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一章 『日常』→『非日常』(『普通』→『特異』) 4

 依然として月波葬夜(つきなみそうや)はどう行動すべきか悩んでいた。

 ちなみにその考えの中に電話の女性が言った通りに『素直にここに残る』というものは存在はせず、どのようにしてつかまらないように脱出するか大半を占めていた。なぜならつかまったら最後、『地獄』を体験することになるからである。

 スピーカーからは足音が続いている。その音は、さっきから加速の一途をたどり続け今では ドドドドドドッーーー! という音まで進化している。


(選択肢・一、ドアから脱出……無理に決まってんだろ! 階段は師匠と鉢合わせになるし、エレベーターは基本的に一階に定着してるし)

 頭をガシガシとかいて考えを絞り出す。


(選択肢・二、部屋に籠城……これもだめだろうな……、師匠なら扉くらい吹き飛ばしそうだ)

 はぁー、とため息をつく。


(選択肢・三、これは俺はいいけど白雛がなぁ……、でももうこれしか……)

 あぁー、と一人悶絶する。

 そしてそれに追撃をかけるように外からも、携帯と同じように ドドドドドッーーー! という音が響いてきた。


 タイムリミットである。


(あぁーーー! もう! 選択肢・三に決定! 自らの保身が一番。その他は二の次だ)

 

 月波は自ら決定した判断を即座に実行した。

 すなわち、固まったままの白雛の手を走り出した。

 扉に、

 ではなく、



 その正反対の窓、そしてその先のベランダに。



「ちょっ……!!」


 固まっていた白雛から声が漏れた。

 窓ガラスはさきほどまでの騒ぎでとっくに割れている。彼らをはばむことなどできない。

 月波はベランダにおかれていたいすを踏み台に、その先にある柵を、



 躊躇なく飛び越えた。



「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!」

 白雛の絶叫が、重力のみが支配する空間を裂いた。


 その時 ドゴォッ! という轟音とともに部屋の扉が吹き飛ばされた。その扉は真ん中が大きく凹み、横回転しながら部屋を縦断して、その先にある窓サッシに突き刺さる。

 そして、


 その空白となった扉から、碧眼と銀の長髪を持つ、身長百八十センチを超えた女性が現れた。


 その女性は真っ白なTシャツとジーンズという分かりやすい格好をしていた。しかしそれらには少しだけ癖があった。Tシャツは胸元のすぐ下あたりまでしかなく、へそがばっちり見えているし、ジーンズはダメージジーンズなのだがダメージがでかすぎであちこちから肌が見えている。

 体の一部がかなり強調されていることもあり、第三者からみたらかなり色っぽいことだろう。

 

 さきほどの白雛の百倍はあろうという殺気が渦巻いていなければ。


「待てッ!! 月波」

 その叫び声に対して、月波は、振り返ってそれを確認することしかできずに


 この世の最も不変な力に従って落下を始めた。

 

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