吐
食事中の方はご遠慮下さい。
朝、目覚めると口の中に違和感があった。
何かが、寝ている間に口の中に入ったような イヤな感じだった。
口の中に指を入れてソレを掴むと、ゆっくりと引き出す。
───長い数本の髪の毛だった。
その髪の毛には、キツい香水か整髪スプレーのような匂いがして、気分が悪くなった。
口の中に留まり続ける匂いは胃を刺激し、吐き気を感じた。
急いでトイレに駆け込み、吐けるだけ吐いた。
───嘔吐物が全て髪の毛だった。
トイレに充満していく人工的な匂いに耐えて、泣きながら嘔吐を続けていると、最後に銀色の指輪が出てきた。
彼女にプレゼントした指輪のようだった。
それを渡した当時は、指輪の内側に刻んだ愛の言葉に彼女は涙を流して喜んでくれたが、今吐き出した指輪には、彼女からのメッセージなのか、
"shit "
の文字が刻まれていた。
───浮気がバレていたのだろうか。
気になって、浮気相手に電話を掛けた。
──だが、電話に出たのは浮気相手ではなく…
「あら?…どうしてアナタがこの電話番号知っているの?」
「え、えと…」
「ま、それは後でもいいわ。ねえ、私の指輪しらないかな?見当たらなくってさ。」
「…う…えと」
「ああ、そっちにあったんだ。今から取りに行くね。」
「えっ?」
──電話が切れた。
その後すぐに、再び気分が悪くなってトイレに駆け込み嘔吐した時、口から女性の腕が出てきた。