第1話 ふざけんな! こんな人生認めない
はじめて書くファンタジーです。
よろしくお願いします。ご感想お待ちしています。
投稿日時が少し古いのは、以前書いていた小説を消して、もったいないのでこちらで新しい連載を始めたためです。目指せネットエコ。
ふざけんな……俺のセーブデータが消えた……
なんか神様のせいらしい……お詫びに俺の前に現れた。
土下座している。
「すまない……私の不注意で……」
「すまない、じゃねーよ。いい加減にしろ」
「悪気はなかったんだ」
「悪気がないで済むかよ! 何千時間かかったと思ってんだあのデータ!!」
俺が消されたのはVRMMORPG『ディヴァインアースネット』のステータスカンストデータだった。
中学の頃から三年間かけて作った俺のデータ……
サーバに一本しかないという槍『マギルヌス』だってあったんだぞ……
「絶対に許さないからな! なんとかしろ!」
「わ、分かった……ただし喪失したものの復元には副作用が生じてしまうんだ」
古代ギリシャ人のような格好をした金髪碧眼の神の頭を俺は踏みにじった。
「だから? 悪いことしたのそっちだよね? 俺なにかした? 俺悪いことしてないよ?」
「うう……その通りだ。分かった。君のデータを復元しよう」
鐘の鳴る音がした。
「……これでいいのか? 直ったのか?」
「ゲームを機動してみるといい……」
俺はヘッドギアをかぶってゲームを起動させた。
HDDが鈍い音を立てて唸る……
ばしゅううううううん
メーカーのロゴが表示された後、突然、青白い光が迸った。
「うっ」
俺は目を瞑った。そして再び開けると……
「よし、ちゃんとログインできたぞ」
俺は自分のアバター『ミッドハルト』の身体を動かした。
目視する限り、装備も整っているようだ。
一応、顔に手を当ててステータス画面を出すとスキルやパラメータも元通りだ。
NAME:ミッドハルト
JOB:闇槍士
EQUIP:マギルヌス+99
王者の鎧+82
支配の篭手+87
魔神の具足+69
フレイムティアラ+88
SKILL:闇槍術
狂気調停
高速詠唱
瞬転
きき耳
宝石練成
アイテムドロップUP
etc etc・・・
俺はスキル項目のラストにある一文に首を捻った。
「ワールドスターター?」
聞いたことのないスキルだ。こんなものを取得した覚えはない。
「おい神! なんだこれは、俺のスキル欄に余計なもの入れやがって」
大空に向かって叫んだが神は無言のままだった。愚図が。
ひょっとすると、これが神の言う『副作用』というやつなのだろうか……
とにかく悩んでいても仕方ない。データが消えてから久々のDENだ。
今はこの最高の世界で、リアルを忘れよう。
俺がワールド内ニュースサイトからクエストの依頼を引き受けようとした時、いきなり後ろからザクリと切りつけられた。バックアタック効果のせいで2ほどダメージをもらってしまう。
「誰だ!」
俺が振り返ると、そこには少女が立っていた。
美しい少女型アバターだった。
燃える炎のような赤髪。それに鋭い翡翠のような目。口元は小さく引き結ばれ、逆手にナイフを持っている。
呪詛エフェクトがついたナイフは、俺から見ても業物だ。
俺はスキル『強奪』で相手の武器を奪った。
「あっ!」
ナイフを奪われた少女がよろめく。
俺はその顔面に軽い裏拳をくれてやった。少女がどうっと倒れこむ。
「ううっ……」
「お前どこのギルドのやつだ? 俺が闇槍士ミッドハルトだと知っての狼藉なんだろうな。このことはPK扱いとしてPKKギルドに通報させてもらうからな。お前はもうアバター削除しない限りこのゲームを楽しめないぞ。ざまあみろ!」
俺の高笑いに少女が不審そうな顔になる。
「あんた、何いってるの……? この世界にPKKギルドなんてもうないわよ。PKが当たり前になったんだから」
「なんだと? どういうことだ」
「デスゲームになったのよ、この世界は」
なんだと……俺はそんなこと知らない。
どういうことだ……
「本当かそれは」
「嘘だと思うならログアウトして確かめてみれば? 普通と違ったエフェクトに包まれてアバターが粉々になるわよ」
俺はそれを確かめる勇気がなかった。
「何が原因なんだ」
「さあ? メーカー側の陰謀か、集団悪夢か、それとも……神様の仕業とか?」
くそっ、神のやつめ。自分の罪を帳消しにするために俺をこんな世界に押し込んだのか……卑劣なやつだ。
「どうすれば出られるんだ」
「この世界に一人だけいる『魔王』プレーヤーを倒すのよ。そいつは、何食わぬ顔で私たちの中に紛れ込んでいる」
「そいつはどうやって見つければいいんだ」
「見つける手段なんかないわ。そいつと結婚してスキル欄を共有しないことにはね」
「どういうことだ?」
「そいつのスキル欄には、このゲームを始めるきっかけになったスキル『ワールドスターター』ってのがあるんだって。そいつを持っているヤツをPKすれば、私たちはこの世界から出られる」
「なるほど……」
俺は頭を抱えた。
どうやら俺は魔王になってしまったらしい。