200話記念SS2
【ある元同級生の証言】
ディルク?ああ、黒豹の獣人の。あいつ暗くてよくいじめられてたよ。でも強かったから騎士になったんだよな。こないだ見たら超可愛い女の子と幸せそうに歩いてたよ。
でも、道で挨拶したらあのにこやかさはなくてさ、無愛想だったよ。
【ある騎士・Kの証言】
俺、ディルクと仲良くなったのロザリンドに会ってからだからなぁ…あ、ロザリンドが居ないとき?
ロザリンド中毒になってる。会いたいってしょんぼりしてるよ。なら行けって毎回言ってたなぁ。
【ある騎士・Aの証言】
ロザリンドが居ないときのディルク?そうねぇ…不機嫌ね。あんたが居るときはいつも楽しそうよ。居ないときは不機嫌というか、無表情なのよね。カーティスと居るときは多少ましだけど…あくまで多少ね
【ある騎士・Hの証言】
ロザリンドちゃんが居ないときのディルク?あ、こないださぁ、まだディルクが騎士やってる時にな、娼館に巡回に行ったんだわ。そしたら一番人気のねーちゃんがディルクに粉かけたわけ。腕とか絡めてさ。そたらさぁ、心底嫌そうな顔で、
「やめてください。…臭い」
臭いだぜ!香水臭かったかららしいけど、ビンタくらってた。さすがに暴言過ぎたから後でフォローはしてたな。その後も相手がどんだけ美人でも、おっぱいおっきくても似たり寄ったりの反応で、ディルクは娼館じゃあ不能だの男色だの言われてたぜ!
え?俺が面白おかしく脚色しただろって?まぁ…したけどおかげで誰も言い寄らなくなったから許して!
【ある父の証言】
うちの息子?昔はうちの奥さん死んでから自分は不幸ですーって辛気くさい顔しててさぁ。わが息子ながら、うざかったわ。
騎士になってからも暗くてさ。
でもある日、なんか嬉しそうにしてたからさぁ、なんかいいことあったかって聞いたわけ。絶体教えなかったけど、それから数日して可愛く包装された手づくりっぽいクッキー食べてたから、ああこりゃ女の子だなと思ったよね。そんで当たってたね。ロザリンドちゃん、予想より若かったけども。
それからあいつ楽しそうだからさ。え?ロザリンドちゃんが居ないときは暗いって話がある?いやいやいや、全然だよ!ロザリンドちゃんに会う前はもっと暗くてウッッザかったから!
うちを継ぐ気になったのもロザリンドちゃんのおかげだし、ありがとね。
俺は報告書とやらから顔をあげた。
「ロザリンドは何をしたいわけ?」
「残念ながら、フィズは証言を拒否しました。馬鹿らしいのひとことですよ!友達なのに酷くないですか!?」
「いやいや、仕事中に声かけたでしょ?フィズは休憩中なら多分相手したと……いや、質問の返事になってないよね!?」
「なんか、私が居ないときのディルクは態度が違うという話でしたので、調べてみました」
「…うん」
「百聞は一見にしかずと申します。なので後をつけてたら見つかったなう」
俺の婚約者はたまによくわかんないです。町に買い物に出たらつけられてたから捕まえたらロザリンドで、なんか書類を隠したから見てみたら、俺についてでした。
「この報告書、名前を伏せる意味ないよね?最初が誰かはわかんないけど、後はカーティスとアデイルとヒューとうちの父親だよね?」
「ご名答。ちなみに最初の人はスクール時代の同級生さんだそうで、私も名前は忘れました」
「まぁ、いいけど。確かに俺も居ないとき、ロザリンドがどうしてるか気になるけど…居ないときを見たいとは思わないかな」
「どうして?」
「隠れてロザリンドを見るより、側に居たいから。買い物に付き合ってくれませんか?可愛い俺の婚約者さん」
ロザリンドがふらついたので、慌てて抱きとめた。
「どうしたの!?」
「ディルクのせいです!ディルクが好きすぎてクラクラしました…うん、お買い物、行こう」
にっこりと微笑むロザリンドに、つられて笑っている。彼女は俺がいれば幸せになれると、いつか言ったけど…俺の方こそ彼女が居るだけでいつも幸せだと思うんだ。
「ロザリンド」
「なぁに?」
「俺のとなりにロザリンドがいて、一緒に居られるの…すごく幸せ」
「わ…私も………幸せだよ」
俺はこのとてつもなく可愛いロザリンドと、ずっとずっと居たいなぁと…今日も思うのでした。
きっと明日も明後日も…それこそ死ぬまで同じだと思います。




