰として、サンタになってもらうよ」
「「え?」」
「お兄さんとお姉さんに絵とお手紙を書いてあげなさい。君たちのプレゼントなら、きっとすごく喜ぶよ」
サンタの帽子を二つ取り出して、二人に被せた。更にプレゼントを渡す。
「頼んだよ、小さなサンタさん達。メリークリスマス」
「「うん!」」
二人は笑顔で頷いた。よかった。どうにか丸く収まったよ!流石は私の可愛い弟妹!お利口さんである。双子は眠たそうなので、父と寝かしつけました。
「さて、私は兄様にプレゼントを仕込んだら、孤児院に行ってきます」
「そうか。せっかくだから私も付き合おう」
父はやはり私を私だと見抜いていました。父すげぇ。魔力波長が同じだろうと言われましたが、普通の人はそこで見分けたりしません。父すげぇ。
父がくれたプレゼントは、可愛い仕掛け絵本でした。いつか子供ができたら一緒に読みたいな。
「あれ!??お義父様も?」
孤児院前で待機していたディルクと合流して皆にプレゼントを配りましたとさ。
翌日、私に可愛いサンタさん達から素敵な贈り物が届きました。
「姉様、プレゼント!」
「姉様、メリークリスマス!」
「まあ、何かしら?」
プレゼントは手紙と絵と……しおり?
「ルー兄様に教わって作ったの!」
「魔法で凍らせたの!」
白い鈴蘭の花をブリザーブトフラワーにして樹脂で固めたしおり。とても綺麗だ。そこにポッチが模様を刻んだらしい。繊細で美しいしおりだった。
「まあ、ありがとう。大事にするね。読書するのが楽しみだわ」
「「えへへ」」
お手紙は後で読んでね、と言われたので双子が帰宅してから読みました。
『姉様へ
僕たち私たちは姉様がとってもとっても大好きです。姉様は僕たち私たちに、いつもやさしいです。姉様は頭がよくて、きれいで、世界一の姉様です。
僕たち私たちの姉様が、姉様でよかったです。姉様がけっこんしてお家にいないのはさびしいです。またあそんでほしいです。
姉様、いつもありがとう。よいくりすますを。
ルシル&ルチル』
翌日、私が大量の菓子とおもちゃ持参で双子と遊び倒したのは言うまでもない。私の弟妹が可愛すぎる!!




