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終焉への反抗者《レジスタンス》  作者: 獅子王将
適応能力試験、襲撃
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第26話『試験終了』

木の上から降りてきた暁鷹虎の姿を直視した将真は、ただそれだけで総毛立つような感覚を覚えた。

その場にいるだけだというのに、放たれる威圧感は凄まじいなんてものではない。おそらく全開の闘気なのだろうが、対象ではないはずの自分たちですら押しつぶされそうな、そんな気さえした。

そして他のメンバーも、同じようなことを考えたらしく、互いに目を合わせて息を飲んだ。

余りに、格が違い過ぎる。

それを、否応無く実感させられた。

2ヶ月ほど前のあの事件で暴走した柚葉が放っていた殺気も相当だったが、それでもまだそっちの方が可愛げがあるくらいだ。

「何故ここにいる、暁鷹虎……!」

手駒であったギガント全てを鷹虎に倒されて、忌々しそうな表情で鷹虎を睨むマッド。

だが、鷹虎はそれを意に介した様子もなく、気にさえしていない。

「ふむ、つい先ほど帰還したばかりだが?」

「何故だ! お前は北の戦闘に駆り出されて動けないはずだろう⁉︎」

北の戦闘。

それが何を意味するものかは将真たちにはわからなかったが、鷹虎が駆り出されていたほどだ。そこそこ大きな争いだったのだろうという予想くらいは容易にできた。

そして鷹虎は、

「ああ、あの戦争なら数ヶ月前に終結したよ」

知らなかったのか、と事も無げにそう口にした。それが事実であるというは、彼がここにいることで証明できる。

それをマッドも分かったのだろう。彼もそれを理解しながら、だが、信じられないと言いたげに表情を歪め、頭を抱えて首を振る。

「バカな……あの戦力を1人で片付けただと? 並みの魔導師が大隊を3つほど組んだと想定しても勝てるほどの戦力だったというのに……」

「でもどうせ、魔王軍の総戦力の、1%にも満たないんだろう。何を気にすることがある?」

鷹虎が、肩を竦めて言う。その態度に、マッドが更に苛立たしさを募らせ、ギリギリと歯ぎしりをする。

「戦力の減退など問題でない。ああ、問題じゃないさ、お前のいうとおりだ。あの程度の戦力を失ったところで、こちらから見れば大した数ではない。問題は、貴様1人であの戦力全てを倒したということだ……!」

マッドの質問を冷静に受け流し、マッドはいら立たしげに歯ぎしりをして睨みつける。

そして、将真たちはというと、その会話の中から拾えた恐ろしい情報に耳を疑った。

おそらく彼は1人ではないにしても、支部に配属される魔道士というのは、戦闘能力がそんなに高くないらしい。だから、戦地にはそう戦力の高くない支部の魔導師でも連れて行っていたのだろう。

だが、それにしても、その成績は計り知れない。なにせ大量の敵を、足手纏いを抱えたまま、殆ど1人で仕留めたのだから。

「これ以上戦うのは無意味、お前たちの戦力が減るだけだ。退きたければ見逃しても構わないが、それでもまだやるか?」

「……」

敵を見逃すという考えになにかしらの意図があるかはわからないが、どう見ても不利な状況で、相手側からしてみればそれは、願ってもない話のはずだ。将真たち魔導師側からしてみれば、何をいうかと怒りの一つも覚えるようなセリフだが。

そして、マッドは黙ったまま口を開かない。

やがて、鷹虎が呆れたようにため息をつくと、

「降参……」

ぼそりと、聞き取りにくい声で自身の負けを口にした。その事に安堵を覚える将真たち。だが、気を抜くには早過ぎだった。

「降参……するわけないだろう__!」

『っ⁉︎』

マッドが、絞り出すような声をあげ、地面に手をつけた。そして、何度目かの鈍い揺れが地面を伝い、周囲にギガントの大群が現れ、囲まれる。

その大きさは、50メートルから10メートルまで。総戦力数は50体近く。

「げっ……」

「おいおい、囲まれちまったぞ⁉︎」

思わず呻き声をあげる将真と、絶望的な光景を目の前に絶叫する響弥。

悔しそうに歯をくいしばる将真は、睨むようにマッドを見る。マッドは、狂気の笑みを浮かべて喚いた。

「お、俺の任務は、お前たちを殺して、都市を落とす事だ! 俺の命なんか知るか、俺は、任務を遂行するまでだ!」

「……これだから三下は」

ギガントたちを見上げて、鷹虎は呆れたようにため息をつく。とはいえ、これだけ多くのギガントがいると、いくら彼でも将真たちを守りながら戦うのは難しい。

それを鷹虎もわかっているのだろう。彼は、背後の将真たちの方を振り向いて、

「助けに来たところ申し訳ないが、どうも守りきれそうにはない。できる限り、自身の力で対処してほしいものだが」

「……多分、やれると思います」

「まださっきに比べればなんとかなるかもなぁ」

杏果と響弥が、鷹虎の言葉に頷いた。

ギガントは、50メートル以上になると突然強さが増すのだが、それはつまり、50メートルでさえなければ、その戦力にはまだ対処のしようがあるということだ。数の暴力が、不安な点としては残るが。

「別に倒す必要はない。相手の動きを止めるなり制限するなりしてくれれば、俺が全て始末する。無理をする必要はないぞ」

「全てって……そんなまさか」

「100メートル級がいるならまだしも、この程度で・・・・・手こずっていては、自警団序列3位は名乗っていられない」

冗談としか思えなかった将真に、鷹虎は特に誇示をする事もなく答えた。その回答に、将真は驚きながらも思うことが一つあった。

__俺たちが。足手纏いがいなければ、もっとこの人は戦えたんだろうな。

それこそ、1人で全滅すら狙えたはずだ。

将真たちは、この時本当の意味で、力の足りなさを自覚する。だが、それでも今はやるべきことをやらなければならない。

「フッ__!」

将真は、『魔王』の力を顕現させる。いつもと同じ、黒衣に漆黒の刀だ。そして腕の侵食は、肘あたりまで進んでいる。

そして、遥樹や虎生、他のメンバーも、各々に武器を構え、臨戦態勢をとる。それだけで終わらない。そこに、遅れて4人の少女たちが駆けつけてきた。

「ごめんなさい、遅くなっちゃった!」

「自分たちはもう準備オッケーっすよ!」

「リン、莉緒!」

「静音も!」

「実、生きてたんだな」

それは、将真たちと同じく鷹虎に助けられて、再び戻ってきたリンたちだった。

更に戦力が集まったその様子を見て、怒りに貌を歪めたマッドが、声を上げる。

「どいつもこいつも邪魔しやがってぇぇぇえ……! 木偶ども、さっさと奴らを殺せ__!」

「お前たち、止めるぞ」

『はいっ!』

マッドの命令の元、ギガントたちが向かって来る。それに対する鷹虎の簡潔な指示に、学園生たちは声を揃えて返事をする。


向かって来るギガントに対して、力で匹敵する遥樹や虎生、杏果に響弥、後は将真。彼らは、ギガントたちが無造作に伸ばして来る手や足を迎撃して弾く。力では勝てない美緒たちや、遠距離が専門の透は、離れたところから攻撃をして、ギガントたちの足止めをしていた。

この数全てが50メートル級であったのならば、彼らはきっと耐えられなかっただろうが、まだそこまで絶望的な状況ではないうえに、今の彼らには希望があるのだ。

遥樹が攻撃を跳ね返し、動きが止まったギガントを、鷹虎が光の矢で穿つ。更に、近くで同じように迎撃した杏果の目の前で、今度は鷹虎自らが剣を作り出して刺殺した。そして次の隙ができたギガントへと、次々に移っては絶命させていく。

その手際の良さには驚かされるが、更に驚くべき事が起きているということに、将真たちはようやく気がついた。

将真たちが相手をしていたギガントを倒しているだけではなかった。先ほども、遥樹が相手していたギガントを倒した直後、別のギガントを1、2体ほど倒して、杏果が相手をしていたギガントを始末した。つまり、将真たちが相手をしているギガントたちを次々と倒していくその合間に、周囲のギガントの数も着実に減らしていたのだ。

手際がいい、なんてものではない。あまりに速すぎる戦闘。それでいて、あの超絶的な再生能力を物ともしない、確実に一撃で絶命させる技術。

そして何より、それを可能にする彼の実力。将真は、改めてその恐ろしさを実感する。

__これが、日本のトップ……!

「クソ、クソッ、クソォォォォォオッ!」

ギガント次々と倒されていく様子を見ていたマッドが、頭を抱えて苛立たしげに悪態を吐く。

「何なんだよ、何なんだよぉぉぉぉぉお⁉︎ 邪魔しやがって、ふざけんじゃねぇよクソがぁぁぁ!」

耐えきれなくなったマッドが、怒りに震えて鷹虎へと襲いかかる。どうやらマッド自身もそれなりの強さを持っているらしく、将真たち相手に不意打ちできた場合ならば、攻撃を当てることは十分に可能だっただろう。

だが、鷹虎相手には余りに遅すぎて__

「……哀れだな」

「ガフッ……⁉︎」

マッドの動きがまるで、スローモーションのようだった。一瞬で生成され、凄まじい速度でふり抜かれた剣が、瞬く間にマッドの胴体を横薙ぎにし、切断した。

「がぁ……」

「__終わりだ」

呻き声を上げるマッドを前に、とどめを刺しに掛かる鷹虎。その振り下ろされる剣が、マッドを縦に切り裂く直前、マッドの口が弧を描く。

「あぁ……、お前がな」

「__っ」

振り下ろされた剣が、マッドを縦に斬り伏せ、四つに切り分けられた肉体から血が噴き出す。そして、鷹虎の背後には__100メートル級のギガントが迫っていた。

「鷹虎さん!」

「危ない!」

「何っ……⁉︎」

流石の鷹虎も、この図体の化け物からの不意打ちは予想外だったらしく、驚きの声を上げる。予期せぬ不意打ちに、らしくもない些細なミス。そして体勢を崩す鷹虎。その唐突な攻撃に、最も速く対処したのは__

「届けぇぇぇえっ!」

魔属性魔力を剣に集中させた将真。凝縮された魔の力が、剣を覆って細剣レイピアのように、或いは槍のように長く鋭く尖っていた。そして、爆発的な速度で地を蹴り、神速の一撃を100メートル級のギガントに直撃した。

「今の、見たことない……」

「まさか、練習してたっていう新技っすか?」

「それより、どこに命中したの⁉︎」

呆然と呟くリンと莉緒の声を一蹴して杏果が叫ぶ。

命中したのは、ギガントの首元だった。普通に考えて、あんな場所を抉り取られれば絶命するのだが、しかし、一撃で確実に仕留めなければ無限に再生するという驚異的な再生能力をもつこのギガントを相手には、少しの足止めにしかならなかった。

だが、とりあえず鷹虎が体勢を立て直すのに必要な時間は得られた。

「不味いな……100メートル級は単独撃破に時間がかかるんだが」

「1人で倒せるんですか⁉︎」

「ああ。だが、攻撃力だけじゃない。体もやたら丈夫になっているし、100メートル級に限って言えば高い知能を持っている。相変わらず速さはないが、長期戦を想定していないと難しい」

自警団序列3位ですら手を焼く相手がいる。将真は改めて、ギガントの本当の脅威を理解したような気がしていた。

「せめて10秒でいい。こいつらの足止めをしてくれれば、確実に倒す」

「……足止めだけでよければ、私がやります」

「杏果⁉︎」

鷹虎の問いに応じたのは杏果だった。だが、いくら力に自信がある彼女でも、恐らく100メートル級ギガントには太刀打ちできない。

「一体、何する気だ?」

「私の使う魔力属性は“地”。地属性。確かに力比べが得意な私としては、これはあまり得意な戦法ではないけど、足止めだけでいいなら__」

杏果は魔力を両手に集中させて、地面に手を置き、そして魔力を流し込んだ。次の瞬間、唐突にギガントの足元が陥没する。

「っ⁉︎」

「あらゆる物質には重力が働いているわ。それも、あんだけでかいやつなら、相当な重量になるはず。その状態でバランスを崩せば、動きを止められる!」

「なるほど……、っ!」

杏果がやった事に納得を覚えた将真。だが、出来たのはあくまで足止め__と言うより、進まないようにしただけだ。そして、抑えられていなかったギガントの巨大な右手が迫ってくる。

それは、将真たちの元へと届く前に、肘あたりで切断された。

「幾ら頑丈だろうと、まともに動けない奴を的にするくらい、どうと言うことはないよ」

そう言って、ギガントの腕を切り落としたのは遥樹だった。神技を用いて、高出力エネルギーで強引に焼き切ったような一撃。おかげで、誰もダメージを負うことはなかった。

そして、完全に隙だらけの姿をさらしているギガントを目の前に、将真は再び剣に魔力を込めていく。先ほどと同様、剣を覆った魔力が鋭い槍のような形を作った。


莉緒が言っていた事は正しい。

この技は、将真が新たに習得しようと練習していたもので、剣道でいうところの“突き”に当たる。

“面”を意識した打撃系の“黒渦”や、“胴”を意識した斬撃系の“黒断”とはまた違う、速度と鋭利さに特化した、“突き”を意識した刺突系の剣技。

特に名前は考えていなかった。だからだろう。今回もその技の名前は、センスのない、見たままのものとなった。

「“黒槍”__!」

一気に加速して、将真の剣がギガントの心臓部へと吸い込まれるように向かっていく。その一撃が直撃した時、ギガントの胸には大きな傷ができていた。そして__ギガントはまだ、動いていた。

これだけやっても、倒すには至らなかったのだ。

だが、それでもいい。ここで例え倒せなかったとしても。

「よくやった、生徒たち」

将真の背後から、鷹虎の声が聞こえてきた。将真は振り返ってその様子を見る。

鷹虎は、弓を構えていた。弦を引き、凄まじいエネルギーが込められた矢が、今にも放たれんとしていた。

「今度こそ終いだ__穿て!」

言葉と同時に、矢が放たれる。

それはもはや、矢と言うよりは砲撃に近かった。その一撃は、見事に将真が作った傷へと吸い込まれるように命中し、ギガントの命を一瞬で刈り取った。それだけではない。強すぎるエネルギーが、ギガントの全身をチリ一つ残さず消し飛ばした。

辺りに、もうギガントは見当たらない。まだ残っていたはずの何体かも退いていったようだ。

今度こそ、今試験の魔族たちの襲撃は終わったのだ。


将真が、後ろへフラッと倒れる。

それを見たリンと莉緒が駆け寄るも、莉緒は途中でかけて顔から倒れ、リンも将真の前までたどり着いたはいいが、すぐにへたり込んでしまった。

「も、もうダメ、力が抜けちゃって……」

「いやぁ、全くの同意見っす」

「もー動けねー……」

将真も、別に気を失っていたわけではない。ただ単に疲れて、仰向けに倒れただけの事だった。

寝転がったまま、将真は少し笑みを浮かべる。

「終わったな……」

「うん……。終わったね」

将真の言葉に、リンは頷いて同意する。

その時、丁度将真の端末に通信が入った。相手は柚葉だ。

『将真、ちゃんと無事? 生きてる?』

「おー、柚姉……。見ての通りだよ」

『そう。何とか無事そうね』

将真の様子を見て、ホッと息をつく柚葉。だが、すぐに切り替えて少し真剣な表情を作ると、

『あと少しで、結界の復旧も終わるから。そうすれば、転送システムもちゃんと働くから、あと少しの辛抱だし、もうちょっと待っててね』

「おう、了解」

将真の返事を聞くと、柚葉はもう一度微笑を浮かべて通信を切った。

重い体を少しだけ起こして周りを見渡すと、同じように、共に戦った生徒たちが寝転がったり座り込んだらして、各々安堵を浮かべていた。例外として、学年トップの遥樹や、助っ人に来た鷹虎は悠然と立っていたが、2人の表情からも、乗り切った感が見て取れた。

一息ついて、体の力を抜くと同時に息をつく。

すると、唐突に視界がブラックアウトして__


__あれ?




次に目を開いた時、将真は暗闇の中を漂っていた。

思考を巡らせようにも、思考能力自体がないかのような感覚。そのせいで、目を開く前までの記憶がない。

何があったのか、思い出せない。

__死んだのか?

呟こうとしたが、声が出なかった。

同じような事が、あった気がする。

一体ここは何なのか。何でこんなところに自分はいるのか。意識があると言うことは死んではいないと言うことか。と言うことは、地獄や天国ではなさそうだが。

答えのない自問自答を繰り返していると、不意に黒い物体が目の前に発生した。

暗闇の中で黒い何かを視認できると言うのも、おかしな話だが。

それは人影だった。そして恐らく、将真同様漂っている。

__お前、誰だ?

声にならない問いかけを、人影に対して投げかける。

すると、その人影の顔に当たる部分だろう。そこに、口のようなものが発生し、開閉しながら音を響かせた。

『我は魔王。世界を滅びへと導く者』

『魔王』。

その単語を、何処かで聞いた気がする。だが、今の彼には、それすら思い出す事ができない。

思い出そうとしていると、不意に人影が離れていくのを見た。否、離れているのは自分だった。

『いずれ、貴様の体を奪い、現世へと復活するその日まで、ここで全てを見ていよう』

凄まじい力で、上に引っ張られているような感覚を覚えながら、人影の最後の言葉を耳に、将真の意識が現実へと戻って来た。




「……はっ!」

「うわぁっ⁉︎」

唐突に訪れた覚醒。

勢いよく目を開き、体を起こす将真の側で、少女が声をあげて少しだけ飛び退いた。

「……ここは」

「例によって例の如く」

「医務室かー……」

見慣れた部屋を見渡して、返答の意味を吞み下すと、将真は右手で頭を抑えて肩を落とす。

一体、何だこの部屋に世話になれば気がすむのか。

そんな憂鬱な思考は、一度ため息と共に吐き出して。

「……おはよう、でいいのかな?」

「うん、おはよう。大丈夫だよ、ちゃんと朝だから」

「とりあえず、無事そうで何よりだよ、リン」

「将真くんもね。でも、意識飛ぶ前にちゃんと顔合わせてるの忘れてない?」

「……うん、覚えてないな」

引きつった笑みを浮かべながら、将真は目の前の少女、リンと軽い会話をする。

「何て言うか……俺はまた気を失ってたのか?」

「うん。一晩くらいかな」

リンの話によると、気を失った将真は、転送直後に速攻で医務室に運ばれた。そしてその後は適当な治療を受けて今に至る、と言う事だった。

リン達はまだ疲労やちょっとした怪我で済んでいたが、将真は魔王の力に慣れて来ていても、やはり肉体への負荷が大き過ぎたようで、余計にダメージが蓄積された結果、この様である。

覚醒して少しだった事で、ぼやけていた頭の中が徐々に鮮明になって来て、気を失う前に何があったのかを思い出す。

「……自警団序列3位、暁鷹虎だったっけ」

「うん」

「凄い強かったな」

「……うん」

「あれ見たら、俺たちなんてまだまだ何だなってわからされたよ」

「……本当だね。ボクたちは、やっぱりまだまだ、力不足なんだ」

しみじみと鷹虎の戦いぶりを思い出して口にする将真に対して、返答するリンの口調は暗い。

そんなリンを見て、将真は苦笑を浮かべる。

「そんな顔するなよ。そりゃ俺たちはまだ弱いかもしれないけど、でもまだまだこれからだぜ?」

「……うん。そうだよね」

「そうだよ。だからさ」

そう言って、将真はリンの前に拳を突き出す。

「頑張って、強くなろうぜ。みんなで、一緒に」

「……うん。今度は、ボクたちがみんなを守れるように」

リンは、力強く頷いて、将真の拳に自分の拳を重ねた。

すると、リンの背後で扉が開いて、莉緒たちが入って来た。

「お、目が覚めたみたいっすね」

「心配かけて悪かったな」

「本当っすよ、無用な無茶ばかりするんすから」

「悪い悪い」


そんなこんなで、今回・・の襲撃事件は無事、片付ける事が出来たのだった。

だいぶ遅くなってすいません……。

今回の話で多分(⁉︎)二章の三分の一が終わりです。次の話からは、丁度リアルと同じような時期から始まります。

なんか遅れっぱなしで申し訳ないですが、よろしくお願いしますね。

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