名門袁家
曹操は閣議を開いていた。
「袁紹からこの様な書状が届いた。いかにすべきか」
袁紹が北の公孫瓉と戦争になったので、米、馬匹、弓箭、などを要求する内容であった。孔融はこう述べた。
「袁家は4世3公の名門にして、人材多く、勢力は大、今勢いに乗っております。敵対してはなりません」
「では争えぬと申すか」
曹操が問うと荀攸が答えた。
「今は耐え忍ぶべきでしょう。何といっても彼は旧家の出であるだけで、古い考え方をする人間にございます。今は力あれども将来は威勢が衰える事は必定ですので、将来に期待すべきでしょう」
そう言ってこう付けくわえ始めた。
1、袁紹は保守的で名門のみを重用する。君は名門を尊重し、才能を重んずる。人材において勝る。
2、袁紹には時期を見る目も良い耳も無く期を逸し、良言・忠言に耳を傾けない。君は良く見、良く聞く。決断力において勝る。
3、袁紹は賞罰が情に慣れてしまっている。君は信賞必罰、法に照らし明らかである。組織力で勝る。
4、袁紹には人士多く名望が有るが、それぞれの人材はまとまりがない。君は適材適所、組織は良くまとまっている。団結力において勝る。
5、袁紹は――
と、曹操は手を振り、荀攸の言を止めさせるとこう述べた。
「同感である。ここはこらえるとしよう。……しかし荀攸、褒めすぎである。私を袁紹にしたいのか」
とそこへ会議に遅れた郭嘉が現れた。郭嘉は事情を聴くとこう答えた。
「荀攸様の発言はごもっともです。時代が袁紹を滅ぼすのを待つべきです」
「その間に私は力を蓄えればいいのだな」
「その通りです」
「そうか」と立ち上がろうとする曹操を制して郭嘉は一言付け加えた。
「内治だけでは限界があります。外征を行わなければなりません。西は鐘繇が抑えており、乱は起こるでしょうが疥癬の病です。南の劉表は攻めるに水軍が必要で難攻の地でありますが、動きが消極的で、わが軍が大敗を喫しない限り無視できます。孫策は内治に手いっぱいで、2年は動けないでしょう。ここは東の呂布を討伐するべきです」
曹操はそれにうなずくと、物資を袁紹に送りつつ、劉備とともに東の呂布討伐に向かった。