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終焉への反抗者《レジスタンス》  作者: 獅子王将
『3度目の終焉《サード・ラグナロク》』、参戦
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第12話 『スリーマンセル?』

将真は、広い部屋の中で目を覚ました。

知っている天井。と言うより、医務室であった。

そして。


「あ、片桐くん。よかった、目が覚めて」

「ああ、そうだな……」


(うわぁ、すごいデジャブ!)


まあ、前回は立場が逆だったわけだが。

外を見てみると、既に日は落ちていた。そんな薄暗い外の光景もまた、デジャブ感を後押ししていた。

そんな将真の心境を知る由もないだろうが、リンは不安そうな表情を浮かべていた。


「体のほうは……、大丈夫?」

「大丈夫って……、何がだ?」

「だって、片桐くんは強いと思うけど、それでも序列2位は格が違うもん。そんな人の動きに合わせて戦ったんじゃ、体を壊してないかって不安になっちゃって」

「大丈夫だよ。ほら……って、いってぇ!」


体を起こして、何も心配はいらないという事を示そうと、両手を挙げようとした瞬間に、全身に激痛が走る。

つまるところ、まるで大丈夫ではなかった。


「わあ、大丈夫⁉︎」

「すごい痛い……けど、これくらいならまあ、無理しなきゃ大丈夫だよ」

「そっか……」


将真の大丈夫がまだ信用しきれないらしく、少し不安そうな表情のままだが、安堵したのか、リンがホッと息を吐く。


「心配してくれたのか?」

「うん……まあね」


(「べ、別に心配なんかしてないし! 勘違いしないでよね!」……とか言ってくれたらツンデレキャラの定番なのになぁ)


どうやらリンはそういうキャラではないらしい。

将真とて別段、ツンデレが好きというわけではないのだが、リアルでわかりやすいツンデレというのは見たことがない。


(……見てみたいなぁ)


というのが、将真の隠された本音だった。


「そういえば、あの後どうなったんだ?」

「えっとね……」


あの時、将真と虎生の決闘を諌めたのは、学年序列1位の風間遥樹かざまはるきだったらしい。

それもどうやら、神技まで持ち出したのだという。

気を失う前に姿を見た時点で、ある程度は予想していたのだが。


それにしても、幾ら1年生ながらに学園・・序列6位であるとはいえ、結界を破壊して決闘を止めるとは驚きだった。

幾ら闘技場の結界に〈日本都市〉の結界ほどの異様な強度はないと言っても、驚異的なことである。


そして虎生は、その後落ち着きを取り戻して、特に何を言う事もなく、その場を立ち去っていったらしい。


「俺って、どんくらい寝てた?」

「うーん、まあ……、6時間くらいかな」

「結構寝てたみたいだな……。なんか悪いな、街中の案内してくれてた途中で」

「うん。今度埋め合わせしてくれればいいから」

「お、おう。まあ……、あんまり期待はしないでくれると助かるけどな」

「善処するよ」


ふふ、とリンは微笑を浮かべた。

そして、何かを思い出したような、ハッとした表情を作る。


「そうそう。ここまで片桐くんを連れて来るのに、協力してくれた人がいてね」

「そうなのか?」

「うん。序列4位で、髪が赤くて、えっと、えーっと……」

鬼嶋莉緒きじまりおっすよ」

「そうそう。莉緒さん……って、きゃあぁぁぁぁぁっ⁉︎」

「うおぅっ⁉︎」

「呼ばれて飛び出ましたー」


いつの間にか、リンの隣には1人の少女がいた。

いや、隣というのは少し違う。なぜなら、その少女は逆さ向きだった。足をしっかり、天井につけてぶら下がっていたのだ。


(お前は忍者か)


そもそも、本当に飛び出してきたとは思えない。いつからそこにいたのかは不明だが、飛び出そうなのはこっちの心臓だよ、将真は心の中で悪態をつく。


「よっと」


そんな将真とリンの不満など知るはずもなく、莉緒は天井から降りてきた。

足を滑らせて、顔から着地という大失敗を犯したが……。


『…………』

「…………、と言うわけで」

「なにがというわけなんだ」


そして何事も無かったかのようにムクリと立ち上がり、将真にてを差し出してくる。

鼻の頭が少し赤くなっているが、顔から床に落ちたというのにこの程度のダメージで済むとは、驚きだった。


「改めて鬼嶋莉緒っす。以後よろしく」

「お、おう……。まあ、よろしくな」


気にせず話を進める胆力に少々圧倒されながらも、将真は差し出された右手を握り返した。

ともかく、自己紹介をされた以上、こちらもしたほうがいいのだろう。

そう思って、将真は口を開こうとする。


「俺は__」

「ああ、いや、知ってるから大丈夫っすよ。片桐将真さん」

「え、何で知ってんの?」

「嫌だなぁ、クラスメイトじゃないっすか」

「……そういうもんか?」


将真は、リンの方を向いて問いかける。対してリンは、


「さ、さぁ……」


と首を傾げて苦笑を返してくるだけだった。

リンも、将真と同じく、まだクラス全員の顔と名前を覚えている訳では無いようだ。

まあ、リンはともかく、将真はまだ〈裏世界〉に来てまもないので、仕方がないことだった。


「まあ、何となく面白そうな人だと思ってたんで、結構観察してたってのが本当のとこっす」

「ストーカー……だと⁉︎」

「人聞き悪いっすね⁉︎ 何てこと言うんすか⁉︎」


少しふざけてみると、莉緒は思わずといった様子でツッコミを入れてきた。

結構ノリがいいようである。


「まぁ、ここ最近ずっと観察してたんで、いまいち否定しきれないところっすけど」

「うん、できればやめていただけないかな」

「断るっす!」

「いや、何でそこでドヤ顔なんだよ⁉︎」


そんないい笑顔で拒否られても、と将真は呆れ半分でため息をつく。


(しかもそのネタどっかで聞いた気がするぞ)


「まあまあ、細かい事は気にせずに」

「……で、何の用だよ?」

「うん?」

「どうせ大分前からいたんだろ。って事は、何か用があるんじゃないの?」

「察しがいいっすねぇ、その通りっすよ」


莉緒はニヤッと笑みを浮かべた。あまり、少女が浮かべていい笑顔ではないと、心の中で思う将真だが口には出さない。


「うちに小隊チーム制があるのって知ってるっすか?」

「チーム?」

「あー、あのスリーマンセルのやつだよね」


莉緒の言葉に反応したところを見る限り、リンはどうやらチームというものを知っているようだった。


この学校にある、その小隊チーム制というのは、リンが口にした通りスリーマンセル、つまり3人1組のチームを組むことを言うらしい。

組み方は同じクラス内であれば制限はなく、例え高序列ばかり固まっても問題は無いという。

ちなみに、3人1組のチームを『小隊』、小隊が3つ合わさったものを『中隊』、中隊が9つ合わさったものを『大隊』と言うらしい。


「まあ高等部には、『中隊』はあっても『大隊』は滅多にないんだけどね」

「何で?」


リンが付け足した説明に、問いを投げかける。それに答えたのは莉緒だった。


「そりゃだって、中隊や大隊が必要になるって事は、それなりに難易度高いって事はわかるっすよね?」

「まあ、そんくらいはな」

「で、大隊なんか出して全滅でもしたらどうするんすか? 貴重な魔導師が81人も消えることになるんすよ?」

「っ……なるほど、それは大変だな」

「自警団でも大隊なんて滅多に出さないっすからねー」


確かに、そこまで高い難易度の任務だったら、全滅はしなくとも、1人2人と言わず何人かやられてしまっても不思議ではない。

おそらく、終焉ラグナロクとはそういうものなのだろう。

だが、それにしてもと、将真は疑問を覚える。


「よく知ってんのな、お前」

「まあ、知り合いが自警団入りしてるっすからねー」


〈自警団〉というのは、〈表世界むこう〉での自衛隊のような、魔導師たちの集団らしい。そして学園生の卒業後の進路は、半分以上が自警団を選ぶんだとか。


「んで、そんな説明したって事は……」

「ええ、まあご察しの通りっす。自分と小隊組まないっすか? 将真さんと、リンさんと、自分の3人で」

「えっ。ぼ、ボクも?」

「そうっす」

「ふーむ……」


将真は、顎に手を当てて考える。

悪い話ではない、どころかかなりいい話ではあるのだろう。

学年序列4位の莉緒から声をかけてくれたのだ。しかも、リンに声をかけるならまだわかるが、将真のような低序列まで誘ってくれるなんて。

だが、それだけに疑問はあった。将真の序列は、紛れもなく底辺に近い。


「何で、俺を誘ったの?」

「ん? や、だって何か面白そうだからっす」

「俺が?」

「もちろんメインは将真さんっすけど、2人ともっすかねー」

「……」

「……?」


将真は、その後に続く答えを待ったのだが、何と莉緒は小首を傾げるだけだ。


「……え、マジでそんだけ?」

「そんだけっすー」


思わず唖然として、将真とリンは顔を見合わせた。

もっと、ちゃんと考えないと後悔するんじゃなかろうか、と逆に不安を覚えるような、そんな理由だった。


「もうちょっと考え直す気はないのか?」

「何でっすか?」

「いやさ、そんないい加減な理由で俺をチームに入れて、後悔する羽目になったらどうすんの?」

「別にどうもしないっすし、だから考え直す気はないっすよ。ていうか、将真さん序列は低いけど序列2位と渡り合うくらいなんすよね? 十分強いじゃないっすか」

「……渡り合えてたっけ?」


あんまり記憶になかったので、将真は試合を見ていたリンに問いかけた。


「うーん、渡り合えてたかはあんまりわからないけど……。あ、でも、動きは凄い良かったと思う」

「ふーん」


そういうことらしい。

将真としても、別に断る理由はないし、むしろ両手をあげて喜んでもいいくらいだ。

序列4位と序列13位と小隊が組めるという、理想的な条件。

どこに不満があるっていうのか。


「わかった。お前にどんな思惑があるかは知らんけど、高序列者の方から声をかけてくれるんだから、むしろこっちからよろしくするよ」

「じゃあ、ボクも入るよ」

「そっすか! じゃあ改めて、これからよろしくっす。将真さん、リンさん」

「おう」

「うん!」


こうして、妙な形ではあったが、入学して1週間弱が経過した今日この時、将真は小隊というものを組んだのだった。




「歩けますか?」

「お、おう。何とかな……」


あの後1時間くらいして、ようやく将真の体は動ける程度に復活した。

とは言っても、筋肉痛を悪化させたような痛みがあり、かなりの苦痛であることには変わりはなく、特に腕は、焼けるような痛みがあって動かしたくもないのだが。


「やっぱり、東さんとの決闘で無理してたってことなのかな?」

「むう……、無理に力を引き出そうとした代償的なやつか?」

「まあ、そんだけやばいことしたなら、反動があってもおかしくはないっすねぇ」


仕方がない、と将真は諦めてため息を吐く。


普通に考えれば序列2位に敵うわけもなく、しかもあんなに頑張っても結局勝つことは出来なかったのだ。

やっぱりコツコツ勉強して習得していくしかないようである。

魔導に限った話ではないが、どうもそう簡単に習得できるほど甘くはないらしい。


「んで、今どこに向かってんの?」

「学園長室っす」

「げっ……」


思わず、うめき声を上げる。

問題を起こしたばかりだと言うのに、柚葉と顔をあわせるのかと思うと、少し気がひける。

小言を言われそうな気がしてならないからだ。


まあ、そんなこと悩んでてもどうしようもないわけで。


「__全く、母さんたちの話ではそんな短気だったとは聞いてなかったんだけどなぁ」

「ぐぬっ……」


結局、お小言を頂戴するハメになっていたのだった。


「あのねぇ、どんだけ無茶するのよ、勝てるわけないでしょ?」

「まさか、姉貴でもか?」

「そんなわけないでしょ。学園生に負けてたら学園長なんてやってけないわ」

「そういうもんか」

「ええ、もちろん」


その後、10分くらい小言を言われて、ようやくここに来た理由の本題に入ることになった。


「で、何しに来たのかしら。そろそろ閉めるから、手短にお願いね」

「ああ、それはこいつから」


小言を言われ続けたため、疲れた表情の将真は、莉緒の方を指差す。


「小隊を決めたんで、申請しに来ましたっすー」


(あ、申請とかいるのな)


「はいはい、ちょっと待ってねー」


そう言いながら、柚葉は引き出しを漁る。そうして取り出したものは、1枚の書類。


「これ書いたら、明日からチームとして活動するのを許可するわ」

「了解っす」


その書類を受け取って、将真たちは学園長室を後にした。




時場所変わりて、決闘直後。


虎生は決闘場を立ち去って、街中を歩いていた。

渋い顔で、ひどく火傷を負った手のひらを見ながら。


痛みを感じていないわけがないだろうが、それよりも今の虎生には、痛みよりも驚きの方が強かった。

将真の一撃を受け止めた時、咄嗟に強力な魔力を全身に纏わせたが、それを御構い無しに一撃を入れられた。


まるで、防御を破壊したかのようだったが、考えられる可能性は二つ。


魔力をキャンセルしたか__吸収したか。


前者はまだ能力として考えられるが、後者はまずないだろう。

だが、攻撃を受け止めた時感じた違和感は、どちらかと言えば後者な気もする。


「ったく、マジで何者なんだにゃあ、あいつは……」


得体の知れない少年の顔を思い出し、虎生は深くため息をついた。

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