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西の魔王の物語  作者: かずほ
前哨
7/9

噂2



(しくじったかな…)


友人のいつにない、様子のおかしさにヴィート・アルバは内心小さく舌打ちした。


騎士と魔導師と資質や志す先は違えど、ヴィートにとっては数少ない得難い友だ。


そんなヴィートとリーンの出会いは魔導院と騎士養成所で行われる合同実践訓練の場ではなく、隣接する養成所と魔導院の境界線上にあるわずかな死角。すなわちサボリに最適な、とある秘密の場所だった。


出会い自体は最悪で、互いがその場所を自身の縄張りと主張し合い、掴み合いの喧嘩になった。


護身の基礎体術はカリキュラムに組み込まれているとは言え、魔導に重点を置く魔導士見習いが、身体が資本の騎士見習いに勝てるはずもない。


そんな油断も手伝ってか、その日の勝負の結果は引き分けに終わった。


そこから何故か顔を合わせる機会が増え、時には縄張りを奪い合い、合同訓練では足を引っ張り合い、時には利害の一致から協力し合い、もう一人の後の親友が仲裁に入りとしているうちに、気づけば親友と(表立って言えば調子に乗るので言わないが)呼び合える関係にまでなっていた。


そんな親友が年に1度、この日だけは様子がおかしくなる。


聞けば、15年前にリーンのいた村が魔獣の群に襲われ、その際に両親を亡くしたらしい。


生き残ったのはリーンとその兄で、その兄も魔獣に襲われた傷が元でリーンが物心ついて間も無く死んでしまったと聞いた。


だからこの日になると、記憶にない両親ではなく、育ててくれた兄を思い出すのだと、カラ元気の笑顔で言われた時はどうすればいいかわからなかった。


精神的な己の未熟を思い知った。


そして未熟なりに考えて出した答えは


「カラ元気がほんの一瞬でもカラ元気でなくなれば良い」


魔導士見習いのもう一人の親友のような大人な対応は自分にはできない。


いつも通りの態度で接する事が良いのは解っていたが、それだけでは納得できなかったのだ。


それからヴィートは毎年この日の為に親友の気を引くと思われる、とっておきの話題を用意する事にしている。


もちろん、真偽はどうでも良い。

今のところ、勝率は五分(ごぶ)だ。

と、本人は思っている。


そして今回のモノが

いろんな意味で予想外の結果を生み出す事になるとはヴィート自身、思いもよらなかった。





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