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終焉への反抗者《レジスタンス》  作者: 獅子王将
適応能力試験、襲撃
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第2話『休暇』

「__お待たせっす」

「お待たせ……」

「ん」

やはり男子は着替えるのが早いためか、既に3人は水着に着替えて女子勢を待っていた。

最初に現れたのは莉緒と美緒だった。

彼女たちの水着は、それぞれのイメージカラーにあった、少し地味なセパレートだったが、多少フリルが付いていて、意外に可愛らしく着こなしていた。柄は特に無いが、莉緒の赤い水着の上には青いラインが、美緒の青い水着の上には赤いラインが通っていた。

ちなみに胸が大きい方である美緒は、胸が強調されていた。あと、響弥がガン見していた。そして美緒はそれに気づいているが気にせずスルー。

莉緒は軽く両手を浮かせて、水着を見せびらかすようなポーズをとる。

「どうっすか?」

「どうって言われても……」

「うん、シンプルでいいんじゃね⁉︎」

将真は特に何も思いつかなかったが、響弥はビシッと親指を立ててご満悦だ。まあ、目つきが少々スケベなのは彼の本来の性格がそんな感じなので仕方が無い。

「相変わらずスケベだねー、響弥は」

「えっと……何か恥ずかしいんだけど」

「おっ」

加えて、静音と佳奈恵が戻ってくる。

からからと笑う静音は赤基調のワンピース型、恥ずかしそうに胸元を隠す佳奈恵は白基調の、下がフリルスカート型のビキニを身につけていた。

そして佳奈恵もまた、胸元が強調されていた。隠そうとしている分余計谷間が出来てしまっている。

スケベな響弥はその谷間に目を奪われ、将真は理性を保ってできる限り胸の谷間に視線がいかないようにしていた。見たく無い訳ではなかったが、何というか、ダメな気がしたのだ。

そして猛はと言うと、今まで興味なさげに仏頂面を作っていたのだが、佳奈恵が水着で現れたと同時に一瞬、僅かだが反応していた。

将真は偶然にもこれに気がついていた。そして響弥もまた、当たり前のように気がついていた。

「ん? 珍しいな、猛がこういうのに反応示すなんてなぁ?」

「してねぇよ」

「嘘こけ。佳奈恵の時だけバッチリ反応してたじゃねえか」

「っ!」

それを聞いた佳奈恵は、バッと身を縮める。猛は余計に苛立たしげに声を低くする。

「してねぇっつってんだろ」

「いいじゃん俺ら男子高校生だぜ? 女子の水着に興奮したっておかしくねぇだろ⁉︎」

「あえて口にするあたりはお前らしいけどな……」

呆れ半分感心半分で将真が思わず呟いた。わざわざそんなこと、普通は口にしないだろう。

「あ、もしかしてお前佳奈恵のことすぉぉう⁉︎」

そして、響弥の言葉が終わる前に、ついに猛が拳を上げた。その拳は、咄嗟に躱した響弥の鼻先を掠めていく。

「っぶねぇな、何すんだ⁉︎」

「くだらねぇこと言ってっからだろ」

荒々しく息を吐いた猛が、くるりと背を向ける。

「おい、どこ行くんだよ?」

「帰る」

「はぁ?」

響弥が「何で?」と言わんばかりの表情で声を上げる。将真は何となく理由がわかっていたが、それにしても随分短気だと思うのだが。

すると、佳奈恵が駆け寄って猛の動きを止める。

「ま、待って猛!」

「__っ⁉︎」

その行動に、さしもの猛も驚愕の表情を浮かべる。と言うのも、猛を止めるために佳奈恵が取った行動は、無意識なのかもしれないが、猛の腕にしがみつくという方法だった。そしてまだ高校生にしては大きめの胸が、猛の二の腕に押し当てられている。

「おいっ⁉︎」

「何で帰っちゃうの⁉︎ せっかくみんなでワイワイ遊べるんだよ⁉︎」

「俺はこういうのあんまり好きじゃねぇんだよ!」

離せ、と猛が佳奈恵の顔を抑えて乱暴に引き剥がそうとするが、佳奈恵は意地でも離そうとしない。

「絶対、帰らせないんだからぁ〜!」

「っ……、わかった、わかったからもう離せ!」

言った瞬間、佳奈恵はその腕をパッと離す。佳奈恵は少し不思議そうな顔をしていたが、やがて猛がらしくもなく慌てていた理由に気がついて、顔に手を当て真っ赤になっていた。

「……何やってんのよ」

「うおっ」

「おおっ!」

珍しく猛が動揺していたので思わずそれを観察していた。そのせいで、杏果が近づいていたことに気がつかなかった将真は驚いて声を上げた。そして、その声を聞いて、将真同様そちらを振り向いた響弥も声を上げる。

杏果は、髪の色と同じピンク基調のビキニだった。水着のセンスも悪く無いが、そもそも彼女のスタイルが学生とは思えないほどいいせいで妙に艶かしい。

「な、何よ……」

「いや、そんな目で見られても……」

「ご馳走様です!」

「ば、馬鹿じゃないの⁉︎」

響弥の正直な感想に、杏果は顔を赤くして両手を交差して肩を抱きながら蹴りを放つ。だがそれはうまいこと躱されてしまう。

「あ、あぶ、あぶね、危ねぇ!」

「うっさいわねこの変態!」

「女子の水着姿に興奮するのは年頃の男子として当然の反応じゃね⁉︎」

「それをあえて堂々と口にするのはあんただけよっ!」

ぎゃいぎゃいと騒ぐ杏果と響弥。

すぐ近くにいて杏果の蹴りの巻き添えを食いそうになった将真は、少し下がって安全圏に退避しながら苦笑を浮かべる。

「お前らって、結構仲良いのな」

「まあ、初等部からの付き合いだかなヘブシッ」

将真が微笑ましい気分でそう言うと、その返答に意識を傾けた響弥の左頬に、遂に杏果の踵が直撃した。響弥の口から、妙な声が漏れる。

「よしっ」

「よし⁉︎ ひでぇなコンチクショウ!」

杏果が思わず、小さなガッツポーズを作り、それを見た響弥は堪らず抗議する。将真たちはそれぞれ笑うなり呆れるなりの反応を浮かべ、そして将真はある事に気がつく。

「そう言えば、リンは?」

その問いかけの答えは、誰からも提示される事はなかった。代わりに、当の本人が小走りでやってきたからだ。

「ご、ごめんなさい。待たせちゃったよね?」

「おう、リンもやっときた、か……」

小さくため息をついた将真はそちらを振り向いて、次の瞬間、その目を見開いて硬直した。

ただ単に、見惚れてしまったのだ。

髪は銀髪で、肌も白い。そんな彼女が着ているのは、白基調のビキニだった。下は短いスカートっぽい感じだ。まあ、それでも布面積は少し広い方だと思うが。

だが、小柄な見た目の割に出るとこは標準よりは多少出ている気もするし、何より彼女の柔らかそうな色白の肢体やお腹が、将真の目を釘付けにした。

みんなと同様、それなりに鍛えているはずなのに余り筋肉を感じさせず、それでいて脂肪もなく、ただ触れたら弾力がありそうなそんな雰囲気を漂わせていた。

その視線に気がついたリンが、恥ずかしそうに顔を赤く染めながら、先ほど杏果がしたよりは控えめに自分の姿を隠すような仕草を見せる。当然、隠せるわけもなかったが。

「あ、あんまりジロジロ見られると、流石にボクも恥ずかしいよ……」

「え、あ、その__」

「よく似合ってるじゃない」

硬直が溶けて、焦りながら手をワタワタと動かす将真。そんな彼をジト目で睨みながら、杏果は素直な感想を口にする。

「そうかな?」

「ええ。ちゃんと着てくれたあたり、私も選んだ甲斐があったわ」

「お前が選んでたんだな」

真実を耳にして、響弥は意外そうに呟く。するとリンは、照れ臭そうに苦笑する。

「ボクって、服選ぶセンスとかないから。だからいつもお出かけ用の服は杏果ちゃんについてきてもらってるんだ」

「へぇ」

「素質はメチャクチャいいのに、それを活かせないあたり、宝の持ち腐れだと私はおもってるんだけど、その辺将真はどう思う? ……将真?」

杏果が、少し呆れたように言いながら将真に話を振る。ちなみに、杏果の評価に少し不満を覚えたリンは、少し頬を膨らませていた。

そして将真はと言うと、その話を聞いていなかったのか、反応が全然ない。

「ちょっと将真?」

「……もしかして、ボクの格好、変かな?」

「……っ!」

リンが上目遣いに顔を覗き込んでくる。それに気がついた将真は、ハッとして正気を取り戻した。

「わ、悪い。ちょっと見とれてたっていうか」

「みっ……」

「まあ、その……可愛い、と思う」

「かわっ……⁉︎」

将真の口からこぼれた思わずといった感じの感想は、周囲の仲間たちを驚かせるのに十分な威力を持っていた。

特に、リンを爆発させるには十分すぎる破壊力を持っていて、羞恥で顔を真っ赤にした。

その様子を見て、将真はようやく自分が何を口走ったのかを理解した。

「あ、いや……今のは、だな……」

思わず将真も赤面し、言い訳をしようともごもごとするも、特に何も思いつかないでいた。

そんな2人の様子を見て何を思ったか定かではないが、仲間たちは生暖かい目を向けて、同じようなため息をつく。

「はいはい、そういう雰囲気は取り敢えず置いといて」

「早速遊ぶっすよ!」

杏果が切り替えるように手を叩き、莉緒が拳を天に突き上げる。それにつられる形で美緒、響弥、静音、佳奈恵の4人も拳を突き上げる。

「お前らテンション高いな」

「いやだって、海近いっつっても、そうそう遊べるもんじゃないんだぜ?」

「そういうもんなのか」

「そうっすね」

響弥の言葉に同意するように、莉緒が深く頷く。そのまま、我先にと莉緒は海の方へと走り出した。それを追うように美緒も走り出して、次々とその後を続いていく。唯一、猛は佳奈恵に手を引っ張られる形だったが。

そして、杏果がリンの手を取る。

「さ、行くわよリン」

「うん、そうだね」

リンは微笑を浮かべて、杏果と共に足早に莉緒たちの後に続く。

「……ま、いいか」

せっかく遊びに来たのだから、少しくらい羽目を外しても構わないのだろう。

そう呟いて、将真も海の方へと小走りに駆けていく。




「フンッ」

「っらぁ!」

一つのボールが、物凄いスピードで行き交う。そのボールは、打たれるたびにとんでもない形に変形して、まるで砲弾のように飛んで行く。

何故こうなったのか、と杏果はため息をつき、よく考えたら仕方がないことだと諦め交じりに再び嘆息し、目の前の2人をじと目で睨む。

だが、当人たちは頭に血が上って、そんな事に気がついてないようだ。


8月初頭にあった序列戦。

将真の初戦の相手はなんと4月同様猛だった。そして今回は将真の勝利という形で終わったのだ。

魔導士としての経験が、大勢の生徒と比べて足りず、まだまだ半人前どころか初心者もいいところな将真。

だが、その身体能力はいくら魔導士のものだと言っても驚異的なものがあった。加えて、余程のことがない限り毎日のように鍛錬を欠かさず行っている。

加えて、最近の任務がやたら難易度が高かっただけあって、純粋な戦闘能力は著しく向上していた。

それが、恐らくは今回将真が勝てた理由だろう。実際、魔導士としての能力は、まだ猛に及んでいなかった。

それでも、将真はどうやら才能もあるらしく、近いうちに魔導士としても猛を抜くのではと割と大勢が考えたに違いない。

そして猛は、それを面白く思っていなかった。元より短気な彼だ。同期ならまだしも、今年来たばかりの初心者に負けることが余程屈辱的だったらしく、タダでさえ犬猿の仲だった将真と、余計に折り合いが悪くなってしまったのだ。

そして、そんな怒りを理不尽に向けられた将真は堪ったものではない。


そんなこんなで、いつの間にかボール遊びが2人の潰し合いへと変わっていったのだった。

そして何度目かの打ち合いで猛がボールを打った時、遂に限界を迎えたボールが破裂音と共に弾け飛んだ。

「あっ」

「ちっ……」

将真が冷静さを取り戻して声を上げ、破裂したボールを見た猛は、盛大に舌打ちをした。

ため息をついた響弥は、武器生成の応用で同じようなボールを作り出し、

「いい加減頭冷やせっての」

「ぐっ⁉︎」

「ハブッ……!」

響弥によって、かなり強烈に打ち込まれたボールは、何と見事に猛の顔面に当たったかと思えば、その反射で更にそのままの威力で将真の顔面にも命中。

ボールが消えると同時に、2人の短気バカが水飛沫を上げて倒れこんだ。

そして2人が仰向けに浮いてきたところを見て、気の抜けた声で響弥が声をかける。

「頭冷えたかー?」

「ってぇなちくしょう……」

「……何か、すまんかった」

猛は恨み言を吐き、将真は素直に謝罪を口にする。この辺りに2人の性格の違いが出ている気がしないでもない杏果であった。

立ち上がった将真は、冷静になったことで、今更ながらあることに気づく。

「そういや、莉緒と美緒って、どこ行ったんだ? てっきりみんなしてこう、ボールで遊ぶのかと」

「ああ、2人なら……っと、丁度戻ってきたな」

「ん?」

「バァ」

将真が振り向くと、目の前にずぶ濡れの赤い髪と、その隙間から覗く不気味な光があった。

「うおぁっ⁉︎」

そして驚いた将真はひっくり返り、再び盛大な水飛沫を上げた。

それを見た莉緒は、垂れた髪をかきあげ、満足そうな笑みを浮かべた。

「将真さんて、意外とこういうの引っかかりやすくて反応面白いっすねぇ」

「いや、気配がないから余計ビックリだっての……」

そして視線を下に向けると、莉緒の下で美緒が肩車をしていた。そして彼女も僅かながら笑みを浮かべていた。その笑みが、ほくそ笑んでいるように見えたのは将真だけかもしれない。

「大成功」

「やっぱお前ほくそ笑んでんな⁉︎ バカにしてるんだな⁉︎」

「バカにはしてないけど、面白いとは思ってる」

素直な美緒の感想に、将真は頭を抱えて声を上げる。そうしてようやく気を取り直した将真は、それでもまだ不機嫌な表情で問いかける。

「……で、2人は何してたんだよ?」

「海中探索」

「は?」

美緒が淡々と告げたその言葉に、将真だけではなく、莉緒以外全員がキョトンと首を傾げた。

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