ヒューマノイドについて
さて、次の日である。
朝起きて、なんとなく窓の外を見た。毎日やっている慣例である。そこまでは、普通だった。いつもならば、特に誰もいない道路が目に入ってくるだけであろう。何日かに一回、おばあさんがごみを出しているところを見かけるくらいだ。車が通っていることもある。
今日は、普通じゃなかった。
なんというか、機械が闊歩していたのである。
犬と一緒に散歩しているおじいさんの横に、ロボットがいる。
それも機械というより、人間の形をした、ロボットである。狸やら猫が二足歩行をしたものよりもよっぽどスマートで、ロボットというよりヒューマノイドといったほうが、なんとなくそれっぽい。
名前なんて心底どうでもいいのである。
おじいさんは、景気良さげに鼻歌を歌いながら歩いていたが、常日頃の日常にない異物、要するにヒューマノイドを見るやいなや、ばっとバンザイするかのように、手を挙げて、目はスカートの中をのぞくが如く見開いて、驚いた。
犬はバンザイによって宙に放たれたリードを見て、すぐさま走り出した。
束縛から放たれ、走る速さはチーターに勝るほど。
おじいさんは驚いて、氷のように固まっていたが、愛犬が走り去っていく姿を呆然と見ているだけではさすがになかった。犬に引きずられているリードを追って、よたよたとおじいさんらしく走り出した。
そんなことより、そんなことより、大事なことだから二回言ったが、ロボットが路上を歩いているという不可思議な現象にこそ疑問を抱くのだ。というより、疑問を抱かない人がいたら、それはたぶんヒューマノイドに常日頃からかかわっている人間くらいであろう。
そして、それをずっと見ていたら苛立ってきた。過去と対峙しているような感覚に陥る。いや、対峙しているのではないか。わからない。
おじいさんは、走り去っていった。
そして、何故か懐かしい。
なぜ、何故僕は懐かしいと感じた?
僕はせいぜいプログラミングをするくらいであって、驚いた。愕然として、その場から動けなかった。なんというか、いきなりエスエフの世界に迷い込んだような感覚だった。
「岳人! 朝飯さっさと食べないと、学校遅れるわよ!」
こんな状況でも、麗しきわが母は、気にしていなかった。母は強しという言葉はこんな状況で使うべきではないだろうか。
「今いくー」
僕は、とりあえず後ろを向いた。
たぶん、夢だ。
後ろからは、ワンワンと元気に吠える犬の声が聞こえた。




