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CRIMINALl ZOO  作者: くたくたうさぎ
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犯罪者 動物園

人は人を同じ価値でみているだろうか?

親、兄弟、友達であっても、時として憎みこの世から消したくなるときもある。人間とはとても残酷である。見たくないものは見ないように、聞かないようにする。当たり前だと、価値観を無理やり押し付けてくる。

そう‥人は人が不幸になることは何より好きな生き物なのだ。

全ての人に当てはまらないとゆう人もいるかも知れない。いや、恐らくそんな人間はこの世にいないだろう。 


人が事故に合い亡くなれば可哀想だと言う。そして待っていましたと言わんばかりに悪者を探して、罵り追い詰めていくのだ。勿論加害者の肩を持つわけではない。

ただ、美味しい。

この不幸に関わった人たちを好奇の目でみることが。

そんな人間たちの不満や、ストレスの捌け口にある建物が生まれるのにそれほど時間はかからなかった。 



 

その名は《クリミナル ズー》

 


凶悪犯罪を犯した受刑者が、動物のように檻にいれられてる様子を見に行く犯罪者動物園がオープンしたのだ。

入場料は、大人1500円 子供500円 被害者家族0円

入場してみるとパンフレットが渡された。


注意事項

《本日は、クリミナル ズーにおこし頂きありがとうございます。こちらは軽犯罪者から凶悪犯罪者までさまざまな受刑者が展示されております。こちらの施設にいる受刑者には人権はありません。罵り、つばを吐くなどの行為はお止めしません。しかし檻には手を入れたり近づいたりしないようご注意ください。注意事項は以上です。ぜひよい1日を》



受刑者は日中外の檻にだされ、好奇の目にさらされるようだ。

人からの冷たい視線ほど突き刺さるものもないだろう。好奇心だった。火事になれば出てくる野次馬のような気持ちだった。



私はまず、軽犯罪者の檻の前に立ち止まった。

そこには、ひょろっと背の高い色白の男が座っていた。爪が伸びてあたまはボサボサだった。


説明文を読む《松林 智18才 罪窃盗、万引き、ちかん 刑期一年半》

ばっとしないなぁ。考えていた。なぜまぁゆうなれば比較的軽微な罪の犯罪者が檻に入れられているんだろうと。


ふと横を見ると檻の前に立ち止まる男性がいた。

受刑者を見る目は憎しみに満ちていた。その男性が受刑者松林に低い声で話しかけた。


「おい……わかるか」

低くドスの聞いた声が響いた。 

松林は男の顔を見るなり顔を引きつらせて顔面蒼白になった。

そんな松林を八つ裂きにしそうなくらい凶悪な目つきで睨みつけ絞り出すように話しだした。


「おまえが万引きをしたときたまたま近くにいた娘を共犯者に仕立てたよな。警察署に連れていかれて事情を聞かれ、学校に連絡された。行きたかった高校に行けなくなった。罪が晴れても周りからの目は変わらず苦しみそして‥自殺した。」



そうか、罪が法律に従ってとても軽い刑になった。でもこいつは人一人を殺したんだ。

言い知れない感情が自分を支配する。わたしはまた好奇の目を男性に向けた。

男性が紙袋から取り出した複数枚の写真。それを松林にみせた。

松林は目を背ける。 


「みろ!!」男性が大声を張り上げた。

「朝……行ってきますと笑顔で家を出たんだ……」


男性の声が微かに震えた。


「警察から電話がなって……娘の死を伝えられた。娘は家族と昔いった高良橋から身をなげたんだ……おまえが! おまえのせいだ!!!」


怒りに肩を震わせながら、男を睨んだ。



松林は咄嗟に土下座をした。


「す、すみません……でした……」


消え入りそうな声で冷たいコンクリートの床に頭を下げる。


俺はこの後に起こる出来事を少し期待していた。被害者の父と加害者。憎しみがどろどろと渦巻いている。こいつがどんなに謝ろうとも被害者は決して帰ってこない。かといってこいつが、死刑になることはない。まさにこの施設があるからこそ加害者に罪の意識を植え込むことができるわけだ。普通の刑務所でひたすらに、規則正しい生活をして被害者家族がすくわれることは絶対にない。かといって復讐はしてはいけない。この大きな矛盾を解決してくれるのがここなんだよな。

父親はつめたい水のはいったバケツに手をかけた。

檻の外からそいつめがけてぶっかけた。

季節は冬。

手がかじかむほど寒い。

「娘も……っ寒い川の中にとびこんだんだ。寒くて……さむくて……」


父親の瞳から涙が溢れていた……憎しみを抱いた悲しい瞳で泣いていた。

娘の亡骸をどんな気持ちで見たのだろう。冷たく変わり果てた姿の娘を。


彼の罪。それは今現在もそこにあり、消えることなく身にきざまれていく……。もしかしたら、万引き商品を返し謝罪することで言い方は悪いが事なきを得たかもしれないよな。


どしゃ降りの雨に打たれたようなずぶ濡れの姿をした奴は、奥歯をガチガチ鳴らしながら虚ろな視線を冷たいコンクリートにむけていた。


すると、数人が足を止めこのやりとりを眺めていることに気がついた。一人はスマホを向け動画をとっている。SNSにアップするんだろうか?ただ俺が気になったのはその表情だ。

感情のこもらない、テレビをみている様な目だった。


またその動画を撮っている彼のすぐそばで、少し腰の曲がった初老のお婆さんが杖をついてやり取りをみていた。

俺はその婆さんに話しかけた。


「なぁ、あの犯罪者を知ってるのかい?」


「ああ」


婆さんは言葉少なに答えた。


「あの犯罪者もさ、バカだよな。万引きくらいでこんなとこいれられて、巻き込んだ女子高生は可哀想だけどすぐに嘘だって言えばこんなことにならなかっただろうにな」


「私の孫なんだよ」


「!?」


おれはビックリして横の婆さんの顔をみた。

婆さんはぽつりぽつりと話し出した。


「智は昔は人にやさしくて、どっちかとゆうと曲がった事が嫌いな子じゃった……小学三年のときに両親が離婚してから、智はだんだんかわっていった。暗く、あまり喋らないようになったんじゃ」


婆さんは静かに感情のない声で淡々と話を続けた……。


「そんな智がいじめにあうのに時間はかからなかった……。クラスでも強いいじめっこに殴られ、お金をとられ不登校ぎみになっていったんじゃ」



「万引きも指示されてすることがたびたびあって忙しかった母のかわりに私が警察にいったこともあった。悪いのは止めたいといえないあの子の心のよわさだとおもう。そんなことを経てなんとか高校にあがった。いじめっことは離れ高校生活で一色すると思うとった」


「じゃが、あの子は万引きや電車でちかんをくりかえすようになった。迎えにいくだび反省したと大泣きするんじゃが、また繰り返した」


「弱いものを攻撃することで、心の安定をもとめた……?」


俺はゴクリと息を呑み婆さんにたずねた。

婆さんは小さく頷いた。


「そんな折、このお嬢さんを巻き込む事件を犯したんじゃ」


婆さんは奴を悲しそうな瞳で見つめた。


「取り替えしなんぞ、つかん……」





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