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第13話 瓦解!大いなる旅の新たな始まり


 俺は空中戦艦の中を駆け抜けた。

 とりあえず敵は見つけるたびに撃退していたが、目的のメセルは一向に出てこない。

「いい加減にしろーっ! 俺が出て来いといったら出て来い!」

 適当に攻撃しているとすべてが洗われるようだった。俺の聖なる槍がモンスターたちを浄化していく。

「ふふ、俺にかかればこんなものよ」

「あなたは……こんなところまでやってくるとは、想定外です」

「誰だ!」

「私はメセル」

 見ると、白銀の鎧に身を包まれた銀髪の少女が俺を凛々しく見つめてきていた。

「お前が盗賊団のリーダーか」

「そういうこともあります」

「お前の討伐以来が出ている。覚悟ぉ!」

 俺は槍を突き出した。少女は剣でそれを受け止める。

「そ、それは伝説の聖剣バゼルジスク!?」

「そう。これこそは私がMMO人生ですべてを賭けて手に入れた最高の装備」

「くそ、俺のマギルヌスが押されて……!?」

 俺は飛びのいて距離を取った。

「てめえ。俺の攻撃に耐え切るとはやるじゃねえか」

「口調が変わった!? まさか、あなたは真の力を発揮しようとしているのでは」

「そのまさかだ! うおおおおおおおおおおお!!!!」

 俺は隠された才能を発揮した。俺の全身からオーラが飛び出す。

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「あなたはまさか伝説のゲームプレイヤーミッドハルト!!!!!」

「そのとおりだ。俺に喧嘩を売ったのが最悪だと気づけ」

 俺の槍でメセルの鎧がコナゴナになった。中の裸身がさらけ出される。

「きゃあああああああああああ」

「辱めを受けるがいい。メセルーっ!!」

「く、たとえ裸でも私の騎士道は曲がらん! 死ねミッドハルトぉぉぉ!!!!」

「死んでたまるかああああああ」

 俺とメセルの槍が烈しくぶつかりあい、火花が飛び散った。

「やるなメセル!」

「なんの、貴様こそ!」

 だが、俺たちの激闘が空中戦艦の動力炉を破壊してしまったらしい。

 船は静かに沈み始めた。

「なんてことだ、脱出しなければ」

「待てメセル! お前だけは倒さねばクエストがクリアできん!」

「くっ、お前ごときにやられる私ではない! 愛おしい人のため、私は進む!」

「終わったことをいつまでもウジウジと! だからお前は盗賊団のかしら程度の器なのだ!」

 俺の槍がメセルの首を打った。

「ぐっ、気絶スキルだと!」

 メセルはがっくりとうな垂れて気絶した。

「お前のすべてが俺の勝利へ繋がっていたな。実力の差、というやつか」

 だが俺の限界だった。

「くっそおおおおお、身体が言うことを聞かぬ!」

 そうこうしている間にゾンビが俺に噛み付いてきた。

「畜生どもが! 盗賊団のやつらめ、勝手に感染して勝手にゾンビになりやがって!!!」

 俺の怒りも最もだった。

 俺は槍を振り回してゾンビを倒した。

「駄目だ、船が落ちる、畜生!!」

 船は落ちた。

 木っ端微塵になった。

 俺とメセルは船の中から放り出され、湖に落ちた。

「うぐっ」

 俺はある程度のダメージを受けつつ、どんなに犠牲を払おうともメセルだけは救おうと思い、助けに泳いだ。

 やはりPKはよくない。彼女は美少女なのだ。使い道がまだあるかもしれない。

 そう思ったからだ。

 俺はメセルを担いで岸辺まで泳ぎきった。

「ぐっ」

 パラメータを見ると俺までウイルスに感染していた。

「なんてことだ、俺の防毒スキルを突破するなんて! 嫌だ、死にたくない、オイメセル起きろ! 俺を助けるんだ」

 何度揺さ振ってもメセルは眼を覚まさない。

「畜生が!! なんで、なんで俺がゾンビなんかに……俺はミッドハルトだぞ!! 天才なんだ!! お前ら一般人がいくら死のうと構わんが、俺だけは助からねばならんだろう!! なぜそれがわからぬ!! 神よ、俺を助けろ!!」

 天空に向かって叫んだが返事はない。

「なんでだ! 俺を助けろ、誰か、誰でもいいから助けろよ!! 何もできないくせに、くだらねえ人生をくだらなく生きていくしか能がねえんだから天才の俺を援助するのは当たり前だろ!! この奴隷どもが、くずが、ゴミが、てめえらなんか生きてるだけで不愉快だ、馬鹿が、カスが、阿呆が間抜けが、いいから俺を助けろ、ほら、そこの森の木陰にいるんだろ!? 誰かいるんだろーーーーーー!!!!!!!」

 誰も俺の声に答えない。

「ゴミどもがああああああああ!!!! なんで分からないんだ!!! 間違ってるのはお前らだ、ここで俺を助けないお前らが間違ってるんだ!!!! 死ね!!!!!! 死んでしまえおまえらなんか全員死ね!!!!!! なんで俺を助けない!!!!!! 俺よりすごいゲームプレイヤーはいないんだ!!!!! 俺が最強なんだああああああ!!!!!!!!!!」

 怒号が虚空へ吸い込まれていく。

「どうして……」

 俺の苦痛の呻きは、誰にも届かず。

 俺はその場で意識を失った。

「絶対に呪ってやる……許せるもんか、絶対に」

 俺はすべてのプレイヤーをPKすることを誓った。

 絶対に許さぬ。

 どうせ現実では下らない仕事をあくせく働いて得るものは小銭のゴミのくせに!

 俺は違うぞ、絶対に、俺だけはお前らとは違うんだ!!!!!!

 その時から、俺を助けなかったすべてのプレイヤーを抹殺する俺の誓いが始まったのだった。

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