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終焉への反抗者《レジスタンス》  作者: 獅子王将
『3度目の終焉《サード・ラグナロク》』、参戦
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第22話『高位魔族』

「うひょー、なんて技だ。あんな魔導士が今時いるもんかねぇ」

「いるんだからいるんだろう。それよりも無駄口たたいてる場合じゃない。俺たちも出るぞ」

「へいへい」

木の上から傍観者さながら様子を見ていた彼らは__凍りついた地面に降りた。




「……嘘だろ」

「こんな神技があってもいいの?」

俺とリンは、思わず目を見開いた。

周囲の様子をみて、そう言わずにはいられなかった。

平気な顔をしているのは、神技を放った本人(みお)と、それを知っていたであろう莉緒。

学年序列6位の杏果ですら、驚愕に満ちた表情をしていた。

目の前に広がる景色は、凍結氷獄という名に恥じないものだった。周囲の地面はなんの誇張もなく凍りつき、オークの群れは、地面から生える青薔薇のような氷柱に閉じ込められて、その中で黒い塵となっていった。

「何て威力……これで学年序列3位だなんて……」

「これでも抑えた方。本気出せばもっといける」

キリッとした顔でそんなことを言うもんだから、余計に驚きだ。まだこれより上があるのか。俺では詳しいことはわからないけど、この殲滅力は……。

「広範囲の『殲滅型』……恐らく、そういう区分に分ければ、あなたは間違いなく学園トップよ」

「……でも汎用性が低い。威力は強力だけど、こういうとき以外に使うのは難しい」

こういう時、と言うのはつまり、敵の数が多い時とかだろう。現に、今の一撃でオークはすべて死に絶えた。

少し遠くに見えるデカイ図体のも動きは止められているようだ。

「なぁ、美緒」

「うん、何?」

俺は動こうとして、ちょっと困ったことに気がついて美緒に問いかける。

「俺の足凍ってるんだけど」

「……あれ、コントロール失敗?」

「いや、俺が聞きたいよ!」

足元を見ると、足首辺りまで凍らされていて、身動きが取れなかった。

「ごめんなさい。莉緒、お願いしてもいい?」

「了解っす」

莉緒が俺の足元に炎弾を1発放つ。するとすぐに氷は溶けて、足が自由を取り戻した。

「珍しいっすね。最近はミスなくなったと思ったんすけど」

「私もそう思ってた。だから非常に不思議で仕方がない」

終始無表情なのでそうは見えないが、彼女はこれでも不思議がっているらしい。

そして杏果が、場を切り替えるように手を叩いた。

「とにかく、これであとはあのデカブツを退治すれば終わりよ」

「そうだな」

恐らく、キングオークに意識が残っていても、このメンバーで倒すというのならば容易なことだろう。任務達成もそんなに難しいことではない。

任務が始まる前の懸念もどうやら考えすぎで済んだみたいだし。

地面の氷も、美緒が能力を解除したと同時に消えた。……わざわざ足下の氷消さなくても、解除を待てばよかったんじゃないだろうか。

そんなことを思っていると、唐突に後ろから、俺たち以外の声が聞こえた。

「へぇ、人間のくせに、中々可愛い子がいるじゃないか」

『っ⁉︎』

振り向くと、佳奈恵の肩に手をかけて、馴れ馴れしそうに笑う男がいた。

「な、なに⁉︎」

「どれどれ、ちょっと味見を……」

そう言いながら、男は牙を剥いた。

__吸血鬼⁉︎

認識したが早いか、俺たちはすぐに動き出す。だが、間に合わない。佳奈恵が血を吸われる__そう思われた時、吸血鬼は一瞬驚くような表情を見せて、颯爽と後退した。

「ちっ、外したっすか……佳奈恵さん、大丈夫っすか?」

「う、うん。ありがとう莉緒ちゃん」

どうやら、莉緒の動きだけがあのタイミングで間に合ったらしい。美緒にしても莉緒にしても、つくづくとんでもない姉妹である。

それにしても、声を聞くまで気配にすら気づけないなんて。

後退した吸血鬼は、面白いものを見つけたような、楽しそうな笑みを浮かべていた。

「いやぁ、僕の動きについてこられる人間がいるんだね。凄い凄い」

「__お前は少し人間を舐めすぎだ」

『なっ……⁉︎』

再び、後ろから声が聞こえた。ただし、目の前の男とはまた別物だ。

「吸血鬼が2体……」

杏果が、唸るように呟く。

無理もない。高位魔族の中でもトップクラス。例え高序列であっても、高等部の1年生が戦うには相手が悪いとしか言いようがない。それが、2体もいるとなればなおさらだ。

「一般人ならまだしも、こいつらは魔導士だ。少しは警戒をしてかかれ、愚か者」

「はぁーい。全く、君は真面目だね」

辛辣な態度を真正面から受け取っても、男はヘラヘラとしたままだ。

完全に舐められている。

だが、事実この中で誰が吸血鬼に勝てるというのか。このままでは最悪全滅しかねない。

すると、突然杏果から凄まじい魔力が漏れ出した。

「うおっ!」

「『神話憑依(ヘラクレス)』……っ!」

そして、漏れ出した魔力が彼女を包み込んで、それが止んだ後、彼女の装いがさっきまでと少々異なっていた。

「響弥、莉緒と美緒も。私たち4人はここに残って足止めをするわ。これだけいれば、簡単に死にはしないから。指揮権は、とりあえずリンに譲渡する」

「え、ボク?」

「あなたたち5人は、まずあのデカブツを倒してきなさい。そして、本来の目的である2年生チームの救出を達成したら戻ってきて。いい? 覚えたわね?」

「覚えたけど……お前らはどうするんだよ?」

「だから足止めするのよ。そっちが早く戻ってきてくれれば全員生還できるかも知れないから、早く頼むわよ」

正直、このまま彼女たちを置いていくのは不安だった。だが、ジッとしていてはそれこそ杏果の危惧した事が現実になってしまう。高位魔族を少人数で相手取るには、俺たち1年はまだ未熟なのだ。

それでも、彼女たち高序列者ならば希望はある。

「……分かった。耐えてくれよ。仲間が死ぬなんて、考えたくもないからな」

「そんなこと、今更言われなくてもわかってるわよ。それよりも早く行きなさい!」

杏果の叫び声を合図に、俺たちは二手に分かれた。無論、そう簡単に逃がしてくれるほど吸血鬼は甘くない。

「逃がさないよ?」

「ぐっ……」

回り込まれた俺たちは一瞬立ち止まる。だが、吸血鬼はすぐにその場を跳躍して離れる。

「さぁ、行くっす!」

「莉緒! 助かった。行かせてもらうぜ!」

「ええ、ここは任せてどうぞ」

莉緒の隣には、美緒が立つ。杏果と共に、響弥が戦う。

不安は未だあるが、今はまず自分にやれることをやるしかない。

「行こう!」

「おうっ!」

リンの掛け声に応え、俺たちは急いでキングオーク討伐に向かった。




キングオークのそばまで来ると、思っていたほど大きくはなかった。いや、大きいことには変わりないのだが、テッキリ10mとかあると思ってたけど、よく考えればオークの図体の3倍くらいだから、あっても5mだよな。

「……これって、トドメ刺す必要あるか?」

そしてそのキングオークは、美緒の一撃を受けたせいだろう、肉が朽ちだしていた。凍傷にでもなったかのようである。いや、実際凍傷になったのだろう。それも、かなり酷い。

「ひどい臭いだね……まだ意識あるのかな」

リンがそんなことを呟く。だが、例え意識があったところで最早こいつは終わりだろう。

そして、どうやら意識が残っていたらしく、キングオークは苦しげな唸り声をあげて口を開いた。

「グゾが……人間どもめ……殺じでやる」

「無理だろ、これ以上はもう。早く楽になった方がいいんじゃないか?」

「ふざげるな、ごんなどごろで死ねるがぁ!」

「ぐ、お⁉︎」

叫び声をあげながらキングオークは立ち上がる。激痛に苛まれているだろうに、それを耐えて。

「お前ら人間は、絶対許さない……ここで死んでも、お前らを殺すまではぁ……死ねるかぁ!」

「まだ動けるのかよ⁉︎」

「くるよ、みんな回避!」

リンの指示に従い、俺たちはその場を離れる。キングオークは既にボロボロだ。なのに、その体で地面にヒビを入れるパワーが残っていると言うのはちょっと危険かもしれない。

「リン、次の指示は⁉︎」

「えっと……」

リンは、考えるように黙り込む。そして、キングオークが再び拳を振り下ろしてくる。

「うおっ」

「きゃっ」

それぞれ声を上げながらも、何とか回避する。

「おい、リン?」

「……あの、ごめんなさい。ボク、指揮能力には長けてないんだ」

「えっ⁉︎ じゃあどうするんだよ!」

「そ、それはその……うぅ〜」

キングオークから距離をとりつつ、リンの答えを待つ。だが、リンが何かを答える前に、静音が口を開いた。

「そういう事なら、私に指揮権を譲渡してくれないか?」

「できるのか?」

「まあ、指揮能力が特別あるわけでもないが、頭の回転は速いほうかな」

「じゃあ、ごめんなさい。お願いします」

「了解。それじゃあ……」

呟きながら、静音がキングオークを見る。動きは徐々に緩慢になっていき、今すぐにでも崩れ落ちて死んでもおかしくない傷。それでも、俺たちを睨みながら、キングオークは向かってきていた。

「腹黒い吸血鬼共に従ったのは、お前たち人間を殺すためだ。オデたちの仲間を殺してきたお前らを、オデは許さない」

「ふざけんな! お前らだって俺たちの仲間を殺してるだろう!」

激昂したのは猛だった。その口ぶりからすると、もしかしたら目の前で死んだ仲間を何度か見た事があるのかもしれない。

「お前ら魔族が俺らを許そうと許すまいとカンケェねえ。お前らが俺たちを殺すから、俺らは生き残るために殺すしかねえんだろうが!」

「黙れぇ! 人間共め、お前たちのような仲間内で殺し合うような愚かな種族とオデたちを一緒にするな!」

「何だとっ……!」

「おい、落ち着け。このままじゃどの道話にならない」

俺は思わず猛の肩に手を置いて止めに入った。だが、

「黙ってろ! お前は話からねぇだろうけどな、俺は……俺たちは、何度も魔族に殺される仲間たちを見てきてんだよ!」

「……」

この物言いには、流石にカチンときた。

確かに俺は、こっちに来たばかりだ。魔導士たちの事もほとんど知らない。だが、それが何だ。知らないからなんだ。

俺は猛の胸倉を掴み挙げる。

「お前の気持ちは最もだ。けどな、いつまでも過去に囚われてるようじゃ、前に進めないんだよ!」

「テメェ……!」

「それとも、お前の短気で、今ここにいる仲間も死なせる気か⁉︎」

「っ……!」

その一言に、今度こそ猛が黙る。

卑怯な物言いになってしまったかも知れない。だが、この場を乗り切る事が最優先だ。確かに俺は、今までに何があったのかは知らない。だが、過去にいつまでも縛られていたら、ろくな事がない。

そういう経験があったわけではないが、そういうものだと俺は思っている。

「……わかったよ」

「じゃあ落ち着いたところで、猛が中衛を頼むわね。私と佳奈恵さんで後衛をやるから、一番息があってるお二人さんで前衛を頼むわよ。相手は満身創痍とはいえ、大地にヒビを入れるような怪物。警戒してしすぎという事はないと思う」

『了解!』

俺たちは指示に従い、自分たちの配置についた。

「将真くん、頭は冷えてる?」

「……さっきの事言ってるなら、そもそも大丈夫だよ、問題ない」

「そっか。それじゃあ、やるよ!」

「よっしゃ!」

俺はリンとともに飛び出した。




そして__

「う、くぅ……」

杏果たちは、たった5分ちょっとで、満身創痍になっていた。

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